最古の共通祖先「LUCA」が語る、進化の始まり
地球上の全生物における共通先祖のことを「LUCA (Last Universal Common Ancestor)」といいます。過去にも幾度かその起源について触れてきましたが、今回はより詳しく掘り下げてみます。
2つ目の記事について、LUCAについての定説よりも古く、かつ高度な生命機能を持ち合わせていたことが明らかになっています:
42億年前に生息していた微生物
約2600種のタンパク質をコードするかなり大きなゲノムを持つ
水素ガスとCO₂(二酸化炭素)を食料とする
ウイルスや紫外線など外的要因と戦う原始的な免疫システムCRISPR具備
遺伝子編集技術CRISPRに興味のある方は、過去記事もご参照ください。
LUCAの位置づけ
より直感的にLUCAを表すと、生物の系統図の幹に当たります。代表的な図は以下のWikipediaページで見ることができます:

余談ですが、生物・人間の進化と起源を追求していたダーウィンも、1837年頃に近い概念の図を描いていたことで知られています。

LUCAについての誤解と真実
重要なのは、LUCAは「最初の生命体」ではないという点です。CRISPR機構を備えていたという事実は、もっと古い原始生命体が存在していた可能性を示唆しています。
つまり、LUCAにつながる系統以外に、異なる生化学機構を持つ生命が存在し、様々な競争や環境変化の中で、最終的にLUCAの系統だけが子孫を残すことができたと考える方が自然でしょう。
2024年末の最新研究:アミノ酸導入の歴史的順序
2024年末に発表された興味深い論文が、この考えをさらに裏付けています。
Order of amino acid recruitment into the genetic code resolved by last universal common ancestor’s protein domains
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2410311121
研究の背景と目的
現代の生命は20種類のアミノ酸を使用してタンパク質を構築していますが、どのアミノ酸が「早く」あるいは「遅く」遺伝暗号に取り込まれたのかは長い間不明でした。本研究では、LUCAに由来すると考えられる古代タンパク質ドメインを分析し、アミノ酸の出現頻度を比較することで、遺伝暗号への組み込み順序を新たに推定しました。
主な発見
小さなアミノ酸ほど早期に採用された:グリシンやアラニンといった分子量の小さなアミノ酸が、初期のタンパク質に多く含まれていました。
硫黄や金属関連アミノ酸も予想外に早かった:システイン、メチオニン、ヒスチジンは従来「後期に加わった」と考えられていましたが、初期から利用されていた痕跡が見つかりました。これは古代細胞が金属触媒や硫黄化合物を活用していたことを示唆します。
グルタミンは最後期の導入:グルタミンは遺伝暗号に組み込まれるのが遅く、19番目か20番目だったと推定されます。
「pre-LUCA」段階の特徴:LUCAより前のごく初期のタンパク質断片では、芳香族アミノ酸(トリプトファンやチロシンなど)が多く、グルタミン酸やバリンは少ない傾向がありました。これはさらに古い時代に別の遺伝暗号システムが存在した可能性を示しています。
研究の意義
タンパク質配列に残された「生命の記録」を活用し、これまでの実験や理論とは異なる視点からアミノ酸の進化史を解明しました。
初期生命の環境(硫黄に富んだ世界や金属触媒の重要性)を理解する手がかりとなり、火星探査など地球外生命探索にも新たな視点を提供します。
このように、古代タンパク質データを用いて「アミノ酸の導入順序」をより精緻に再構築したことが本研究の大きな成果です。これによって、地球最古の生命の解明だけでなく、地球外生命探索への期待も高まります。
例えば、2023年に芳香族に属する有機物が火星で発見されました。
また、最近別の惑星で生命の手掛かりも発見されています。(今回の研究成果とは異なる有機物)
生命の起源への探求は徐々に核心に近づいています。今年もさらなる驚きの発見が期待できそうです☺
