敵認定!【続★まともな人からいなくなる#26】
本社から異動してきた事務員二人の不祥事の件で、人事部長が火消しに来た。
私が責任の所在を尋ねても人事部長は最後まで答えず、施設長と秋田主任に責任があると言ってその場を去った。
「なんなのアイツ!豚まんみたいな顔してふてぶてしいわね!堀江ママがいたらあんなの今ごろ焼き豚にして吊るされてるわよ!!」
管理栄養士の大川みきお 通称:ミキティは人事部長のことを豚まんと言って怒っていた。
まわりで話を聞いていた職員も、みんな人事部長の話を聞いて怒っていた。
「責任なすりつけてるだけでしょ!自分に都合悪いこと言われたら感情的って決めつけて!考え方が気持ち悪いのよ!」
ミキティは部長の言いぐさに本気でキレていた。
私は今まで、お口がお悪いミキティと介護福祉士の堀江さんが言いたいことを言ってくれるのをいいことに、ずっと黙っていられた。
そんなつもりは無かったけど、今回初めて当事者になってしまった私は、普段言い慣れないことをしたので死にそうになっていた。
頑張って人事部長に言いたいことを言ったけど、結局、答えを得られないまま逃げられてしまった。
「何よアイツ!話そらしてばっかりで!!あんな話で納得できるわけないわよ!」
そうだ。ミキティならもっと、人事部長から答えを引き出せたかもしれない。私を責める代わりに、人事部長に怒ってくれてるんだと思った。
私は自分の情けなさにうんざりした。
さっきの会話、ちゃんと録音できてたかなとスマホを確認すると、秋田主任からメールが来ていた。
『労働局に行ったら、社長に電話してもらえることになったよ』
施設長は、人事部長より上に話を通すのは難しいと言っていた。これは何かが変わるかもしれない。
でも、真っ青な顔のまま屍みたいになっている施設長に、私はそれを言えなかった。
全然こんなことしたくなかったのに、結局大ごとになってしまったと思った。
「部長から敵認定されるのは僕と秋田さんだけで良かったんだよ。被害者のままでいてくれたらよかったのに、なんであんなこと言ったの」
施設長は悲しい顔でそう言って、真っ青なまま事務所に戻っていった。
秋田主任は一人で戦ってるのに。施設長は自分が責任を被って片づけようとしてるんだなと思った。
「アンタ!また豚まんが話し合いに来るまでに労働局行くわよ!私も河村さんも一緒に行くから!」
他人のことだと本気でキレるくせに、新しい会社では目立ちたくなくて大好きなサンリオまで封印しているミキティを、私は巻き込みたくなかった。
「秋田主任が明日出勤するから、相談してからにする」
私はそう言って、怒るミキティをなだめて医務室に戻った。
医務室に戻ると、春ちゃんが座っていたデスクは空っぽだった。
荷物を片づけに来たのかもしれないなと思った。
春ちゃんはいなくなったけど、施設にはとてつもないダメージが残った。
私は、ため息しか出なかった。
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