【問いの庭 解説note #007 】Beautiful Questionは作るものではない:問いが生まれる場所を整えること。
【この記事について】
問いの庭(言葉とコトバ)第7回の視点を、文章として深掘りします。ラジオはこちら
【「問いの庭」とはどんな番組か】
正しい答えではなく、美しい問いに出会おう。
そんなコンセプトでお届けしている番組です。
AI時代に本格的に入ってきた今、答えを知っていることにますます意味がなくなってきました。答えは調べたら出てくるからです。
そんな時代にますます大切になってくるのは、問いを立てること。
問いの立て方が美しいと、私たちは軽くなります。
問題が問題ではなくなるからです。
それは身体や心にも大きく影響していく。
問いを深めていくことは
新しい時代の教育の形であり
セルフケアの方法でもある。
そんな思いから、この番組を作りました。
この番組では毎回、一つの視点と一つの問いをお届けしています。
ここで出会った問いが、あなたの美しい問いへ繋がっていくことを願って。
【この記事が届くといいなと思っている人へ】
問いを探しているのに、見つからない人に、届けたいと思って書いています。
答えよりは問いが大切だと気づき始めた人。
しかし、頑張って問いを作ろうとしても、うまくいかない人。
自分の問いは、どこか借り物の感じがする人。
そういう経験をしてきた人たちにお届けしたいです。
それは、問いの作り方が悪いのではありません。
なぜなら、問いは作るものではないかもしれないからです。
今日の視点は、問いが生まれる場所を整えることについての話になるかもしれません。
【視点:Beautiful Questionは作るものではない】
前回の話から続けます
前回は、空間は内側にあるという話をしました。
私たちは世界を外側から観察しているのではなく、世界の中にすでに身体ごと投げ込まれている。凪もまた、外の環境ではなく内側に生まれる空間だという話でした。
今日はその続きです。
空間が内側で生まれるように、問いもまた内側からやってくる。
問いは作るものではなく、迎えるものかもしれない。
そんな話をしてみます。
問いは「作る」ものではない
問いが大切だと感じるようになってから、私は良い問いを作ろうと頑張っていた時期がありました。
どんな問いが美しいか。
どんな問いが深いか。
頭で考えて、言葉を選んで、問いの形を整えていく。
でもそうやって作った問いは、どこか借り物の感じがする。
身体に届かない。
持ち歩いても、心身は軽くならない。
むしろ「良い問いを作らなければ」という焦りで、
身体がどんどん重くなっていきました。(笑)
それで気づいたんです。
問いは頭で作るものではない、と。
なぜなら、答えるために問いが欲しいのではなく、感動するための問いが欲しいわけです。「今まで、そんなこと考えてこなかった!」という感動が欲しい。
しかし、感動とは狙って作れるものではありません。
美しい朝日や夕陽を見ると感動しますよね。
でもそれは、狙って見られるものではない。
その日の気象条件に大きく左右される。
それと同じで、良い問いも「こちらの好きなように作り出してやろう」と思っていると、かえってうまくいかないんです。
良い問いも、美しい朝日のようにやってきてくれるのを待つしかない。
ちなみにこの考えに至った頃に読んでいた本のタイトルから
良い問いのことを、それ以来「美しい問い(Beautiful Question)」と呼ぶようになりました。
これが、これまでのエピソードでも度々触れてきた言葉の由来です。
私が考えるBeautiful Questionとは
今までずっと悩んできた問題が問題でなくなってしまうような問い。
「こんな風に世界を見ていいなら、本当に楽だ」と思えるような問い。
身体や心までを実際に軽くしてくれるような問い。
明日からまた生きるのが楽しくなるような問い。
こういう問いたちのことを
私は美しい問い(Beatiful Question)と呼んでいます。
そういう問いは、頭から生まれません。
もっと深い場所から、向こうからやってくるものです。
今日はその場所がどこなのか考えてみたいと思います。
なぜ私はこの番組を始めたのか
その前に、少し私自身の話をさせてください。
東京でサラリーマンをしていた頃、私はひたすら「正しい答え」を追いかけていました。でもその生活は心身に負荷をかけていたようで、体調を崩してフリーランスになることを決めました。
外側の環境は変えた。でも問いを変えていなかった。
人生のステージが変わっても、自分に立てている問いは同じままでした。
「どうすれば正しくできるか」という問いを握りしめたまま、答えだけを外側に探し続けた。
それでも数年後、二度目の強制終了が来ました。
今回は命が危ういところまで行きました。
一人暮らしができなくなり、実家に帰り、
養生に専念する日々の中でようやく気づきました。
生きる問いが古いと、人は枯れる。
答えが見つからないのではなかった。
問いがずれていたのだ。
問いが刷新されないとき、人は答えを外側にばかり求めるようになります。
正しい方法。
正しい生き方。
正しい三十代の生活。
でも私が答えているのは「他人の問い」であって、
自分自身の人生の問いではなかったんです。
問いが変われば、答えも変わる。
そのシンプルな真実に気づくまでに、私は二度の強制終了が必要でした。
でもしっかり腹落ちして学ぶことができた。
「正しい答え」ではなく「美しい問い」を探すこと。
こういった経験が、この番組を始めるきっかけになっています。
問いが生まれる場所
では、本題です。
Beautiful Questionはどこからやってくるのか。
私は、内側の静けさの中から、だと言いたいです。
頭が騒がしいとき、問いは来ません。
答えを急いでいるとき、問いは来ません。
何かを証明しようとしているとき、問いは来ません。
散歩しているとき。
ふと目が覚めた早朝。
誰かと静かに話したあとの沈黙。
お風呂の中。
