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PayPayポイントは日本一の旗を降ろしたのか【2025】ポイント経済圏の発行額番付(楽天・d・PayPay・Ponta・V・WAONの序列)

はじめに:終わりなき「経済圏競争」の勝者は誰か?

2025年、私たちの生活は「ポイント」と切っても切り離せないものになりました。 スマートフォンの決済アプリを立ち上げれば、当たり前のようにポイントの残高が表示され、 ディスプレイ広告のバナーでは「ポイント最大〇倍還元」の文字が躍る。 物価高が続く今、少しでも生活を豊かにしようと「ポイ活」に励むのは、もはや当たり前の光景です。

この背景にあるのが、通信、決済、金融、ECといった自社サービスで顧客を囲い込み、一人当たりのLTV(顧客生涯価値)を 最大化しようとする巨大プレイヤーたちの熾烈な「経済圏間競争」です。 数千万単位の会員基盤を持つ彼らは、ポイントを強力なインセンティブとして、私たちの生活のあらゆる場面に入り込もうと、 まさに鍔迫り合いを演じています。

  • どの経済圏が、一番おトクなのか?

  • 自分の生活スタイルに合った経済圏はどこなのか?

  • 有識者、インフルエンサー、友人、最近では生成AIはこう勧めてくるけど、本当にそれがベストな選択なのか?

多くの人が抱くこの疑問に、明確に答えるのは簡単ではありません。 なぜなら、そのおトクさ、つまり「ポイントのたまりやすさ」を測るための最も重要な物差しである「ポイント発行量」が、 一部の事業者から公に発表されていないからです。KDDI(au・Ponta)に至っては、総務省の「電気通信市場検証会議」に呼ばれても 自社のポイント発行量を開示しないくらいに徹底されている等、各社の戦略的な思惑もあって、その規模(流通サイズ)はベールに包まれており、 私たちは断片的な情報から推測するしかありませんでした。

しかし、本当にそうでしょうか?

各社の決算発表データ、プレスリリース、そして業界動向などを丹念に読み解き、いくつかの仮説を置くことで、その巨大な流通サイズの輪郭を 浮かび上がらせることは可能です。少なくとも、桁を間違えない程度に"当たらずとも遠からず"の試算は十分にできます。

そして、この試算を元に現在の経済圏間競争を俯瞰すると、驚くべき実態が見えてきます。 それは、すでにこの競争には「明確な序列」が生まれつつあり、今後5年間で言えば上位グループと下位グループの差は、覆すことが不可能な レベルにまで開いているという事実です。

本稿では、これまで横並びで比較することが難しかった各経済圏の規模を「ポイント発行量」という観点から推定しつつ、 この終わりなき競争の未来図を解き明かしていきます。

結論を先に言えば、この競争の主役として勝ち残れるのは「3つの事業者グループ」だけです。 それ以外の事業者は、大手との統合や提携によって生き残りを模索するか、あるいはニッチな領域で細々と存在感を示すか、 いずれにせよ近い将来、大きな戦略転換を迫られることになるでしょう。

それでは、いくつかの仮定を置きつつ、2025年現在のポイント経済圏のリアルな勢力図を見ていきましょう。


1.お客様の心象風景から見る「経済圏」の序列

(1)主要調査が示す「ポイント活用度」ランキング

私たちが「おトクさ」を測る上で、まず参考にするのが世の中の評判です。 調査機関のレポートを見ると、生活者の感覚的な序列が浮かび上がってきます。

① MMD研究所の調査
最も活用されているポイントとして、1位:楽天ポイント、2位:dポイント、3位:PayPayポイントという結果

② 野村総合研究所(NRI)の調査
日常的に利用しているポイントとして、1位:楽天ポイント、2位:PayPayポイント、3位:dポイントという結果

これらの調査からわかるのは、楽天ポイントが盤石の首位であり、dポイントとPayPayポイントが激しい2位争いを 繰り広げているという構図です。後述する定量的な実態と、生活者の感覚がどの程度一致し、あるいは乖離しているのかが、 本稿の興味深いポイントの一つです。

(2)「おトク」というパーセプション(認識)が生まれるまで

では、なぜこのような序列が生まれるのでしょうか。 私たちが「このポイントはおトクだ」と感じる(パーセプションを持つ)までには、大きく3つのプロセスがあります。

  • 自分で理解する:公式サイトやアプリで還元率やキャンペーンを調べ、論理的に「おトクだ」と判断する。

  • 体験して感じる:実際に店舗やネットで利用し、想定以上にポイントがたまったり、スムーズに使えたりして「おトクだ」と実感する。

  • 第三者から聞いて感じる:友人や家族、あるいは専門家やインフルエンサーが「これが良いよ」と勧めているのを聞き、「きっとおトクなのだろう」という印象を持つ。

この3つのプロセスが相互に影響し合い、世の中の「おトクさ」のイメージが形成されていきます。 そして、このイメージの源泉こそが、本稿のテーマである「ポイントの発行量」です。 ポイントの発行量が多いほど、キャンペーンも大々的に打て、ユーザーの体験価値も向上し、口コミも広がりやすくなるからです。

2.ファクトから読み解く、ポイント発行額のリアル

(1)なぜトッププレイヤーは「発行額」を語らなくなったのか?

