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AI洞窟畫の斷章。(500字)

 或るシチリア料理屋に幾年かぶりにはいると、メニューの黒板がカオスであった。相變わらず味は慥かなものの、消し切れていない靄や薄く殘った昔の字が幾層にも重なり、或る意味おもしろいなと眺めていた。

 家人はひとりで觀てきたばかりの『ARCO』の話をしていた。この映畫、私が浅井俊介に治療してもらっている際、彼が私の軀を讀みとって、家人によいであろうと勸められたものになる。したがって私は映畫を觀ていないし、少年アルコの存在も識らなかった。

 あらすじはこうである。2932年から2075年にタイムトラベルした10歳のアルコが、もとの時代に還れなくなったというものだ。その際にキーとなったのが、機械の洞窟画になる。もっとも家人から聴き齧った話であるけれども、AIが洞窟画を描く日も近かろう。

ひとは絵を識り、ひととなった。

『ラスコーの壁畫』

 洞窟の壁畫をこう視たのはバタイユであった。AIも絵を識り、ひととなるのであろうか。一朝風月。悟ってしまえば、眼前の風や月が永遠となる。つまりは、異なる時代の風月と繋がるわけだが、壁畫からも同様な香りがする。

 兎にも角にも、時には觀てもいない映畫をひとに勸められるとよい。

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