赤い月に隠された秘密【ゆるっとリレー小説1年A組|書く部スピンオフ・第六話】
このお話は、以下の企画、その第六話となります。
箱から出した写真を見て、啓太は驚いた。
「なんでこれが?」
陽子も写真を覗き込む。
「皆既月食の写真?」
啓太がバツの悪そうな顔をした。
「2022年のだよ」
陽子は啓太を見つめた。
「啓太あの日、皆既月食見てたの?」
2022年の11月。
世紀の天体ショーが日本全国で見られるとあって、
話題になっていた。
「もしかして、陽子も見てたのか?」
陽子はサッと視線を逸らした。
あの日、陽子は外で月食を見ていたどころではない。
2人で夜空を見上げた、あの思い出の場所にいたんだから。
3年前―
「約束しなくても、あの場所に来るかもしれない」
陽子は淡い期待を抱いてこっそり家を出た。
2人分の温かい缶コーヒーを持って。
中学生になって啓太は急に大人っぽくなり、2人の間にはぎくしゃくとした空気感があった。
「でも、きっと今日は特別」
2人にとって、こんな大事な日はないんだから。
月が徐々に姿を変え、赤銅色になっても、陽子は一人のままだった。
独りよがりな想いに顔が熱くなった陽子は、一番美しい瞬間を見ずにその場を後にした。
「あたしはあの場所で見てたよ。途中で帰ったけどね」
「そんなこと一言も……」
と、言いかけたけど、啓太は口をつぐんだ。
星ばかり追いかけてたあの頃、啓太はいつの間にか陽子より背が高くなり、気づいてしまったんだ。
陽子の肩があまりに華奢だということに。
意識してからはもうダメだった。
陽子が視界に入るだけで落ち着かない。
2022年のあの日、皆既月食を窓から見ていた。
「前はいっしょに見たのにな」
そう思うといても立ってもいられず、啓太はカメラを持って飛び出した。
陽子の姿は、なかった。
「何を期待してんだか……」
あの写真は、皆既月食を見に来ただけ、と言い訳するために撮ったものだった。
「誘ってたら……一緒に見れたかな」
啓太がためらいがちに言うと、陽子は強がるように口を開いた。
「そりゃあね。私も啓太のおかげで天文オタクになったから」
ぶっきらぼうな言い方に啓太は笑った。
俺たちの関係に名前がなかった理由が、分かった気がした。
外から学生たちのにぎやかな声が聞こえた。
「あれ? 箱の中にまだ何か……」
陽子は折り紙で作られた箱を見つけた。
「なんか中に入ってる」
「また鍵が入ってたら俺は泣く」
陽子が笑いながら小さな箱を開けると―。
第7走者のしーなさんへ:バトン受け取ってくださーい!お好きなように料理して、書き上げてくださいね💛 いつもと違う思考回路を使えて楽しかったです!
目次記事:
いいなと思ったら応援しよう!
応援していただいたチップはこどもたちのみかんに変身予定です!