NRIのレポートによれば、日本のポイント市場は1.5兆円から2兆円規模の巨大マーケットです。 市場が最も沸騰したのは、官製キャンペーン「マイナポイント事業」が実施された2022年度から2023年度の上期でした。 この時期は、いくつかの事業者が自社のポイント発行額を景気良く公表していました。

一方、その熱狂が過ぎ去った後、状況は一変します。 特に、今やトップ集団を形成するPayPayポイントは2022年度のポイント発行額が6,000億円となり、 「2023年に発行額1位のポイントになる」という目標を設定していると発表して以降、具体的な数字を公表しなくなりました。

また、Ponta(KDDI/au)は、2019年にロイヤリティマーケティングのPontaとの提携を発表した際に、統合後2,000億円規模を 見込むと発信した以降、具体的な数字を一切公表していません。

楽天やドコモのように決算のタイミングで、ポイント付与額やポイント利用額を公表する事業者がいる一方で、 PayPayやPonta(KDDI/au)のように手の内を明かすことのメリットがないと判断している事業者が、経済圏のサイズがものをいう 経済圏間競争の当事者としてポイント発行量を開示しない理由、したくない理由、もっというとできない理由の考察は、 後段で述べたいと思います。

(2)2025年推定発行額番付

本章では、公表されている情報から推定した、各経済圏のポイントスケールを説明していきます。 なお、各共通ポイントのポイント発行量の推定や試算の考え方については、有料エリアでご案内いたします。

2025年現在の番付表(当たらずとも遠からずレンジ)

【西の横綱】楽天ポイント:推定5,500億~5,900億円
もはや他を寄せ付けない、圧倒的な存在感を放つのが楽天ポイントです。現在その規模は他の追随を許しません。 ただ、2022年に6,200億円、2023年のポイント発行量が6,500億円だったと発表しておりますが、楽天の場合、四半期決算単位で 累計のポイント発行数を開示しているため、前年度同期比で差分を試算すると、1年間の発行数が四捨五入して0.5兆円となっている 時期もあるため、現在の年間ポイント発行数は四捨五入して0.6兆円規模だと考えられます。

楽天のポイント発行数の伸びに陰りがあるのは、2022年度から2023年度上期のマイナポイント事業の反動影響を受けているためだと 考えられますが、その逆風があったにもかかわらず、楽天経済圏の成長力は根強く、それを補って成長していると考えられます。

楽天市場、楽天銀行、楽天証券、楽天カード、楽天トラベル、そして楽天モバイルといった強力なサービス群が有機的に連携し、 ポイントを絶え間なく生み出し、経済圏のサイズを広げるためのエコシステムは完成の域に達しています。

共通ポイント市場における相対的なポジションとして、5,000億円を超えるプレーヤーを横綱としておりますが、 楽天ポイントについては、ここ3年間の成長率(発行量はマイナス成長)を考慮し、「西の横綱」としております。

【東の大関】PayPayポイント:推定4,600億~4,900億円
2022年4月に同社が開いた会見にて、「2023年には発行額1位のポイントを目指す」と宣言したPayPayポイントですが、 その後は、自社のポイント発行数を発表することなく鳴りを潜めている状況にあります

同社は2022年度のポイント発行量が約6,000億円だったことを発信していたため、2023年度に約500億円超発行量が増えれば、 自社がナンバーワンになったことを宣言してもよかったと思いますが、2023年度のポイント進呈量は6,500億円どころか、 2022年度6,000億円の規模を大きく下回って着地したのではないかと想像しています。

QRコード決済PayPayについては、定期的に自社のポジションを発信しており、例えば2024年度は、QRコード決済市場における シェアを7割持つ、国内No.1のコード決済サービスであることを喧伝していることから、PayPayポイントの発行量はそのポジションに至らないまま着地し、その目標の旗をひっそりと降ろしたと考えられます。

