恥を忍んで牛乳を得る
アウトドア派かインドア派か。
私は散歩や旅行も好きだし、家の中で本を読むのも好きだ。
ただし家にいると決めた日は一歩も出ない。
快適な室温に保たれた巣に籠城する。
籠城するということは必要なものを完璧に揃えておかなければならないということだ。しかもこの『一歩も外に出たくない日』は唐突にやってくる。
前日の昼かもしれないし、夜かもしれない。夜だった場合はスーパーも閉まっている。そうなると決行の意思が湧いてきた時点で家を出たくないのに、しぶしぶコンビニへ向かう羽目になる。
こういった"しぶしぶ"な状況に陥らないように家の中にはストックがたくさんある。
シャンプーなどの日用品もそうだが、私の場合は主に食品で、それも韓国ラーメンなどの辛いものと、シャトレーゼのお菓子は必ず家の中にある。ここで語ると長くなるため省略するが、どちらへの愛もほどほどに深い。
引きこもるための用意が周到な私だが、先日、失念してしまったことがある。牛乳がなくなったのだ。
牛乳。これも常に置いておきたい食品である。
どれくらい置いておきたいのかでいうと、なくなったら怒ってしまうくらいには置いておきたい。
私はすぐに怒る、というか「ん?」となる。眉に皺が寄る。そしてすぐに戻る。
熱しやすく冷めやすいけど、その温度にあまり差がないため、あまり怒らないよねと言われる。
だけど牛乳がなくなっているときはしっかり怒る。ちゃんと不機嫌になる。そんな自分は嫌なので実家にいた頃は牛乳を自分で買ってきてストックしていた。だが家の人は"余っている"と思い、結果なくなる。そしてキレる。
実家を出てからの牛乳管理は楽だった。
自分しか飲まないから、あと何杯ほどでなくなるのか把握できる。無駄もなく、消費期限に追われることもなく牛乳を手にすることができるのだ。
だが牛乳がなくなった。
正確には一杯分残っていた。でもその日は濃いコーヒーをいれて、どんどん牛乳を足し、最終的に"コーヒー味の牛乳に至ったもの"が飲みたい日だった。一杯分では圧倒的に足りない。
私の管理は正しかった。
だけど気分が計画性を覆した。
どうしてもお腹がたっぷたぷになるまで牛乳が飲みたい。ウーバーイーツをしよう。
そう、ウーバーイーツをした。
ウーバーイーツは飲食店だけでなく、コンビニやスーパーも選択できるようになっていた。
ちなみに自転車を使えば全然スーパーにはすぐに行ける。だけどスーパーに行くということは服を着替えて身だしなみを整えなければならないということだ。家を出たくない日は身だしなみも整えない。なんにもしない。なんにもしたくない。怠惰の権化なのである。スーパーになど行けるはずがない。
怠惰の権化はかろうじてスマホを操作して牛乳一本をウーバーイーツした。
喋りたくもないので玄関に置いてもらい、ノックをしてもらった。
配達の方が去ったのを確認して荷物を回収。
袋の中にはスーパーのチラシと、生鮮食品を入れる袋に入った牛乳一本。そして保冷剤も入っていた。
ホスピタリティが過ぎる。
恥を感じた。たかだか牛乳一本で外に出たくないなどと駄々をこね、ここで後日ウダウダと書き散らかしているところまでを含めて恥だと思った。
だけど怠惰を突き通して得た牛乳はめちゃくちゃ美味しく感じた。


こちらも怠惰な人間が時折見せる積極的な行動についてです。
