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【問いの庭 解説note #006 】空間は内側にある:宇宙はあなたの外にありますか。内側にありますか。


【この記事について】

問いの庭(言葉とコトバ)第6回の視点を、文章として深掘りします。ラジオはこちら

※ Spotify, Apple Podcast, Amazon Music でもエピソードをお楽しみいただけますが、同期が遅いため、このnote記事ではYouTubeのリンクを貼るようにしています。


【「問いの庭」とはどんな番組か】


正しい答えではなく、美しい問いに出会おう。

そんなコンセプトでお届けしている番組です。

AI時代に本格的に入ってきた今、答えを知っていることにますます意味がなくなってきました。
答えは調べたら出てくるからです。

そんな時代にますます大切になってくるのは問いです。

問いが美しいと、私たちは軽くなります。
問題が問題ではなくなるからです。
それは身体や心にも大きく影響していく。

問いを深めていくことは、
新しい時代の教育の形であり、
セルフケアの方法でもある。

そんな思いから、この番組を作りました。

この番組では毎回、一つの視点を紹介し、みなさんと深めていきながら
最後に一つの問いを置いて終わるというシンプルな構成です。

ここで出会った問いが、あなたの美しい問いへ繋がっていくことを願って。


【この記事が届くといいなと思っている人へ】


どこにいても、どこか落ち着かない感じがする人に、届けたいと思って書いています。

◻︎広い部屋にいるのに息が詰まる。
◻︎人混みの中にいるのに孤独を感じる。
◻︎逆に、狭い場所なのになぜか安心する。
◻︎自然の中に出ると、急に呼吸が深くなる。

その感覚は気のせいではありません。

今日の視点は、空間というものを少し違う角度から見るものになるかもしれません。


【視点:空間は内側にある】


前回の話から続けます

前回は、身体は許可を求めない、という話をしました。

身体記憶は頭より先に反応する。繰り返された経験が身体に刻まれ、言語OSの土台になっている。そして身体に直接働きかけることで、少しずつ書き換えることができる、という話でした。

そして最後にこんな問いを置きました。

今日、身体があなたより先に知っていたことがありますか。

今日はその続きとして、もう一つ問いを立ててみます。

身体が内側に過去を蓄積しているとしたら、私たちが「外」だと思っている空間も、実は内側で体験されているのではないか。

空間はどこにあるか

同じ部屋に入っても、人によって感じ方が違います。

ある人には広く感じる。
別の人には狭く感じる。
初めて来たはずの場所なのに、なぜか懐かしい。
慣れているはずの場所なのに、今日はなぜか息が詰まる。

これは錯覚でしょうか。

そうではないと思います。

空間の広さや狭さ、温かさや冷たさは、部屋の中に客観的に存在しているのではなく、あなたの身体との関係の中で生まれている。

空間は外にあるのではなく、身体と世界が出会う場所で生まれるものかもしれません。

être au monde:世界の中にいるということ

哲学者のモーリス・メルロ=ポンティは、「être au monde(エートル・オ・モンド)—世界内存在—という言葉を使いました。

私たちは世界を外側から観察しているのではない。
世界の中にすでに、身体ごと投げ込まれている。

カメラが外から風景を撮るように世界を記録しているのではなく、私たちは最初から世界の内側にいる。空間を「見ている」のではなく、空間の中で「生きている」

だから空間の感じ方は、身体の状態によって変わります。

疲れているとき、部屋は狭く感じる。
安心しているとき、同じ部屋が広く感じる。

空間は外に固定されたものではなく、身体と世界の関係の中で、そのつど生まれるものです。

東洋が知っていた「内なる宇宙」

ちなみに、東洋ではこのことをずっと前から身体で知っていました。

身土不二(しんどふじ)」という言葉があります。
身体と土地は二つではない、という意味です。自分が立っている土地は、外にある別の何かではなく、身体の一部として感じられる。人間と環境は切り離せない、という東洋の直観です。

また「内なる宇宙」という東洋的な世界観では、宇宙は外に広がっているのではなく、自分の内側にも同じように広がっている、と考えます。

メルロ=ポンティが言語で辿り着いた場所に、東洋はもっと前から身体で立っていた、という感じ、しませんか。

ヌーソロジーという視点

少し現代的な話をします。

半田広宣さんが提唱する「ヌーソロジー」という思想体系があります。難解な体系ですが、今日のテーマに引きつけると、こういうことが言えます。

私たちは空間を「外にあるもの」として扱いすぎている。
空間は器ではなく、意識が生み出すものだ。

という視点です。


メルロ=ポンティが「空間は身体と世界の関係から生まれる」と言い、東洋が「身体と土地は分けられない」と言ってきた。ヌーソロジーはその延長線上で、さらに踏み込んで「空間の構造そのものが意識の構造と対応している」と論じます。

