読書が好き、または嫌いなあなたへ −書評読みのすすめ−
文学とは全く関係のないとある記事を読み、「感想の感想っていいなぁ」と思ったので今寝起きの頭を奮い立たせて筆を取っています。
わたしは本を読むのが大好きです。ですが、それと同じくらい、本について書かれた文章を読むのも大好きです。
もとを辿れば、小学校の図書便りで、司書さんがおすすめの新刊本を丁寧に紹介してくれていた文章がきっかけなのかな、と思います。
残念ながら小学校をとうの昔に卒業してしまった現在は、書評を載せているブログをインターネットで読むことが多いでしょうか。
読んだことのある本についての書評なら「あ〜分かる!そこ自分も驚いた!」などと共感したり、「わたしとは全然違う感想だ…こんな人もいるんだなぁ」などとその感覚の差異を楽しんだり。
そして、読んだことのない本についての書評なら「えっ、めっちゃこの本面白そうやん…」と積読の標高がまた一つ上がることになったり、「前から気になってたこの本、こんな内容なんだ〜。思ってたのと違う!」と勝手に読んだ気になったり。
今回は、そんなわたしが愛してやまない書評ブログを3つ紹介したいと思います。
「文学って難しそう!」と思っているひとも、それならまずは文学書評のブログをどんなもんかいと覗いてみることから始めてみませんか?
1. キリキリソテーにうってつけの日
まずサリンジャーの短編『バナナフィッシュにうってつけの日』由来のブログタイトルが良すぎる。このタイトルセンスだけで毎日閲覧しちゃう。
"のら編集者" のふくろうさんが書いているこのブログでは主に海外文学を扱っています。
この方の海外文学への精通具合はハンパじゃなく、twitterで海外文学バーテンダーとして、「こういう雰囲気の本が読みたいとか、形容詞2つ3つ伝えるだけで」その要望にあった海外文学を薦める、という企画をされたこともあるほど。
自分も形容詞を挙げられただけでスッと海外文学を差し出せる人間になりたい…
ふくろうさんの書評は、当然ながら文章が上手く、また本文からの適切な引用も伴って、とにかくその本を読んでみたくなります。記事に影響されて手にとった本はたくさんありますが、例えばウルフ『灯台へ』の書評。
「灯台」という存在が好きである。実際に灯台に足を運んだことはほとんどない。おそらく私は建造物としての灯台ではなく、灯台が持つ独特の雰囲気、象徴としての灯台に惹かれているのだろう。「私はここにいる」「そちらはどうか」と光を放つストイックさ、孤独の距離感が、星や人の営みに似ている気がするからだ。
という文から始まる一連の書評は、これ自体が文学なのでは?と思うほど流麗で、かつ紹介している本への愛が伝わってきます。
わたしはこの記事を読んで『灯台へ』を読みました。自分の中で『灯台へ』は、ふくろうさんのこの記事も含めて大切な存在となっています。
このブログでは本の好みを5段階で分類していますが、上の記事のように5つ星がついた本は特に記事内容も力が入っていて引き込まれること必至です。
書評以外にも、「気ままな本リスト」と評して前述のバーテンダーのように、「初心者向けの海外文学リスト」や「冬に読みたい海外文学」、「漫画読みにおすすめしたい海外文学」などとても重宝するリスト記事を多く書かれています。
また、海外文学読みなら爆笑必至のネタ記事を紹介しないわけにはいかないでしょう。
これらの記事を初めて読んだときは、元ネタを全然分からないままに爆笑していました。「もっと笑えるようになりたい」という一心でわたしは今も文学を読んでいたり、いなかったり。
2. Riche Amateur
(はてなブログが続きます。noteさんごめんなさい!)
