Photo by
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック / メトロポリタン美術館
芥川龍之介 昭和二年三月二十八日 俳句一句 さるすべり 透明なる歯車あまた右の目の視野に廻転することあり
この頃又半透明なる歯車あまた右の目の視野に廻転することあり、或は尊台の病院の中に半生を了ることと相成るべき乎や。
唯今の小生に欲しきものは第一に動物的エネルギイ、第二に動物的エネルギイ、第三に動物的エネルギイのみ。
冴え返る枝もふるへて猿すべり
[昭和二年三月二十八日 斎藤茂吉宛]
百日紅にはまだ早い。花は七月から九月だ。
流石に冴え返る百日紅の花はなかろう。
冴え返る鄰の屋根や夜半の雨
[昭和二年四月十日 斎藤茂吉宛]
これは遅すぎる。
つまり?
意味が解らない。
どこかに嘘はある。どれが嘘なのかは分からない。

これは何とも判断しがたい手紙だ。
生きたいようで、まだ何十年かは生きるようで、どうも死にかけている。
