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温暖化という名の綱引き 【ヴィーガンになる前に読む最後の肉食短編集】

ジュネーブの国連環境会議場で、アメリカ代表のマイケル・グリーンは勝利の笑みを浮かべていた。

「我々G7諸国は、2035年までに国内炭素排出量実質ゼロという目標を達成しました」

大型スクリーンには各国の炭素排出量グラフが表示され、先進国の線がほぼゼロまで下がっている。会場からは拍手が沸き起こった。

「産業革命以来、我々先進国は地球温暖化に最も責任があると認識し、10年間で総額20兆ドルを費やし、国民にも多大な犠牲を強いました。しかし我々は約束を守りました」

彼は続けた。「今こそ、新興国の皆さんにも同様の取り組みを加速していただきたい。我々は技術と資金を提供する用意があります」

講演の後、インド代表のアミット・パテルは冷ややかな表情でG7の環境大臣たちと向き合っていた。

「何を提供するというのですか?」と彼は問いかけた。「あなた方がようやく達成した脱炭素は、我々にとってはこれからの産業発展を諦めることを意味します」

「しかし、地球温暖化は待ってくれない」とグリーンは言った。「我々は責任を果たした。あなた方の番だ」

「責任?」パテルは皮肉な笑みを浮かべた。「あなた方は200年かけて豊かになり、今さら梯子を外そうというのですか」


3年後、インド・ニューデリー。世界環境サミットの席上で、インド首相のラジブ・チャンドラは演説していた。

「我が国は独自の『グリーン・デベロップメント・パス』を発表します。2070年までに段階的に炭素排出量を削減しますが、当面は石炭発電所の新設も継続します」

先進国の代表団から失望のため息が漏れる。

「インドには14億の人口がいます。彼らは電気を必要とし、冷蔵庫を必要とし、エアコンを必要としています。西側諸国が享受してきた生活水準を、なぜ我々は諦めなければならないのでしょうか」

会議の後、アメリカ大使館の一室で、グリーンは側近たちと対策を協議していた。

「インドが協力しなければ、我々の努力は水の泡だ」と彼は言った。「彼らの石炭火力だけで、我々が削減した分を相殺してしまう」

「経済制裁はどうでしょう」と若い補佐官が提案した。

「それは最悪の選択肢だ」とグリーンは言った。「彼らを中国の陣営に追いやるだけだ」

「では、どうすれば?」

グリーンは窓の外を見た。ニューデリーの空は茶色く濁っていた。

「彼らに選択肢を与えるんだ。より多くの資金を、より少ない条件で」


さらに5年後、ワシントンDC。ホワイトハウスの会議室では緊急の閣僚会議が開かれていた。

「世界の平均気温は産業革命前と比べて既に1.8度上昇した」と気象局長官が報告した。「極地の氷床の融解は予想を上回るペースで進んでいる」

「インドや中国はどうなっている?」と大統領が尋ねた。

「彼らの排出量は増加の一途です」とグリーンは答えた。「インドは過去5年間で石炭火力発電所を30%増設しました」

「我々の提案は?」

「1兆ドルの気候基金を提案しましたが、彼らは5兆ドルを要求しています。さらに、我々の持つグリーン技術の特許権放棄も」

大統領は顔をしかめた。「それは受け入れられない」

「では、我々に選択肢はありません」とグリーンは言った。「世界は2度上昇を超えるでしょう」


10年後、ニューヨーク。かつてマンハッタンの高級住宅地だったエリアの半分は海水で浸水していた。仮設の堤防が急ごしらえされ、国家警備隊が警戒に当たっている。

アメリカ大統領官邸はキャンプ・デーヴィッドに移転し、グリーンは今や気候危機対策特別顧問となっていた。彼のオフィスには、世界の気象災害を示す巨大スクリーンが設置されていた。

「予想通りだ」と彼は訪問中のパテルに言った。パテルは今やインドの環境大臣だった。「我々は警告した」

「我々も警告しました」とパテルは冷静に答えた。「貧困から抜け出せなければ、環境などより重要な問題がたくさんある、と」

グリーンの机上には、最新の報告書が開かれていた。「世界炭素排出量分析」というタイトルの下に、悲観的な数字が並んでいる。

「我々先進国は排出をゼロにした」とグリーンは言った。「しかし地球にとっては何の意味もなかった」

「あなた方は生産をゼロにしたのではなく、移転しただけです」とパテルは言った。「あなた方の消費財の多くは今や我が国で作られている。その炭素排出は我々の勘定に入るのです」

窓の外では、新たなハリケーンの接近を警告するサイレンが鳴り響いていた。

「我々は答えを見つけられなかった」とグリーンは認めた。「我々はそれぞれの正義を主張し、地球は沈んでいく」

「一つだけ確かなことがあります」とパテルは言った。「地球は国境を知らない。それが我々の最大の教訓です」

彼らの後ろのテレビには、水没したバングラデシュの村々から避難する人々の姿が映し出されていた。彼らはインドへの入国を求めていた。

「あなた方は彼らを受け入れるのか?」とグリーンは尋ねた。

「あなた方は?」とパテルは問い返した。

二人は無言で画面を見つめた。海面上昇は、彼らの議論が解決される前に、多くの答えを奪い去っていた。

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