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【私にとっての自由/Music Video】ruma vetha ― 何不自由ないことは自由なのか

私は前回、lutha-noeという「自由のかたち」を描きました。

今日はその対となる、「何不自由ないかたち」について少しお話します。

これは、私にとっての自由を考えるための、もうひとつの問いです。


蔦の子の物語

とある荒野の真ん中で、その子は生まれた。

そっと目を開けると、
目の前には良い香りのする一輪の小さな花。

その子の誕生を優しく歓迎するように、
蔦が咲かせた。

疑うことを知らない、生まれたての子。

無邪気に、手を伸ばした。


それからずっと、
蔦はその子に寄り添って生きていた。

花の蜜を与え、蔦を絡ませたゆりかごを揺らす。

迷路を作ってやったりもした。

転びそうになれば支え、眠りそうになれば包み込んだ。

空を見たいと言えば、高く持ち上げてやった。


まるで、その子は、

蔦の子のようだった。


ある日、わたしは地面があることに気づいたの。

蔦のお花と、空ばっかり見ていたから、
気づかなかったのね。

そうすると、お外に行ってみたくなった。

一歩踏み出すと、蔦が道を開けた。

どうやら、ここから行けるみたい。

どんな感触かな?
匂いは、かいだことある。

わくわくしながら、一歩踏み出す。

さらさらと、
ジャリジャリのあいだ。

指の間にはさまる小石が、ちょっとだけ変なかんじ。

蔦はもう少し、スベスベしてるのに。


蔦の子は、おそるおそる蔦の間から外へ踏み出した。

最初に見たものは、石の上に座るカエル。

喉をふくふくしながら、カエルも蔦の子を見た。

誰かと、目が合うのは初めてだった。

緊張と好奇心がないまぜになる。

少し、ドキドキした。


こ、こんにちは…?

キャッ!!


突然、カエルが跳んだ。

驚いて尻もちをつきそうになる。

蔦はすかさずそれを支え、
目にも留まらぬ速さでカエルをはじき飛ばした。


…???


蔦の子が目を白黒させている間に、
そこにはもう、

カエルはいなかった。

確かめるように、おそるおそるカエルがいたはずの石に近づく。


なにが、起きたの…?

ねぇ、いま、なにかした?


蔦を振り返ってみても、
蔦から言葉が返ってくることはない。

それを、蔦の子は知っていた。


それからも蔦の子は、

空を眺め、
ゆりかごに揺られ、
蔦の咲かせる花の蜜を吸った。

優しく包み込んでくれる蔦が、大好きだった。


あれから、ときどき外を散策するようになった。

またなにか、少しだけドキドキすることが起こるかもしれない。

そんな期待をしていたある日のこと。

近くを猿が通りかかった。


「こんなところで、どうしたんだい?ひとりなの?」

荒野の真ん中に、小さな子。

通りがかりの猿は、心配して声をかけた。

すると、その小さな子は緊張した面持ちで猿に一歩近づいた。

「あの…これ……」

おずおずと差し出された花束は、不揃いだ。
一生懸命作ったのだろう。

よく見ると、その小さな手は震えている。
よほど、勇気を出したに違いない。

「くれるの?ありが……!!?」

受け取ろうと伸びた猿の手が、不自然に止まる。

蔦の子はキョトンとして猿を見上げる。

次の瞬間、蔦が猿を威嚇した。

「うわぁああ!!!」

蔦の子の背に広がる蔦。

それを見た猿は、一目散に逃げていった。


おはな…受け取ってもらえなかったな……


猿の目は怯えていた。

その目を、蔦の子は見てしまった。


わたしじゃ、ないのにな……


だらりと垂れた手から、花束が滑り落ちる。

きちんと結べなかった花たちが、地面に散らばった。

蔦はまた、蔦の子に花を差し出す。

いつもなら、蔦の子はそれを受けとって嬉しそうに笑う。


しかし蔦の子は、

初めて、

蔦の差し出す花を拒絶した。


やめて。そんな気分じゃない…


でも、それを振り払う気にも、なれなかった。

花から顔を背け、蔦のクッションを背にして座り込む。

空を見上げた。

鳥が飛んでいた。

いつもと変わらない。

でも、いつもより少しだけ眩しい空だった。


わたし、くちばしも羽毛もあるのに…


胸の奥が、絞られたような。

そんな気がして、それがなんなのか確かめたくて、
空を見つめた。

鳥が近づく。

胸の奥が少し痛む。

さわり、と蔦が動く気配がした。

空が狭くなる。

鳥が見えなくなった。

胸の奥が静かになる。

安心、した。


to be continued...


この作品について

これは、こはる観測所の音楽寓話です。
『keth-nara』から派生した lutha vetha シリーズの第2話。
誰かにとっては茨になってしまう蔦に守られる、蔦の子の物語です。


このお話には続きがあります。

ただ、その続きはまだ映像になっていません。

でも、ここまでお付き合いいただいた方なら、きっと想像できるかもしれません。

この子は、何にも縛られていない。
ただ、守られているだけ。

これは自由でしょうか?


わたしは、何不自由ないことだけでは、自由とは言えないかもしれないと思っています。

自分を守るものに縛られることもある。
人なのか、自尊心なのか。

自由とは、なんなのでしょうね。


それを一歩離れて考えられることは、
私が自由だからなのかもしれません。


応募作品としての記事はここまでです。
この作品は、こちらの企画に参加しています。
お時間ありましたら、他の方の作品もご覧ください!


今回のお題は、ユル勇者あかねさんからいただきました✨️


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