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七福神シリーズ|祈紙(いのりがみ)編 【狐色の灯火、世界に響け!】

捨てられるはずの『とんかつ』を、神様がプロデュース!?夜の住宅街に奇跡の行列が踊る!

チリーン、 チリーン、チリーン、

祈紙(いのりがみ)が、大黒天の手元に。

「……なんじゃ、この熱量は。どれどれ」 大黒天が眉間にシワを寄せて読み上げる。

手元に届いた祈紙の色は、鮮やかな「小麦色」。

「この祈紙は、神社で人間が詣でた際に願った思いのたけの強さで色が変わる。」

だが、その紙からは、揚げたての油の匂いと、それ以上に強い「悔しさ」の熱が伝わってくる。一生懸命に作ったものが、誰にも届かずに消えていく……そんな、作り手ならではの「魂の叫び」が宿った色だ。

「六十代、とんかつ店店主、さく子さん……。なんじゃとぉ!ワシの目の前で、美味しいものを捨てさせるわけにはいかんぞぃ!」

六十代 とんかつ店店主 さく子さんの祈紙

『神様、今日もとんかつが余ってしまいました。心を込めて揚げたのに、捨てるのは身を切られるようです。このままでは店を畳むしかありません。どうか、フードロスを止めてください』

チリーン、
チリーン

「なんじゃとぉ!食べたくても食えん時代があったというのに、今の世はこれほど豊かなものを捨てておるのか!」
大黒天の鼻息がフンッと荒くなる。
「これは聞き捨てならん。ワシが直々に解決して、この世から少しでもフードロスを減らしてやらねば!おい、行くぞ!」

その夜。大黒天は打ち出の小槌を腰に差し、お供の狛犬、阿形(あぎょう)と吽形(うんぎょう)を連れてこっそり下界へ降りた。

場所は、住宅街にポツンと佇む「とんかつ さく子」。

「ほぉ〜、住宅街の闇に浮かぶ、孤独な狐色の灯火(ともしび)よ……」
吽形が月を見上げて、夜のポエムをしたため始める。

「見て見て大黒天様!ここ、街灯が少なくてエモいっすね。ワンチューブの背景に最高!ハイ、チーズ!」
阿形は自撮り棒を伸ばして、夜の店の前でポーズを決め出した。

「こりゃっ!お主ら、ポエムと配信をしに来たんじゃないぞぃ!『回(役割)』を履き違えるな!」
大黒天が雷を落とすが、ふと店の窓から中を覗き込み、足を止めた。

そこには、余ったとんかつを前に、申し訳なさそうに手を合わせるさく子さんの姿があった。

「……あぁ、さく子よ。お主の腕は確かじゃ。ただ、お主の揚げた傑作が、誰にも見つかっておらんだけなのじゃな」

大黒天はニヤリと笑い、腰の打ち出の小槌を構えた。
「フードロスを減らすには、食いたい奴をここに呼べばええんじゃろ?……よし、阿形!お主のその『わんちゅーぶ』とやらで、この店の揚げ音を世界に響かせろ!」

「えっ、マジっすか!?大黒天様プロデュースっすね!」

阿形がスマホを構え、大黒天が小槌を振る。
「振れば出る出る、腹ペコの客ども!さあ、揚げろ!食え!笑え!……そぉ〜れっ!」

翌日。
さく子さんの店には、スマホ片手の若者から、腹を空かせたガテン系の兄ちゃんたちまで、見たこともないような行列ができていた。

「さく子さん!SNSで見ました、このASMR(揚げ音)!たまんないっす!」

さく子さんは驚きながらも、顔を真っ赤にして次々ととんかつを揚げていく。
「はいよ!お待たせ!今日はロスどころか、肉が足りなくなっちゃいそうだよ!」

空から見下ろしている阿形が「バズったー!」とはしゃぎ、吽形が「とんかつを 噛み締め響く かつの音」と一句詠んでいた。

「神様、おかげさまで完食だよ!ありがとーよ!」

空に響くさく子さんの声に、大黒天は満足そうに腕を組んだ。
「ふんっ、当然じゃ。さて、ワシも一皿、頂いていくかの。阿形、自撮り棒を貸せ!ワシも食レポを撮るぞぃ!」





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