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【ひと区切りの、その先で】老後・相続・仕事が同時にのしかかってきた日

【ひと区切りの、その先で】老後・相続・仕事が同時にのしかかってきた日

 

うちの子どもは三人いる。
男、男、女。上から二十八、二十六、二十四。二歳ずつ離れていて、今のところ全員独身だ。

最近、家内から聞いた話がある。
私の還暦祝いをどうするか、という話題が、子どもたちの間で少し出たらしい。

二番目の子が、
「せっかくだから、ちょっといい店でやろう」
と提案したのだそうだ。自分が知っている店がある、と。

それに対して長男が、
「店でやるより、家でいい料理を取って、アットホームにやった方がいいんじゃないか」
と、いわば茶々を入れた。

結果として、その話は流れた。
流れた、というより、誰も引き取らなくなった、という感じらしい。

家内の話では、そのことを、
二番目の子は「兄が水を差した」
長男は「弟が勝手に進めようとした」
と、それぞれが別々に言っているという。

還暦の祝いなど、正直どうでもいい。
祝ってもらわなくても構わないし、そもそも特別なことをしたいとも思っていない。

けれど、
その「どうでもいいこと」で、すでに食い違いが生まれていると聞くと、気持ちが少し沈んだ。

母の体調のこと。
万一のときの相続のこと。
それだけでも十分に頭が重いのに、
自分の足元も、思っているほど安定していないのではないか。
そんな考えが、ふと頭をよぎった。

暗澹たる、という言葉が、少し大げさでなく感じられた。

そんな折に、もう一つ、別の話が舞い込んできた。
高校の同級生が経営している建設会社からだ。

大手ゼネコンの下請けがメインの会社で、
以前から付き合いはあった。

「ちょっと、手伝ってもらえないか」

話を聞くと、最近、元請から
「専任の安全担当を配置してほしい」
と言われているのだという。

本当は、会社の中に適任者がいればいい。
けれど、現場の社員は皆、現場仕事が中心で、
安全管理を専門にできる人間がいない。

四年前にも、似たような話があった。
そのときは、元請もそれほど強くは言ってこなかったし、
何より、私自身が決断できず、結局うやむやになった。

今回は事情が違うらしい。
安全担当を求めている元請が一社ではなく、複数ある。
しかも、かなりしつこく言ってきている。

「今回は、うやむやにできそうにない」
同級生は、そう言った。

経営者に対して
「安全担当を置け」
と言われている以上、誰でもいいわけではない。

「お前、大手で安全やってきただろ。
あの実績があれば、元請も文句は言わない。頼む」

そう言われると、気持ちは大きく揺れた。

今の仕事に、強い思い入れがあるわけではない。
嘱託として、安全課で事故や不安全事例を整理し、
淡々と書類をまとめる日々だ。

前回誘われたときとは、気持ちの状態がだいぶ違う。
「このままでいいのか」
という思いが、以前よりもはっきりしている。

それでも、
本当にそれでいいのか。
今、動くべきなのか。
それとも、ここで踏みとどまるべきなのか。

判断材料は、頭の中にいくつもあるのに、
決断に結びつかない。

老後のこと。
相続のこと。
家族のこと。
仕事のこと。

それぞれは別の問題のはずなのに、
気がつくと、一つの塊のようになって、胸の奥に沈んでいる。

昨日より、ほんの少しだけ、考え始めた。
けれど、進むべき方向は、まだ霧の中だ。

足元がぬかるんでいるのは分かっている。
それでも、立ち止まったままでいるわけにもいかない。

そんなことを考えながら、
今日もまた、私は会社へ向かっている。

 このブログは連載です。
 第一回は下記をご覧ください。
  https://note.com/koide_takuya/n/n9bb39f783053?app_launch=false

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