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届かない横顔【ゆるっとリレー小説1年A組|書く部スピンオフ・第14話】

このお話は、以下の企画の第14話となります。

https://note.com/seana428/n/n4dd644bf77a9?sub_rt=share_pw




「お前、よかったのか?」

啓太と陽子の後ろ姿を、信吾は黙って見つめていた。

「しっかし、さすが水野部長。ロマン派だからって皆既月食のときにチューするか?」

ケラケラ笑う友達の声を信吾は笑って受け流した。

陽子が綺麗な宝箱を部室に隠したのを、信吾は知っていた。


高校に入学して天文部に入ったとき、陽子がいた。
そしてすぐに気づいてしまった。
啓太と陽子の間に、誰も入れない空気感があることを。

啓太をこっそり見上げる陽子の横顔に惹かれた。
叶わないと分かっていながらも、止められなかった。

箱の中身を鍵と入れ替えたのは、ほんの出来心。
ちょっと2人が困ればいいなぁって思って。

結果、啓太と陽子の関係性がグッと進んじゃったのは予想外だったけど。


「俺たちも受験だからな。恋にうつつを抜かしている場合じゃないよ」

信吾は陽子の横顔をもう一度見た。
切なそうに啓太を見ていた横顔は、今は前よりもずっと柔らかい。

胸がチクッと痛んだ。

「かわいそうな信吾にコーヒーおごってやるよ、大学に行ったらもっとお前に合う子に会えるって!」

友達の下手くそな気遣いに笑いながら、信吾たちは静かにその場をあとにした。

階段を降りながら、信吾はポツリとつぶやく。

「あの灰色の猫はなんだったんだろうな」


啓太と陽子が屋上と部室を行ったり来たりしていたあの日。

帰ろうとしていた信吾たちの前を、あの猫が走り抜けて行った。
そして後を追う2人の姿を見た瞬間、信吾の視界はブラックアウトした。

手を、つないでいたから。


「ロマンを追い求める水野部長の刺客だよ、きっと」
「猫も操る相手になんか、敵わねーな」

信吾は校庭から皆既月食を見上げた。


―忘れられますように。


赤銅色の月に信吾は感謝した。
俺の想いを隠してくれたような気がしたから。



次の走者、しーなリーダー!
バトンをよろしくお願いいたします!
皆既月食にまつわる恋心、ラストに向かいどう変化していくのでしょうか。
たのしみ!

目次記事:


#ゆるっとリレー小説


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