「キリキリソテーにうってつけの日」の「『世界文学ベスト100冊』は、どの1冊から読み始めればいいのか」という記事の最後に

と、「頭のいかれた友だち」として紹介されていたのがきっかけでこの方のブログも読み始めました。(こういう刺激し合える友人関係、いいですよね)
その「とんでもないリスト」がこちら。
「おすすめ本ベスト100」じゃありません。「おすすめ作家ベスト100」ですよ。
まず海外文学の作家を100人挙げられるだけでも凄いのに、各作家への愛が100位から1位まで途切れることなく続いています。
この記事で一体何人の作家を知ったでしょうか。この記事から一体何冊の海外文学を手にとったのでしょうか。
個人的にさらに楽しいのが、上位に挙げられている本を少し読んでみた限り、この人とは本の好みがあまり合わないという気がしているところ。
6位に挙げられているチェスタトンの紹介文
『木曜日だった男』の完璧さはいまだに忘れがたく、それこそボルヘスがカサーレスの『モレルの発明』を評したのと同じ口調で「これは完璧な小説である」と言いたい。しかも、これら二作品はどこかすこし似てさえいるのである。どこを切り取っても美しく、そのうえ余分なものなどなにひとつないように思えるのだ。「こんなにおもしろい小説はじめて読んだ」と言う権利を、『木曜日だった男』を読んでしまったことで、わたしは永遠に失った。
これを読み、「そんなに言うなら読んでやろうじゃないか」と手にとった『木曜日の男』なのですが、これが自分には良さが全く分からなかった。だから面白いんです、文学を、そして書評ブログを読むのは。
また、この方は2015年10月に「短歌ください」を読んで以来短歌にハマったらしく、現代短歌系の書評が一気に増えるのですが、何を隠そうわたしはこれらの書評を読んで現代短歌にハマりました。
特に好きな歌集の書評(「好きな歌集」の書評ではなく、好きな「歌集の書評」)は、例えばこれら。
調子に乗って4記事も貼ってしまった。でも本当に、どれもめちゃくちゃ良い書評なんです。
短歌の歌集に対する書評のメリットとして、好きな歌をそのまま引用できるという点があります。
小説では好きな文章を一部引用は出来ても、それはあくまで一部でしかありません。しかし歌はそのひとつ、三十一文字で完結しています。だから魅力が存分に伝わる。その人がその歌のどこに感動したか余すところなく受け取れるんです。
上に挙げた記事では、好きな歌をこれでもかというくらい列挙しています。正直はじめは「こんなに引用して、著作権とか大丈夫?」と思ったものの、やっぱり魅力は伝わるようで、これらの歌集を全て購入してしましました。
「全文引用に耐えうる」というのは、短歌というミニマムな芸術形態の大きな強みだなぁと感じます。
みなさんも、歌集の書評から現代短歌にハマってみませんか。
せっかくなので、上の書評で知った特にお気に入りの歌を引用します。
・なんとなくぐにゃぐにゃにしたクリップで牢屋の鍵がなんとなく開く
・「かなしい」と君の口から「しい」の風それがいちばんうつくしい風
(ともに木下龍也「つむじ風、ここにあります」より)
3. きゃすのキラキラブログ
このブログの凄いところは、海外文学だけでなく日本の作家、それも純文学以外のいわゆるエンタメ小説・大衆作家まで幅広くカバーしているところです。小説の貴賤を気にせず、「面白いかどうか」で雑食的に読んでいく姿勢に本当に憧れています。
特に好きな記事は、なんと言ってもこちら。
先に「海外文学おすすめ作家ベスト100」を紹介してしまったので凄さが分かりにくいですが、十分ヤバイです。
このブログ主さんとは本の好みが比較的近いようで、読む本を選ぶときに最も参考にしているリストは間違いなくこの記事です。
例えばこの記事の3位に挙げられていた『ムーン・パレス』と2位の『わたしを離さないで』は自分の人生のオールタイム・ベスト級にヒットしました。
しかし、満を持して1位に挙げられていたサリンジャーの『フラニーとゾーイー』は全く好みではありませんでした。…これだから読書はやめられない!
ちなみにランキング4位『いちばんここに似合う人』と6位『幸せの理由』は、現在わたしの枕元に仲良く積まれています。
いつかこのランキングの本を全て読んで、自分の好みに合わせて並べ替えたいです。
他の通常の記事では、1冊の書評ではなく、1作家ごとのオススメ作品をリストにして紹介されています。いくつか特にお気に入りの記事を挙げます。
この記事を参考に、『ガラスの街』を購入しました。
ガチの文学読みが重松清までカバーしていると、尊敬を通り越して呆れてしまいます。大好きな作家なのでその書評も読みたくなります。
3位の『たんぽぽのお酒』が非常にエモそうなので読みたいのですが中々本屋に売っていない…。『歌おう、感電するほどの喜びを!』と『華氏451度』はこのランキングから読みました。
作家別以外でも、とても良い切り口からまとめている記事がたくさんあります。「カバー範囲が広いとこういうこともできるんだなぁ」とため息が出ます。
特に最後のものは、「日本のこの作家が好きなら、この海外作家もどう?」とガイブンへの橋渡し的な紹介を、なんと25人分もやっている凄い記事です。
日本文学と海外文学の両方を熟知していないと出来ない離れ業だと思います。
また、このブログの凄いところは実は小説以外もカバーしているところ。音楽やゲームなど、ブログ主さんのとんでもない趣味の広さ・深さがとくと味わえます。
特に音楽系の記事では、「D.A.N.」や「Spangle Call Lilli line」といった今では超お気に入りのアーティストを教えてもらったので感謝しかありません。
以上、3つの書評ブログを紹介しました。
正直に告白しますが、この文章は触発された元の記事に則って「おすすめ書評ブログ10選」と銘打って書き始めました。でも各ブログへの愛が重すぎてまとめきれなかった…長くなりすぎた…。
今回紹介した他にも大好きなブログはたくさんありますが、それらはまた別の機会に!
この記事を読んで、少しでも書評ブログを読むことに興味を持ってくれたら嬉しいです。「本の感想を読むこと」だって立派な読書ではないでしょうか。こうして感想に感想が積み重なり折り重なり、この世界は豊かになっていくのでしょう。
そして書評ブログを読んで新しい本に出会ったあなたが、新しい書評の紡ぎ手となることを祈ります。
【ほかの文学系記事まとめ】
・2018年上半期 海外文学・日本文学ベスト
・2017年海外文学ベスト
・2017年日本文学ベスト
それではまた。
