初期設定の愛 4.軟禁事件
”やはりそうかな。” ”いやでも、でもそんなはずは・・・”
頭の中がぐわんぐわんする。
結局、忘れられない。
どうしても考えてしまうのだ。
別館4階の教室の昼休み、あまり人はいない。
女神と同じ部活のMさん、Kちゃん、他何人か。総勢5-6名か。
正確には数えていない。
まわりを囲まれた。生まれて初めての経験だ。なんだかちょっとうれしくもある。これが中学の洗礼か、通過儀礼なのか・・・。
何が始まるのか?
Kちゃんに、最前列の真ん中の席にすわるよう指示された。ぐるりと逃げ道を塞がれている。こんなに人数必要か?(心の声)
穏便に、冷静に。心の中でそう願った。
「昼休み。ちょっと大事な話あるから、教室にいて!絶対だよ、逃げたら絶対に許さない!」
Kちゃんにそう事前通告されていた。こちらの都合は関係ないらしい。
しょうがないな、今日は”テニスボール野球”できないのか~。
そのころ”テニスボール野球”にはまっていたのだ。ペコペコの軟式テニスボールで野球をするのだ、野球用具は使わない、素手だけを使う。ベースは石で描く。
「先に行ってるよー。」 隣のクラスの幼馴染のM君が、迎えに来たのだ。何か察したのだろう。すぐに去っていった。M君は、にやにやしていた。
小学校から一緒のM美さん、黒板消しで黒板を丁寧に拭いている。
どうしても気になったのだろうか。
M美さんは小学校時代は学級委員の常連だった。
クールビューティータイプのショートカット美人だ。
ちなみに私のタイプではなかった。
そんなM美さん、そこにあった指し棒で、黒板けしをパンパンしながら、
「いいから、●●ちゃんと付き合いなさいよーっ。」べランめー口調だ。
意を決っしたように、突然口火を切った。
“こんなでかい声だせるんだ、M美さん。柄も悪いし。" 正直驚いた。かなり頑張ってる。
M美さんが黒板拭いてたのは、この優柔不断男子を恐怖に陥れる準備だったのだ。IQが高い。そう思った。
チョークの粉が七色に舞う。ちょっとむせる。
「ね~え~っ、はっきりしなさいよ~。」Kちゃんが、負けじと、たたみかける。
こちらはいつもの雰囲気だ、免役がある。大丈夫。この娘は根が優しいのだ。
確かに、何度か、Kちゃんから、「ねー、どうなの、●●ちゃんのこと、どう思うの?」と聞かれていた。
これには言い分がある。
そもそもKちゃんに、なんで俺の思いを伝えなくてはならないんだ、そもそも、自分でも何が何だかわからんのだ、心の整理ができないのだ。
だから、僕はただ、黙っていた。
そのことが優柔不断に映り、業を煮やしたのだろう。容易に想像がついた。KがM美さんに相談し、IQ高いM美さんが青写真を描いた。まあ、そんなところだろう。
残りのメンバーは、背後や側面を固めてる。あまり興味なさそうだ。やる気が感じられない。まあ、お付き合いだろう。とはいえ、鉄壁な包囲網だ。ほんとに逃げ場所がない。
“●●ちゃん”とは佐伯さんの愛称だ。
入学まもないが、すっかり親しくなったようだ。
てっきり、こうゆうことは、本人から何処かに呼び出されて、正式に何か、告白的なことがあるのかと勝手に想像していたが、そうではないらしい。このグループ恫喝、軽暴行(黒板けしパンパン)が、代理人による交際の申し込みのようだ。
これが人生初の恋愛のスタートであるとすると、初恋ということになりそうだ。そんなことを、うっすら考えていたと思う。
これはこれでいいシステムかもしれない。そう思い始めていた。恫喝ならしぶしぶしを装いながらOKしやすいのだ。
ちなみに、このM美さんと会話したのは、この時が最初で最後。
M美さんとはその後に進学した高校も同じ、その時代も含めて、この時にしか会話していない。会話というか恫喝と軽暴力であるが。
本題に関係ないが、この日、自分はこんなにも”猫背”だったんだと気がついた。
もし断れば、地獄の3年間、M美さん、Kちゃんは敵にまわせない。本能でわかってる。30分くらいたって降参することにした。
すべて受け入れようと覚悟した。
“わかったよ、いいけどまあ・・・、それで。” やっとふり絞った言葉。
女神はいい友人を持っている。皮肉でなくそう思った。
すごい子だ、かなわない。やっぱり、愛おしく感じる。
女子達は満足そうに去った。
Kちゃんだけは少し不満気に見えた。
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