宇宙は外にある巨大な入れ物ではなく、意識の深さに対応した広がりを持っている。

難しく聞こえるかもしれません。でも直感的には、こういうことかもしれません。

内側が深い人は、世界が広く見える。
内側が狭まっているとき、世界も狭く感じる。

これはメルロ=ポンティも、東洋も、ヌーソロジーも、それぞれの言葉で指し示している同じ場所かもしれません。

凪という空間

空間が内側で生まれるとしたら、凪もまた内側にある空間です。

外の環境が静かになることが凪ではない。
内側に静けさが生まれること、それが凪です。

嵐の中にいても凪でいられる人がいます。
静かな部屋にいても内側が騒がしい人がいます。

凪は場所ではなく、身体の状態です。

地面を感じること。
今ここに足がついていること。
呼吸が深いこと。

そういう内側の感覚が、凪という空間を作ります。



【今日の持ち歩ける問い】


宇宙はあなたの外にありますか。内側にありますか。

答えは見つからなくても大丈夫です。
ただ、持ち歩いてみてください。


▼ もっと深く


ここからは、この問いをさらに掘り下げたい方のために書いています。読み飛ばしても十分に楽しめます。

① 背景 現象学・身土不二・環境心理学

メルロ=ポンティの現象学では、身体は「主体」であると同時に「世界への開口部」でもあります。私たちは身体を通じて世界と接触し、その接触の中で空間が生まれる。これを「身体図式(schéma corporel)」と呼びます。

身体図式とは、身体の輪郭の感覚だけではありません。道具を使い慣れると道具が身体の延長になるように、私たちは環境を身体に取り込みながら空間を感じ取っています。慣れた街を歩くとき、地図を見なくても身体が道を知っているような感覚はこの身体図式の働きです。

環境心理学の分野でも、空間が人間の心理・行動に与える影響は広く研究されています。天井の高さが思考の抽象度に影響するという研究、自然の景色が副交感神経を活性化するという研究など、空間と身体の相互作用は科学的にも裏付けられています。

ヌーソロジーの視点からはさらに踏み込んだ問いが立ちます。

半田広宣さんは、現代物理学(特に素粒子論・場の理論)と東洋哲学・神話的世界観を接続しながら、「空間とは何か」を意識の問題として論じています。通常の物理学が「空間の中に意識がある」と捉えるのに対し、ヌーソロジーは「意識の構造が空間を生み出している」という逆転の視点を提示します。

この視点は、メルロ=ポンティの「身体が空間を生み出す」という現象学的洞察と、方向性を同じくしています。西洋現象学が身体のレベルで辿り着いた場所に、ヌーソロジーは意識と宇宙の構造レベルから接近している、とも言えます。

<参考文献>

『知覚の現象学』モーリス・メルロ=ポンティ著(みすず書房)

être au mondeという概念の原典。空間が身体から生まれるという視点の哲学的根拠として。難解だが、身体で読む本。身体と空間の関係を根本から問い直したい人に。

『メルロ=ポンティ入門』鷲田清一著(ちくま学芸文庫)

メルロ=ポンティの思想を日本語でやさしく解説。原典への橋渡しとして。「現象学って何?」という入口に立っている人に。

『「空気」の研究』山本七平著(文春文庫)

日本人が場の空気を身体で感じ取るという独自の分析。空間が内側で生まれる日本的な証拠として。「なぜ日本人は空気を読むのか」を深く考えたい人に。

『日本の思想』丸山眞男著(岩波新書)

日本人の身体感覚と思想の関係を論じた古典的名著。身土不二の文脈を思想史の中で理解したい人に。

『永遠の詩 (全8巻)2 茨木のり子:自分の感受性くらい』茨木のり子著(小学館)

「自分の感受性くらい自分で守れ」という言葉で知られる詩人の代表詩集。内側を守ること、内側に根を持つことを詩の言葉で感じたい人に。哲学書が重いと感じるときに、まずこの一冊から入ってほしい。


『シリウス革命』半田広宣著

ヌーソロジーの世界観を宇宙論的スケールで論じた一冊。「空間は意識が生み出す」という視点への入口として。宇宙と自分の関係を根本から問い直したい人に。哲学書や詩集とはまた違う角度から「内側と外側」を考えたい人に。


『ヌーソロジー:物質と意識の統一理論』半田広宣(公式サイト・note)

書籍よりも半田さんのnoteやウェブ上の文章の方が入りやすい場合もあります。まずはウェブで検索してみることをおすすめします。


② 問いの連鎖 この問いはどこへ続くか


  • あなたが「ここにいると息ができる」と感じる場所は、どんな場所ですか。逆に、広いはずなのに息が詰まると感じる場所はありますか。

  • その違いはどこから来ていると思いますか。

  • あなたにとって「内側が広い」とはどういう状態ですか。


③ 自分で深めるための問いかけ


今この瞬間、あなたがいる場所はどんな感触がありますか。
身体のどこでそれを感じていますか。

今日、空間が「変わった」と感じた瞬間はありましたか。
外が変わりましたか。それとも内側が変わりましたか。

あなたの内側に、宇宙があるとしたら、今その宇宙はどんな状態ですか。

ノートに書いてみてもいいし、ただ目を閉じて問いとともに座ってみてもいい。答えは出なくてもいいのです。

今回も読んでいただきありがとうございます。

<次回予告>

次回は「Beautiful Questionを自分で作る」という話をします。

答えと問いの本質的な違い。
そして問いはどこから来るのか。
問いの庭という番組の核心に触れる回になります。


次回もお楽しみに。

公孫樹

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