そういう、内側が少し静かになった瞬間に、問いは向こうからやってきます。
ちなみに、この番組のアイディアもお風呂に入っている時に
「ポッドキャストやってら良いんじゃね?」
っていう感じで降りてきました。
そして、この番組を「問いの庭」と名付けたのも、ここと関係しています。
庭は整えるものであり、育てていくものです。
土を耕して、水をやって、光が届く場所を設ける。
すると花は自然に咲きます。
なんとなく問いも似ているなと思い、番組名にしました。
引き続き、美しい問いが降りてきてくれる庭を整えたいなと思います。
東洋が知っていた「整える」という実践
少し東洋の知見から考えていきましょう。
東洋では、気づきが生まれる場所を整えることを、修行としてきました。
曹洞宗の「只管打坐(しかんたざ)」
ただ座ること。
何かを得ようとせず、ただ座る。
悟りを求めない。
答えを探さない。
ただ、内側が静かになる場所に身を置く。
道元が伝えたこの実践は、
答えを求めるのではなく整えること自体が修行だという思想です。
Beautiful Questionも同じかもしれません。
問いを作ろうとしない。
探そうとしない。
ただ、内側が静かになる場所を作る。
そうすることで、問いは向こうからやってくる。
現代人にとっても
静かに座ることが、問いを迎える第一歩になるのかもしれません。
凪という場所に、問いはやってくる
内側の静けさ。
騒がしさが収まった場所。
頭の言語処理が少し止まった瞬間。
そういう状態を、この番組では「凪(なぎ)」と呼んでいます。
凪とは、風が止んだ海の状態です。
波がない。
音がない。
ただ、静かにそこにある。
Beautiful Questionは、凪の中にやってきます。
内側が騒がしいままでは、問いの声は聞こえない。
でも凪の中では、小さな問いの声が聞こえてくる。
問いを探すのではなく、凪を作ること。
それが、Beautiful Questionを迎える準備です。
この「凪」については、次回以降でさらに深く話していきます。
【今日の持ち歩ける問い】
あなたが問いを作ろうとするのをやめたとき、何が聞こえてきますか?
凪の中で、迎えてあげてください。
▼ もっと深く
ここからは、この問いをさらに掘り下げたい方のために書いています。読み飛ばしても十分に楽しめます。
① 背景 問いの哲学・ソクラテス・禅の公案・DMN
哲学の出発点は問いです。ソクラテスは「無知の知」—自分が知らないことを知っている—から出発しました。彼が用いた「産婆術(さんばじゅつ)」は、答えを与えるのではなく、相手の内側にある知を引き出す問いかけの技法です。答えは外から来るのではなく、内側から産まれるものだというソクラテスの確信が、ここにあります。
禅の公案は9世紀頃の中国に起源を持ちます。「解く」のではなく「生きる」問い。静けさの中で問いを抱え続けることで、論理を超えた場所に何かが降りてくる。この構造は、Beautiful Questionが凪の中にやってくるという視点と完全に一致しています。
神経科学の観点からも興味深い事実があります。アイデアや問いが生まれるのは、集中して考えているときではなく、ぼんやりしているときであることが多い。これはDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)の働きによるものです。シャワー中や散歩中にアイデアが浮かぶのは、偶然ではありません。内側が静かになったとき、脳は別の処理を始める。Beautiful Questionがやってくる瞬間は、このDMNが活性化している状態と重なります。
<参考文献>
『禅と日本文化』鈴木大拙著(岩波新書)
公案という東洋の「答えのない問い」の背景として。静けさの中に問いが降りてくるという禅の実践を理解したい人に。Beautiful Questionが公案と同じ水脈にあることを感じたい人に。
『ソクラテスの弁明』プラトン著(岩波文庫)
問いの哲学の原点。問いがいかに人間を深めるかを感じたい人に。薄くて読みやすい。問いの力を哲学の源流から理解したい人に。
『A More Beautiful Question』ウォーレン・バーガー著
Beautiful Questionという概念の現代的な応用。この本のタイトルからBeatiful Questionという言葉を拝借しております。問いがいかにイノベーションと人生を変えるかを論じた一冊。邦訳の確認をお願いします。ビジネスや日常の文脈で問いの力を理解したい人に。
『夜と霧』ヴィクトール・フランクル著(みすず書房)
極限状態の中で、問いを持ち続けることが人間をどう支えるかを描いた一冊。「生きる問いを間違えると人は枯れる」という視点を、最も深い場所から証明している本。問いの力を実存的に理解したい人に。
② 問いの連鎖 この問いはどこへ続くか
・あなたが今、答えを探している問いは何ですか?その問いは、あなたが本当に立てたい問いですか?
・内側が静かになったとき、どんな問いが浮かんできますか?
・「こんな風に世界を見ていいなら、本当に楽だ」と感じた瞬間が、これまでにありましたか?
③ 自分で深めるための問いかけ
今この瞬間、あなたの内側は静かですか、騒がしいですか?
静けさの中にいるとき、どんな問いが浮かんできますか?
あなたにとって「凪」を作る時間は、1日の中にありますか?
ノートに書いてみてもいいし、ただ目を閉じて問いとともに座ってみてもいい。答えは出なくてもいいのです。
以上
【問いの庭 解説note #007 】
Beautiful Questionは作るものではない:問いが生まれる場所を整えること。
でした。
次回は「侘び寂びという美学」という話をします。
不完全なものを愛でる日本固有の感性。70%でいい、という根拠。完璧を求めることをやめたとき、何が見えてくるのか。そんな問いを持って、またお会いしましょう。
今回も読んでいただきありがとうございます。
次回もお楽しみに。
公孫樹
