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立春|道端に落ちる、鮮やかな

本日は立春。暦の上では、もう春が始まっているらしい。

そう言われてみると、前回暦を意識した「大寒」の時よりも日差しが温かくなっているような気がする。

いや、ような気がするではなく、なっている。確実に。

底が見えないような寒さに震えていたあの日よりも、散歩に出るのが少しだけ億劫ではなくなってきているのが、なによりの証拠だ。

あの時期は確か、いつになったら温かくなるのかと、おいてきぼりの子どものように、途方に暮れた心地だった。

それが今では、もとない記憶を頼りにでも、たしかに温かくなっていると断言できる。日本の四季の移り変わりはすごいものだ。

私は基本的に、ほとんど外に出ないような引きこもり生活をしているのだが、今年に入ってから健康のため、毎日15~30分程度の散歩を習慣づけている。

特に時間は決めておらず、少しでも温かい時間帯を狙って、窓から差し込む日差しが温かいと感じたタイミングで今だ!と慌てて外に飛び出している。

その時間帯が、数週間前までは非常にシビアだった。タイミングを逃すとすぐに日が傾いてしまうから、気づいた時に急いで出かけなければならなかった。

それがこの数日、少しゆっくりお茶を飲み終えてから腰を上げても大丈夫になっている。

最近は、散歩で近所を眺めながら歩いていると、椿の花弁が落ちている道によくさしかかる。

「椿は花弁ごとバラバラに散るのではなく、ひとつの花ごとぽとりと落ちるから、『散る』ではなく『落ちる』と言うのだ」

というどこかの書物で読んだ、美しい日本語が忘れられない。その言葉は私の心の中に、椿の鮮やかな赤のような鮮烈な色を残した。

確かに道端に無数の花弁が落ちているけれど、見上げてみると椿はどれも花単位で『落ちて』いる。

私は特に、近所の一角にある、椿の花弁が落ちている側溝の光景が好きだ。

前日雨が降った訳でもないのに、水が細々と流れている。家からトタンでできた道が渡っていると、風情があってなお良い。

椿の花弁がたくさん落ちている場所は、そこの地層の性質ゆえか、花弁から滲んでいるのか、水がほんのり赤く色づいている。まるで絵の具を数滴水に落としたような光景だ。

冬の日本は基本的に色彩に乏しいが、椿の赤は鮮烈である。寒くてつい俯きがちになる日々の中でも、はっと視線を釘付けにする色をしている。

これから徐々に日が差す時間は長くなり、花咲き誇る春が始まる。そんな色とりどりの季節にも、私は自分の好きな色を迷わず見つけられるだろうか。

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小石ゆうべ 犬のおやつと健やかな生活の足しにさせていただきます。