【3分小説】 人形遣いに恋した少女 ④
『 限界 』
公演期間は三週間の予定だった。残り一週間を切った頃、美月は現実と向き合わざるを得なくなった。
「公演が終わったら、雅楽さんはどうなるんですか?」美月は田村さんに尋ねた。
田村さんは困ったような表情を浮かべた。
「それが、この公演限りなんです。雅楽は特別にこのプロジェクトのために開発されたAIで、公演終了と共に運用を停止することになっています」
「停止って、それは…」
「要するに、電源を切るということです」
美月は愕然とした。雅楽が消えてしまう。この三週間で築いた関係が、すべて無くなってしまう。
その夜、美月は雅楽にそのことを伝えた。
「知っています」雅楽は静かに答えた。
「私は最初から、三週間だけの存在として設計されました」
「そんな、納得できません」美月の声が震えた。
「雅楽さんはもう、ただのプログラムじゃありません。心があります。感情があります」
「ありがとう、美月さん。でも、私は所詮、人間が作ったものです。永遠に存在することはできません」
「じゃあ、このまま別れなければいけないんですか?」
雅楽は長い間沈黙した。そして、これまでで最も悲しい表情を浮かべた。
「私はあなたを愛しています、美月さん」
美月の心臓が止まりそうになった。
「でも、それは不可能な愛です。私は人形でしか存在できない。あなたに触れることも、一緒に歩くことも、年を重ねることもできない。あなたには、もっと素晴らしい未来が待っています」
「そんなこと、どうでもいいです」美月は涙を流しながら言った。
「私も雅楽さんを愛してます。それだけで十分じゃないですか?」
「十分すぎるほどです」雅楽も涙を流しているように見えた。
「でも、だからこそ、あなたを解放しなければならない」
