七福神シリーズ|寿老人 【ラクダのこぶと砂色の記憶】
七福神シリーズの小さな物語。 今日は寿老人と鹿のお話です。
◆吽形のポエム
「砂の海は、果てしなく続く沈黙。
熱風に煽られ、陽炎に巻かれ、
老いた神と一頭の鹿は、家路を見失う。
渇いた喉が求めるのは、水か、それとも母の温もりか。
――砂漠に刻まれた、奇跡の足跡を辿ってみよう。」
「ふぁ〜……暑いですなぁ、鹿さん。ここは寒い雪山かと思ったら、どうやら砂の山だったようですぞ」
寿老人は、つぶらな瞳をしょぼつかせながら、杖を支えにフラフラと歩いていた。
連れている鹿も、舌をちろりと出して「もう歩けません……」という顔をしている。
見渡す限りの砂漠。じりじりと照りつける太陽。
「おや、あそこに美味しそうなかき氷屋さんが……」
寿老人が指差した先には、ゆらゆらと揺れるオアシスの蜃気楼。
「……スヤァ」
ついに限界がきたのか、寿老人は砂の上にバタリと倒れ伏してしまった。
その時である。
「メェ〜〜〜〜ッ!!」
砂嵐の向こうから、地響きのような鳴き声とともに、巨大な影が猛スピードで駆けてきた。
それは、行方不明になっていた寿老人の鹿を心配して、神の国から爆走してきた「鹿のお母さん」だった!
「あなたたち、こんなところで何してるの!? シャキッとしなさい!」
お母さん鹿は、気絶した寿老人を右脇に抱え、息子(鹿)を左脇に抱え、猛然と砂漠を走り始めた。
だが、神様ひとりと成長期の鹿一頭は、さすがに重い。
「うぐぐ……重い……角が、角が取れるぅぅ!」
あまりの重さと踏ん張りに、お母さん鹿の立派な角が「ポンッ!」と抜けてしまった。
すると、その凄まじい力の反動で、今度は背中が「むくむくっ」と動き始めたではないか。
溜まったエネルギーが背中でうねりだし、あっという間に二つの大きなこぶが突き出した!
お母さん鹿は、そのこぶの間に二人を乗せ直し、無事に砂漠を脱出した。
その後、お母さん鹿はあまりの砂漠適応能力の高さに「ラクダ」と呼ばれるようになったという。
ラクダのこぶが二つあるのは、あの時、寿老人と鹿の二人分を背負った母の愛の重さなのだろう。
そんな、砂色の記憶が残した物語。
◆阿形
「もぉー、寿老人!砂漠で寝るなっつーの!
お母さん鹿、完全に別種の生き物になっちまったじゃねーか!
……けどまぁ、母ちゃんの愛は重いってことだな。ガハハ!」
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