小説『Snowdrop Surfer』第三話:奪われる色彩
(簡単なあらすじ)
理不尽な左遷により、北海道の赤字企業で四刀流の過酷な新社長業に挑むことになる元芸人、トップセールス・佐々木真二郎。
前回、コロナ禍で部下を守り売上を落とした結果、上司の権田から左遷を告げられる。北海道経済を支配する「雪明グループ」という巨大な壁を前に、真二郎は逆境を跳ねのける決意を固める。
【前回】
【第三話:奪われる色彩】
左遷を告げられたあの日、
目の前の世界がモノクロに変わった。
それからの数週間、
凍てつく北の大地への不安と、
ほんの微かな希望が激しく心を揺らした。
だが、
そのほんの微かな希望は
これから俺を待ち受ける『三つの巨大な壁』にすぐに打ち砕かれる。
第一の壁:M&Aを『侵略』と呼び、俺を『よそ者』扱いするホクセイ産業の社員たち。
第二の壁:北海道の市場を支配する、一筋縄ではいかない超巨大企業『雪明グループ』
第三の壁:保身のためにすべての責任を俺に押し付ける、本社のパワハラ上司『権田』。
(……逃げ場は、どこにもない)
慌ただしく準備を済ませ、
最後の段ボールを見送ると
俺は静かに車を走らせた。
目的地は、千葉『九十九里浜』。
12月中旬とは思えないほど、
頬を撫でる風は柔らかかった。
波の音と、鳥の鳴き声だけが
辺りを静かに満たしている。
波打ち際まで歩くと
水面に差し込むオレンジ色の光が
優しく全身を包み込んだ。
どうしてもこの景色を、目に焼き付けておきたかった。
だが ───、
今の俺には、少しだけ眩しすぎた。

機内は静まり返っていた。
その静けさが、かえって外の荒れ狂う状況を際立たせる。
北海道に近づくにつれ、機体は激しく揺れ始めた。
何度も点灯するシートベルトサイン。
発達した雪雲が、容赦なく機体に襲い掛かる。
これが、北へ向かうということか...
新千歳空港に降り立った瞬間、
暴力的な冷気が全身を包み込んだ。
吐く息は一瞬で白く凍り、
吸い込む空気はまるで肺の奥まで刺さるかのように冷たい。
周囲のビジネスマンたちは完全な冬装備。
東京仕様の薄いコートと革靴のままの自分だけが、明らかに場違いだった。
足先から感覚が消えていく。
収監されるかのように高速バスに乗り込む。
窓の外には、白一色の原野と横殴りの雪。
どこまでも、逃げ場のない景色がそこにあった。
このまま、どこかへ消え去りたい ───
しかし、その思いでさえ、
この吹雪の中に閉じ込められていく。
これから向かう場所は、再生の地か。
それとも、埋葬の地か。
どこまでだって行ってやる。
失うものなど何もない。

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