アメリカだって寒い マーキュリーレヴ Deserters Songs
イーグルスの大ヒット曲『ホテルカリフォルニア』が、「1969年からスピリッツを切らしてる」って断言したのに、1970年代から1980年にかけて日本ではフリスビーや(陸)サーファーが流行したり、アメリカへの憧れがマックスになってまして。
でも、『キャリー』や『キャント・バイ・ミー・ラブ』、『25年目のキス』みたいな数多くのダークな青春映画は、米国の青春がたまらなくひどいことを明るく証明してまして。
ニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」が全米NO1になった時は、間違いなく戦後の日本や、70年代のカリフォルニアブームに浮かれていた人たちの思い描く米国が完璧に崩れ去ったって痛感したものですが。
以来、作り笑いをやめた米国人が、たくさんの寒くて暗くて、でも素晴らしい音楽を作り出してくれまして。フレーミングリップスやウィルコ、スパークリングハウス、グランダディなんかが、寒くて暗いアメリカを教えてくれたような気が。

マーキュリーレヴの『Deserter's Songs』はその頂点に立つんじゃないかと。
ジャケット通りの冷たい雰囲気に、ほのかに香る暖かさがいい。
ポール・マッカートニーとニール・ヤングの共作『Opus 40』のポップさは、無理に笑い続けていた時代には出せなかった美しさかも。次作『オール・イズ・ドリーム』ほど金がかかってないのがまたいいよ。
頼りないボーカルは英国のアル・スチュアートを思わせなくもなく。その湿りというか陰りが、西海岸ぶっていた時代にはない何かを感じさせてくれまして。
オープニング、テルミンが幽霊のように響く“Holes”の美しさは、60年代アシッドフォークの雄ディノ・ヴァレンテのあの痛みに近い冷ややかさがあるような気が。
暖かいだけじゃない。寒いアメリカもまたいい。
