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初期設定の愛 3.接近遭遇

翌日、清掃時間が終了。
1階の下駄箱周りが我が班のテリトリー。
なぜか掃除は嫌いではない。
 
教室は4階だ。いつものように、2段飛ばしで駆け上がり、マイ雑巾をモミモミしながら教室へ戻る。これがルーティーン。
 
後方ドアの前、教室側にK、廊下側に佐伯さん、二人でひそひそ話しているようだ。
 
ここは男らしく堂々と、教室の方向へ足音立てずに歩をすすめる。
あっ、Kが先に私に気づいた。会話が止まる。
女神が振り向く。一瞬、俯いて、照れたように見えた。
すぐに顔を上げて、顔だけこちらを向けて、笑顔で見つめてきた。
 
全集中、女神も僕も。研ぎ澄まされた息づかい、全神経でお互いの存在を鋭敏に感じている。目線は合わせない。Kもいるんだ。ここは、クールにスルーだ。3m、2m、1m。徐々にその距離がつまる。自分の意識は100%彼女に向いている。もうKは見えない。
 
この存在は、この存在は全身全霊で自分にその意識を向けている。真剣勝負、一点の曇りもなく、まっすぐだ。間違いない。愛されている。絶対的な確信がある。愛の存在、純粋な愛の存在。
 
女神の脇を通過し、ポーカーフェイスで教室へ。
 
その時Kがすばやく、左手で通せんぼした。何か言いたげだ
 
いやいや、そういう訳にはいかない。
こちらの準備ができていない。雑巾もってるんだぞ。
初会話で、雑巾はないわ。せめて英語の教科書だ。
Kは、まるで状況を理解していない。少し腹がたった。
 
腰をかがめて一気に教室へ入る。動揺を隠し、何事も無かったようにふるまった。自分の席はすぐそこだ。
 
女神が微笑んでいる。肩越しに、なぜかそれがわかる。自分を見て微笑んでいる。あ゛~、愛おしい。とにかく、かわいいのだ。
 
一瞬だが、始めての至近距離の接近遭遇、その距離30cm。
息を止めたのが悔やまれる。
 
とにかく、こちらとしてはうまくやれた。
平静を装うことに成功した。まだ減点はないだろう。
 
このときはまだ、すまし顔ですぐ真横を通れたわけだ
 
中学3年間でこの距離が最短の接近遭遇記録となることを、この時はまだ知らない。

4.軟禁事件へつづく


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