見出し画像

量子コンピュータ小史#1:量子とコンピュータ、邂逅前の歴史

量子コンピュータが脚光を浴びるようになったのは比較的最近のことですが、その根底にある物理学的アイデアは実に奥深く、長い歴史の積み重ねが存在します。

以前に、量子力学100周年のトピックを紹介しました。

今回から複数にわたって、量子コンピュータの発想がどこから生まれ、どんな道のりを歩んできたのかをたどってみたいと思います。まず第1回では、量子力学と計算理論が交わる以前の背景を振り返りながら、量子技術の萌芽が見え始めるまでの流れをひも解いていきます。

もともと「コンピュータ」という言葉は、人間が手作業で行う計算作業(計算手)を指していました。しかしアラン・チューリングをはじめとする数学者たちの理論研究を経て、機械式や電子式の汎用計算装置が次々と登場。第二次世界大戦後には真空管からトランジスタへと移行し、やがてシリコン半導体を使った集積回路が本格的に発展していきます。このあたりの詳細は末尾にある参考リソースをお勧めします。

このとき半導体の動作原理には、バンド理論や電子の振る舞いなど量子力学の法則が深く関わっています。トランジスタ内部の電子の移動は古典物理学だけでは正確に説明できず、量子力学ならではの考え方が欠かせません。つまり、現在の古典コンピュータを支える半導体技術そのものも、量子の世界から大きな恩恵を受けてきたといえます。この辺りの流れは、下記サイトに詳しくのってますので、余力のある方はぜひ。

半導体の微細化によってムーアの法則に代表される急激な性能向上が実現し、演算速度もメモリ容量も飛躍的に拡大してきました。しかし、ナノスケール( $${10^{-9}}$$ )の領域に達するほど微細化を進めると、今度はトランジスタ自体が量子効果によるリーク電流や配線の干渉など、新たな課題と直面し始めます。こうした“物理的な限界”がちらつく中で、研究者たちは「従来のコンピュータとは異なる発想の計算装置」を真剣に模索するようになりました。

同じ頃、20世紀前半から進んできた量子力学の研究は電子やフォトンといった微小な粒子が示す「重ね合わせ」や「もつれ」「トンネル効果」など、古典論では説明困難な現象の解明を進めていました。このあたりの歴史を過去に書いたので、興味のある方はどうぞ。

この量子力学特有の性質を、もし計算に利用できるとしたらどうなるか――こうした壮大なアイデアは当初はとても荒唐無稽に思われましたが、徐々に「量子状態を情報処理のリソースとして使う」発想が形になりはじめます。もともと半導体の分野でも量子力学の知見は不可欠でしたが、それをさらに先鋭化させた形として、量子コンピュータというコンセプトが浮上してきます。

次回は、こうしたアイデアを具体的な理論にまで高めた先駆者たちの功績に目を向け、量子アルゴリズムの誕生や量子コンピュータを汎用的に扱うためのフレームワークがどのように形成されたのかを追いかけていきます。

<参考リソース>


いいなと思ったら応援しよう!