七福神シリーズ|福禄寿【ミステリーの夜更かしと読書の秋】
福禄寿の書斎にシロクマが遊びに来るお話です。
読書の秋。
色づいた落ち葉が舞い散り、夕暮れが早まるころ。
知恵の神様・福禄寿は、山積みの古文書や難解な本に囲まれて、
すっかり書斎にこもりっきりになっていた。
そこへ、
「ねえ、仲間に入れてよ」
と、一頭の真っ白なシロクマがやってきた。
福禄寿は長い髭を撫でながら、一冊の本を差し出した。
「おやおや、退屈かね?
ならば、この人間界で大人気のミステリーシリーズでも読んでみるがいい」
軽い気持ちで読み始めたシロクマだったが、これが運の尽き(?)。
あまりの面白さに、ページをめくる手が止まらなくなってしまった。
「犯人は誰だ……?
この密室の謎はどうなるんだ……!」
シロクマは寝るのも忘れ、食事もそこそこに、
ただひたすら本の世界に没頭した。
一日、二日……
一体、何日が過ぎただろうか。
福禄寿がふと顔を上げ、
「お前さん、少しは休んだ方がいいぞ」
とシロクマの顔を覗き込んだ。
「……あらら、見てごらん。大変なことになっとるぞ」
福禄寿が苦笑いしながら鏡を渡すと、
シロクマは叫んだ。
「あぎゃぁーーーーーっ!」
鏡の中には、ひどい寝不足のせいで
目の周りがこれ以上ないほど真っ黒になった自分の姿。
さらに、福禄寿は独り言が多く、
ブツブツと知恵の断片を呟く癖があった。
居候の身であるシロクマは、
その言葉を聞き漏らすまいと常に聞き耳を立てていたため、
なんと耳まで大きく、真っ黒になってしまっていた。
「おやおや、おまけにわしの茶菓子を勝手に食べすぎたんじゃよ。
体が、まん丸ではないかぁー」
気が付けば、手足も汚れを拭く暇もなかったのか真っ黒になり、
体は笹団子のようにふっくら。
「これではシロクマとは呼べんな。
これからは、福を呼ぶ白黒の熊、パンダとして生きていくがいい」
かつてナメクジに殻を授けて「カタツムリ」という家を与えた知恵者は、
今度は夜更かしのシロクマに、
世界中で愛される愛嬌たっぷりの姿を与えた――というお話。
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