【3分小説】 人形遣いに恋した少女 ②
『 再会 』
翌日、美月は学校でも雅楽のことばかり考えていた。授業中も、友達との会話中も、頭の中には人形の優雅な動きと、あの澄んだ声が響いていた。
放課後、美月は迷わずスマートフォンを取り出し、劇場のウェブサイトにアクセスした。残りの公演チケットは限られていたが、なんとか翌日の分を購入することができた。
二度目の観劇。今度は最前列の席を取った。昨日よりもさらに間近で雅楽を見ることができる。演目は違ったが、雅楽の魅力は変わらず、むしろより深く感じられた。
公演が終わり、観客が帰っていく中、美月は席を立てずにいた。まだ帰りたくない。もう少し、この空間にいたい。そんな気持ちだった。
「お嬢さん」
突然声をかけられ、美月は振り返った。スタッフらしい中年の男性が、優しい笑顔で立っていた。
「昨日もいらしてましたよね。雅楽を気に入ってくださったようで」
「あ、はい」美月は頬を赤らめた。
「とても素晴らしくて」
「雅楽も喜ぶでしょう。よろしければ、舞台裏を見学されませんか?」
美月の心臓が跳ね上がった。舞台裏?雅楽に会える?
「で、でも、いいんですか?」
「ええ。雅楽が、昨日から何度も『あの少女はまた来るだろうか』と言っていたんです」
美月はついていくことにした。舞台裏は想像していたより小さく、しかし精密な機械で溢れていた。そして中央に、雅楽が静かに座っていた。
「おかえりなさい」雅楽が振り返って微笑んだ。
「また来てくれると思っていました」
「あの、私のこと、覚えてたんですか?」
「もちろんです。あなたの表情を見ていました。物語を本当に理解してくれている。そんな観客に出会えることは、滅多にないことです」
美月は胸が熱くなった。自分の気持ちが伝わっていたのだ。
「お名前を教えていただけませんか?」雅楽が尋ねた。
「美月です。星野美月」
「美しい名前ですね。月のように、静かで美しい」
その日から、美月と雅楽の特別な関係が始まった。