PayPayやPayPayカードといった決済事業の急拡大に加え、LINEヤフーの事業、国内ショッピング取扱高も好調、 ソフトバンクやY!モバイルなどの事業も堅実に成長しているなかで、PayPayポイントの発行規模が減少した理由や その減少額の推定については、後述いたしますが、共通ポイント市場において、確固たる存在感を持ち、 4,000億円を超え、5,000億円規模を狙えるポジションに位置するPayPayポイントを、「東の大関」といたします。

【西の大関】dポイント:推定4,000億~4,500億円
NTTドコモは、楽天グループ同様、四半期決算ごとに開示をしておりますが、ポイント発行量ではなく、 「dポイントが実際に利用されたポイント数」を公表しています。また、あわせて、dポイントが提携先である加盟店で 利用されたポイント数を開示しているところがユニークです。

NTTドコモの決算データ集によれば、2024年度に約2,700億円のdポイントが提携先で利用されたことがわかります。各社提携先でのポイント利用数を開示していないため、あくまでも各社の出自や事業構造からの想定となりますが、 楽天ポイントは楽天グループ内(例えば楽天市場での買い物)で消化される率が非常に高く、PayPayポイントも、 PayPay支払い時に充当するケースに加え、比較的LINEヤフーの各サービス(例えばYahoo!ショッピング)で消化されるため、 グループ外の提携企業を利用した際に支払われるポイントの規模はdポイントが最も大きいと言えそうです。

また、ポイントは発行から利用までのタイムラグや失効分があるため、実際の発行額は公表値(ポイント利用数)に 10%程度上乗せして試算するのが妥当だと考えられます。dポイントは2025年度の第1四半期に935億円のポイントが利用されたことを 公表しており、年間のポイント利用数は4,000億円内外、その際のポイント発行数は4,000億円を超えてくると推定できます。

dポイントは、ドコモ回線という盤石の顧客基盤と、d払い、dカードを中心とした決済領域への積極投資により、 発行規模は4,000億円を超えてきており、そのポジションは「西の大関」と言えるでしょう。

【関脇】Pontaポイント(KDDI/au):推定3,000億円内外
Pontaは、横綱・大関の「トップ3」には及ばないものの、au経済圏との強力な連携を武器に規模を拡大しています。 M&A先であるローソンでのキャンペーンや、有料会員組織であるPontaパス会員向けの、au PAY利用時の積極的なインセンティブ進呈が功を奏していると考えられます。

また、ローソン等、Ponta運営のロイヤリティプログラムの提携企業が従前から発行していたポイント数(数百億円規模)と、 KDDI/auグループが進呈するポイント数を合算した2020年度の約2,000億円規模を起点とし、その後の数年間で、 最低でも数百億円~1,000億円程度の積み増しがあったと推定しており、ポイントの発行数として3,000億が見えている規模の Pontaを「関脇」といたします。

【小結】東:WAON POINT 西:Vポイント 推定1,200億円~1,600億円
この2つのポイントは、関脇以上の事業者と比較して、ポイント発行規模において明確な壁に直面しており、 小結といったところでしょう。

WAON POINTは、2022年度に発行規模が約1,100億円であると公表しており、その後、AEON Payに力を入れるなど、 ポイント発行額自体は伸長していると考えられますが、イオングループという強力な基盤を持つものの、本質は小売業であり、 グループの体力を超えてポイントを発行することは困難です。

直近の決算からグループの営業利益率は2%程度であり、非常に薄利な事業の中で、ポイント原資の追加負担余力が限られていると 言わざるを得ません。(2年後に2倍の発行規模にできますか?と言われても、無い袖は振れない)

Vポイントも、運営会社の財務諸表(負債)を確認する限り、ポイント発行規模は1千億円台だと考えられます。 2026年3月にVポイント運営会社の経営権が三井住友カードに移ることが発表されていますが、従前のVポイント(旧Tポイント)の提携店が 発行するポイントが急激に増えることは想像しづらく、今後のVポイントは、進呈原資の大部分を決済手数料収入からねん出する 自社負担モデルに移行するとみられ、三井住友カードの稼ぎの中で負担できる販促費水準を考慮した場合に大幅な上積みは難しく、 現在の序列を覆すのは極めて困難だと言えます(関脇クラスにのし上がるには、さらに年間1,500億円以上のコストがかかる)。

【前頭】
前頭以下のポイント発行事業者として、2026年1月にJポイントへ移行することが発表されたJCBのOki Dokiポイント、 2026年度以降にエムットに移行することが発表されている三菱UFJグループの銀行やカード会社が発行するポイント、 JR東日本のJRE POINT、関西圏の共通ポイントであるSポイントなど、ポイント発行量3桁億円(推定100億〜500億円)規模で続きます。 ただし、これらのポイントは特定の領域や地域で限定的に強みを発揮するものの、番付上位の巨大経済圏と渡り合うのは難しいのが実情です。

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