#30【"支配の怖さ”と“小さな抵抗"―操り人形を殺した日】中学生の記憶-18
模擬試験の時期になると
母はやっと"私の変化"に気づき始めた
でも、気づいているのは
"表面"だけで
深い私の絶望なんて、知る由もない
母の頭の中の私はまだ
一年生の頃の“いい子ちゃん”のまま
時が止まっているのか⁈
理想の娘という幻
そんなもの、もうどこにもいないのに
それでも母は、その幻を
手放そうとはしなかった
「高校だけは
私が選んだところに行きなさい」
何度も、何度も
同じ言葉を繰り返す
私は、ただ上の空で聞いていた
勉強なんてもう、していない
授業だってサボっている
そんなこと知らないわけがない
きっと気づいていたはずだ
あなたの選ぶ学校になんて
今の私が受かるわけないのに…
⸻
そう、だから
その日の母の手には
"模擬試験の解答用紙"が
握られていた
「答えを丸暗記しなさい」
母は言った
⸻ ああ、、、 なるほど
そういうことか 偏差値を上げる為に…
その時、ふと頭をよぎった
一体、どうやって手にいれた?
あんたは一体何物?
胸の奥が
すっと冷たくなった
どうして気づかないの?
とんでもない事をしているのよ
それがあんたにとっての
『幸せになる方法』なの?
呆れた…
でもそれ以上に
震えるほど、怖かった
ここまでしてでも
“理想の娘”という虚像を
作り上げようとする、その執念が
まるで、私という人間が
最初からこの世に存在していなかったみたいで
私は初めて
「自分の人生を、生きたまま奪われている」と
はっきりと感じた
模擬試験の日
私は解答用紙を"白紙"で出した

もうどうにでもなれ‼︎‼︎
賢いやり方ではない、悪い事だとはわかっていた
未来を捨てたかったわけでもない
“私の未来を、私に返してほしい”だけで…
そのやり方が
あの頃の私にできた
精一杯の
そして唯一の「小さな抵抗」だった

次回
#31 【黒い男と私には見えない繋がり―生理的拒絶】中学生の記憶-19
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