短編小説|七福神シリーズ2話目| 【ボヤく七福神と祈紙の謎】
チリーン
また紙が降ってきた。
これは初詣など神社で民たちが祈りを込めた言葉が記された、祈りの紙。 『祈紙(いのりがみ)』と呼ばれるものです。
チリーン
ひらひらと舞い落ちる白い紙を、恵比寿が片手で受け止めてため息をつく。 「……今日、多くないかね~? これで何枚目なのかね~」
受け止めた白い紙を、丁寧に両手で弁財天に渡す。
大黒天が米俵にもたれながら、ぐでーっとだらけた声を出す。
「二百三十七枚目。働き方改革って、
神にも適用されるんじゃなかったのかねぇ」
チリーン
今度は黄色の紙が落ちてきて、これも弁財天が受け取る。
「え~!両方、私の担当じゃない? 白紙が恋愛のすれ違いで…… 黄紙が年の差カップルのデキちゃったかも騒動~~!? やばっ!
もうさぁ~、恋愛の神って私ひとりなんだけど? 残業代って出るの? 誰か出してくれないのかしらぁ」
色恋沙汰は弁財天の担当のようですね。 白紙と黄紙を、弁財天はしっかり仕分けている。
「恵比寿ちゃん!! ちょっと! 鯛~! ここに置いていきっぱなし~! 忘れてるよ~」
弁財天の叫びは止まりません。
布袋が大きなお腹を揺らしながら笑う。
「うふぇふぇふぇっ! 出ないよ〜。
だって、神様はみんな“裁量労働制”だからねぇ。
ほら、こっちは病気の山吹色だ。
あぁ~、これはなるべく早めに手を打たないと」
そう、祈紙はその色の濃さで、祈りの切実さが変わるのである。
毘沙門天は鎧をカンカン鳴らしながら、赤い紙を手にして眉をひそめる。 「また勝負! しかも赤紙かぁ~。
競馬で全財産スッて、これが外れたら首が回らなくなるって……
そりゃ、相当切実だぞ! もっと早く相談してくれればいいのに」
福禄寿が長い頭をぽりぽりかきながら、ぼそっと言う。
「まあまあ。人間は追い詰められないと動かない生き物だからねぇ。
しかし……この量はさすがに多いな。
わしゃ、もぉ~眠いんだがのぉ…」
寿老人は鹿の背中を撫でながら、ゆっくりとした声でつぶやく。
「眠れないね~周りの雪が解けてるのも、
祈りの熱で祠が温まってるからだよね~。
ほぉら、また…来た」
チリーン チリーン
七柱の神様たちは、うんざりしながらも、
今日も人間たちの願いを、黙々と仕分け続けているのでした。
チリーン……鈴の音が暗闇に溶けていきます。
囲炉裏では、時間とともに薪がパチパチと音を立て、
炎がゆっくりと立ち上がってきました。
さあ──この仕分けが終わると、
いよいよ、祈りをこめた民たちのために
神様たちの念仏の時間が、間もなくやってきます。
次回へ、つづく。
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