#42 「キャリアを棒に振るな!」 〜転職エージェントからのメール〜
昨日の記事を投稿した直後に、note 公式アカウントからお知らせが届いた。
「ワーク "ライク" バランス」というテーマで、記事コンテストをやるとのこと。ライフ(life)ではなくライク(like)である点がポイントだ。
転職エージェント会社の doda による造語らしく、「やるべきこと(ワーク)」と「やりたいこと(ライク)」のバランスを取ることで、人生の満足度を上げることを目指しているという。
上の記事を読んで、疑問が生じた。なぜ「ワーク」がそもそも「やるべきこと」という前提なのか。
やりたくない仕事もあれば、やりたい仕事もあるだろう。ワークとライクがトレードオフの関係にあるような書き方に、違和感を覚えた。うがった見方をすれば、今までの「ワークライフバランス」という言葉がウケなくなったので、少し言葉をいじってみた、という具合だろうか。
とはいえ、ちょうど私が今週書いた「Will・Can・Need」に関する記事がこのコンテストの主旨に近いと思い、ちゃっかりエントリーした。
"転職エージェント" という言葉を聞くと、昔の記憶が呼び起こされる。3 年前、私が転職した時のことだ。今回は、私がキャリアの方向性を大きく変えた時に感じた「選択と決断の違い」について書いてみたい。
会社内のキャリア選択は、後戻りができる
ことキャリアという文脈で言うと、会社の中で直面する選択肢には、後から選び直せるものが多い。
例えば、社内でゼネラリストを目指すかスペシャリストを目指すかかどうか。職種を営業からマーケティングへ変えるかどうか。海外赴任のオファーを受けるかどうか。
どれも、やってみて「違う」と思えば、戻ることもできる。もちろん必ず希望が通るものではないが、収入の安定を保ちながら、会社に対して交渉できる余地は大いにある。これ自体は、大きなメリットだと思う。
一方でデメリットもある。自分の本当の Will(やりたいこと)は、会社からの Need(組織が必要としていること)と、必ずしも重ならない。
そして、純粋な自分の Will に従おうとする時、他の選択肢を断ち切る必要が出てくる。それは単なる「選択」ではなく「決断」になる。
手放すのは、これまでのキャリアから期待できる将来の収入かもしれないし、気心の知れた同僚と働ける職場環境かもしれない。あるいは、自分が人生を通じて形成してきた価値観の一部分かもしれない。
そして、何かを手放すことで、これからの自分が大切にするものが、驚くほどクリアになる。
転職エージェント・Mさんからの説得メール
私の人生で、そのような決断をしたタイミングが 2 回あった。転職と、独立だ。
今回は、3 年前に転職した時の話をしたい。当時、ほぼ同時期に 2 社から内定をもらっていた。教育ベンチャーと、日系のコンサル会社だ。その時のノートを読み返すと、六角形のチャートを使って両者のメリット・デメリットを比較していた。
やりがい、収入、将来的なキャリアの拡張性などの軸で、それぞれ 5 段階の点数をつけていた。無駄に整ったキレイな図で、自分の性格が出ていると感じる。

予想以上のクオリティだった。親切なコメントまで付いている。
各項目の点数を合計してみると、どちらもほとんど変わらなかった。最終的には数字ではなく、「素直にやりたいと思う仕事はどちらか」という Will の声に従って、教育ベンチャーを選んだ。
コンサル会社の選考では、コンサル業界特化型の転職エージェント・Mさんにお世話になっていた。職務経歴書の添削や面接練習など、約 2 ヶ月間サポートしてもらった人だ。私が「教育ベンチャーに進もうと思っている」と伝えたところ、しばらくして長文のメールが届いた。
言葉は丁寧だが、要約すると「これまでのキャリアを手放して教育ベンチャーに行くなどあり得ない。コンサル会社一択だ!」というものだった。
メールの詳細をここに書くことは憚られるため、気になる方は Podcast をお聴きください🎧️(Spotify / stand.fm / Apple Podcast)
「雇用能力」というパワーワード
今読み返しても、なかなか強烈なメールだ。
中でもひときわ目を引く言葉がある。「雇用能力(=会社に買ってもらえる価値)」というワードだ。Can(能力・スキル)とNeed(組織から求められること)のみで構成された言葉で、そこに Will の成分は一切ない。
一応、Mさんのメールの中には「心の中のいろいろな情」という表現があって、これが Will らしきものと読み取れなくもない。ただ、それはあくまで感情の揺らぎとして扱われており、論理的に考えれば答えはひとつ(=コンサル会社)だという文脈の中に置かれていた。本来の Will の意味とはかけ離れている。
Mさんの立場を思えば、コンサル会社への入社を勧めるのは当然だ。仮に私が内定を承諾していれば、数百万円の仲介料が入っていたはずだ。
ただ、その中でも数%くらいは本当に私のことを思って書いてくれた部分もあったと思う。なぜならMさんの価値観からすれば、教育ベンチャーへの転職は、積み上げたキャリアを無駄にする愚かな選択にしか見えなかっただろうから。
今、私がこのメールを読み返して思うのは、このような価値観(企業ブランド、収入、キャリアの連続性を重視する世界)と決別するために、自分は転職したということだ。当時もMさんのメールを読んで、教育ベンチャーへ進む決意がより固くなった。その意味で、彼には感謝している。
戻らないと決める
前職や前々職の人に再び会う機会があると、ありがたいことに「いつでも戻ってきてね」と言ってくださる方もいる。特に1社目の会社はいわゆる「カムバック制度」(= 一度辞めた社員が元の会社に復職しやすくする仕組み)を導入している。実際には、戻ろうと思えば戻れるのかもしれない。
ただ、私は戻らないと決めている。戻ったら、あれだけ悩んで出した決断の意味がなくなる。Will を優先するんじゃなかったのか、という自分からの問いに返す言葉がない。
したがって戻る可能性はゼロで、それは今後も変わらない。宣言として、ここに書いておく。
Will に蓋をしないために
キャリアを考える上で自分の Will をどこまで重視するかは、難しい問題だと思う。ただ、過去の私自身を含め、多くの人が、かなり手前のところで Will に蓋をしてしまっているように感じる。
世の中の全員が転職や独立をすべきだとはまったく思わない。それでも、仮にひとつの会社で働き続けるにしても、もっと Will のことを考えてもいいのではないか。単に何かを手放すことを恐れて、決断を先送りしていることは多い。
手放すことに伴う恐れや痛みこそが、決断しているサインだとも言える。痛ければいいわけでは当然ないので、ジャーナリングなどを通じて、自分の内面と冷静に向き合う習慣を持つことをお勧めしたい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
note の内容は、余談を交えながら Podcast でも話しています。興味を持ってくださった方は、ぜひ聴いてみてください🎧️
▼浩平のプロフィール
・コーチ 4年目(2026年5月現在)
・京都大学工学部 / 同大学院 → 技術職 9年 → 教育ベンチャー 3年 → 独立
・座右の書:Atomic Habits
・好きな習慣:早起き / 読書 / 内省 / 筋トレ
「理系院卒 → 大手終身雇用」というレールを離れ、ライフコーチとして独立しました。自分の意思(Will)でキャリアを選択するための、読書やジャーナリング習慣の重要性について発信しています。
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