ホロライブの運営方針がタレントを壊している
今年4月に「企業系VTuberの行く末」という記事をnoteに寄稿した。
当時相次いでホロライブを卒業するタレントが後を絶たないため、
その主な原因を運営するカバー株式会社の急激な成長に端を発するのではないかと分析した。
だが10月には適応障害で休養中だった火威青さんが復帰の目途が立たないという理由で本人の言葉など一切なく卒業が発表され、12月2日には登録者数166万人を誇る天音かなたさんが12月末のデビュー日を最後に卒業・引退することを発表した。
昨年からの卒業ラッシュの流れは留まることを知らないといった状況だ。
また最近では数名が体調不良などを理由に活動を休止していたり、
少し前には赤井はあとさんが精神状態が心配になるような状況で配信を流したりと以前記事を書いた頃よりも状況が悪化しているようにも見える。
ホロライブは同業他社の「にじさんじ」とは違って少数精鋭のタレントで運営しているにも関わらず、社員の数が600人を超える大企業になっている。
その結果、一人一人のタレントに掛かる負荷が他の事務所に比べて圧倒的に高いのではと前回分析した。
また、Youtubeで配信しながらリスナーと呼ばれる視聴者との触れ合いを活動の主軸にしたいタレント側と、広告料もスパチャも大半をYoutube側が持って行って利益率の低い配信よりもライブや案件・グッズ販売など配信外の収益の大きい活動をさせたい企業側での齟齬が生まれているのは、卒業を発表したタレントの理由などからも明らかだった。
以前までの卒業者は「活動方針の違い」とその理由を濁していたが、今回卒業を発表した天音かなたさんは明確にこれを言語化して発表した。
「当初想定されていた業務領域を大きく超える業務外のタスクが何度も発生していたこと」
「その結果、自分の活動が回らないほど負荷が集中する期間が続いたこと」
「仕事の負荷による心身の状態から、活動の継続が難しいと感じるようになったこと」
またこういった状況を数年に渡って何度も訴えたにも関わらず、カバーにはすぐに改善する気が無かったということらしい。
これは大企業あるあると言える。いくら現場トップに訴えたところで上層部にそれが伝わることはなく、逆にトップに訴えたところで会社の方針を変えるには多くの人間の賛成を必要とする。
日本の企業体は回れば堅実だが、こういった変化に適応できない側面を持っている。
恐らくこれだけのインパクトがある出来事があったとしても簡単には企業が変わることはないだろう。
さて、天音かなたさんは以前メニエール病を発症し、歌い手としては致命的となる難聴を患っていた。
私も突発性難聴で片耳が聞こえなくなったが、どちらも基本的にはストレスや疲労から来る身体からのSOSに他ならない。
そして耳の病気は初期治療を迅速に行わないと一生完治しない難病でもある。
発症した時点でも相当なストレスを抱えていたことが窺い知れるし、配信や歌の仕事でヘッドホンやイヤモニをしても片方からしか音を拾えないというのは普段の活動にも大きく影響したはずだ。
そんな中での過度な業務と自身の夢でもあるライブを成功させるためギリギリの状態で活動を続け、難聴以外にも結石や体調不良になりながら満身創痍の状態が続いていたと推測される。
その結果、身体は限界を迎え、所属事務所は改善をしてくれそうにないと判断してしまったのだろう。
今回彼女は配信でリークを避けるために最小限の人間にしか卒業の話をしていなかったと語った。
同僚はもちろん、同期のタレントにすら一切の情報を出さなかったと。
さらに卒業に関連する動画やイベントなども一切行わないことで発表の当日まで全く噂にも上がることはなかった。
だが裏を返せばそれだけ自社の人間が信用出来ないということにはならないだろうか。
訴えても改善されない職場環境、その結果身体を壊すタレント、仲間内ですら疑心暗鬼になるとなれば、一般企業でも辞めた方が良いと思うだろう。
特に病気などは今後一生付き合っていかないといけない。
聞こえなくなった耳が聞こえるようになることはもうないのだ。
自分の身を守ってくれるのは自分しかいないと考えれば今回の彼女の言動は理解できる。
翻ってこの状況を運営会社のカバーはどう捉えているのか。
無駄に規模が膨れ上がり、上場している企業としては、おいそれと今の運営方針を転換することは不可能だろう。
社員をリストラするわけにもいかず、だが稼ぎ頭のタレントの数は減っていく。
結果、さらに少数のタレントを酷使していくことに繋がるのではないか。
大企業に無理を承知でお願いしたいのだが、もっとタレントに寄り沿った目線を下げた方針に切り替えれないものだろうか。
利益率が低い配信活動も立派な営業活動であることは間違いない。
Youtubeなどの配信や動画を見て、視聴者はタレントの存在を知って、普段の活動を追いかけ、そしてその中の何割かがスパチャを投げたり、グッズを買ったり、ライブに足を運んでくれるのだ。
普段のそういった活動がなければ企業からの案件も来ないし、収益の大きい活動にはつなげることは出来ない。
テレビという媒体が死に体である以上、こういった普段の配信活動にもっと時間を裂けるようにサポートすべきではないか。
タレントによってはライブのためのダンスレッスンが毎日あるため、疲れて配信が出来ないというのは本末転倒ではないか。
運営会社は設立当初の理念を足元からもう一度見直し、タレントファースト、視聴者ファーストで運営すべきではないか。
現状ですら既に手遅れだが、手を拱いていてはさらなる離脱者を増やすだけだし、タレント側がストライキやボイコットするようになれば、企業自体が成り立たなくなる可能性もある。
だが社員が600人もいればタレントの事情を考えてない人間も当然いるだろう。
営業からすれば企業からの引き合いはひっきり無しに来ているから片っ端から受け入れて売り上げに繋げるだろう。
あとはそのタレントがどうなろうと丸投げして利益を貪っている連中だっているはずだ。
企業としてはタレントの事情を無視すれば売り上げも利益も上がっている以上、社内のほとんどは現状から変える気なんかなさそうだ。
ただ今何か手を打たないと近い将来、ホロライブが消えてなくなることも十分あり得る。
運営会社が充てにならない以上、ファンがタレントを守るしかないのかもしれない。
SNSで声を挙げるのもそうだが、例えば株を持っていれば株主総会などで意見することも出来るかもしれない。
イベントなどに参加して明確なメッセージを打ち出すでもいい。
ともかく何かを変えていかないとこの流れは今後も止まることはないだろう。
