初期設定の愛 2.女神の教室
とにかく、大混乱。
そんな、真っただ中だ。
クラスメイト女子Kが、ゆっくり振り向いた。彼女の席は斜め右前だ。
少し不機嫌そうだ。
「ねー、コージ君、女の子と付き合う気あんの?」
席も近く、時々話している。もうかなり打ち解けた関係だ。
あ゛ーーっ、悪いが、今俺はそれどころではない。
得体の知れない何かと対峙中なのだ。
空気の読めないKめ。頼む、今は話しかけないでくれ・・・。(心の声)
あの娘のことばかり考えてしまう。一体何者なんだ。
実は、あの出来事以降、佐伯さんと目が合うと、やっぱり何か感じるのだ。何だろう、この感じ。他の女子と目が合うことはほとんどない。目が合っても、すぐそらされる。自分もそらす。そりゃもう反射的反応ってやつです。
佐伯さんだけは違う。彼女はじっと、見つめ続けてくる。自分も見つめ続ける。
それがまた心地いいのだ。はっきり言ってしまおう。
その時、僕はとても幸せなのだ。自分の中の何かがとろけ始める。
そうだ、いったん忘れよう。我ながら良いアイデアだ。
Kが、私の目の前で仁王立ち。おっと、いつの間に。
「だっ、誰と? 誰が? えっ? あっ? 相手が誰かによるよ。そりゃぁ!」 急ごしらえの返答でごまかした。まずいっ。ちょっと怒ってるぞ。
そもそも12歳、まだまだ恋愛になど興味のない年齢だ。恋などしたことがない。
勘弁してくれ、面倒くさい・・・。
だが、Kも引かない。
「まあ、そうだよねー。ちょっと待ってて・・!」すぐに小走りで隣のクラスへ。案外と素直でいい娘のようだ。近くで見たら、垂れ目だし、くまのぷーさんみたいな顔してる。
「イニシャルなら言ってもいいって。♡」
隣のクラスで何やら打ち合わせしてきたようだ。
”もー、ばればれじゃないか。隣のクラスの女子だろう。イニシャルにする意味もないだろーが。” (心の叫び)
たまたまトイレで会った隣のクラスの友人Tに小声で聞いてみた。彼とは同じ小学校だった。
「苗字がSなら、佐伯って娘だよ。他にはSはいない。」
”えっ” そんなはずはない。
「あ゛~。違うんだ。悪いが、その娘じゃないんだよ。他にいるはずだから、探してきてよ。たのむ。すぐに確認頼む。」天にも祈る想いだ。
T君はすぐ戻り、「名簿確認したけど、やっぱり他にいないよ。自分で探しなよ。」と教室へ手招きした。ごもっともだ。
その教室へ入りかけたその時、女神の後ろ姿が視界にはいる。休み時間なのに、一人だけ姿勢良く椅子に座って何か読んでるようだ。真面目そうだ。

「あ゛ッ、やっぱいいや。」消えそうなかすかな声で、そういいながら、後ずさり。
女神の教室へは入らなかった。いや、入れなかった。
“ありがとうT君。もーいいんだ。“ 心の中でつぶやいた。
怪訝そうなT君。
まさか、ソレだけはないはずだ。何かの間違いだ。
そう言い聞かせた。
これは困ったな。そうだ、いったん忘れよう。
3.接近遭遇へつづく
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