君影草(きみかげそう)
ソファーに座ると華やか、かつ繊細な香りを感じた。
その源は妻が飾ったすずらんだった。
君影草、すずらんの別名。
花言葉は「幸せの再来」。
五月、皆が桜を忘れかけた頃に咲く花。
その香りに先日妻と愉しんだピノノワールを感じた。
『ピノノワール マールボロ』
ニュージーランド産ではあるが、日本人栽培醸造家、岡田氏が
長年の労苦の果てに始めたワイナリーから生まれたワイン。
いま、ソファーで香りと味わいを愉しみながら、
思わず「幸せの再来」に思いを巡らせていた。
定年が目前だった。
入社した頃、「幸せの再来」などを考えることなどなかった。
幸せ、それは、細やかながらも、絶えることなどないと思っていた。
それがいま、再来を願っている自分がいた。
すずらんの香りとピノノワールの味わいに呼び起こされるかのように。
ただ、一方で、すずらんとピノノワールを愉しめれば、
それだけで十分過ぎると実感していた。
