「毎週ショートショートnote」を企画・運営たらはかに(田原にか)さんに聞く創作の沼
気になるnoteクリエイターに、國學院大學メディアnote編集部が「お話を聞いてみた企画」。今回は、たらはかに(田原にか)さんです。
note上で「毎週ショートショートnote」を企画・運営している方としても知られており、ご自身でもnoteや小説投稿サイトなどに精力的に作品を投稿し、数々の受賞もされています。
「文学フリマ39」では、同好の士と『ウタ・カタ vol.1 浮く』というホラー・アンソロジーを制作し販売、たちまち完売したとか。しかしその実像は謎めいています。そんなたらはかに(田原にか)さんにお話を伺いました。
——國學院大學メディアnote編集部で取材させていただいたnoteクリエイターさんが何人も「たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに投稿しています」とおっしゃっていたので、お話を聞けるのを楽しみにしていました。お題を出して作品を募るだけじゃなく、ご自身も精力的に作品を書いていらっしゃいます。いつから書き始めたんですか?
2019年でしょうか。本屋で『54字の物語』という本を見て、「54字だったら書けるかな」と思って書き始めました。もともと書くことには興味があって、学生の頃には脚本を書いていたのですが「自分には小説は無理かな」と思っていました。でも、「54字だったら書けるかも? そして運良く本に掲載されたらいいな」と思ったんです。
そうしたら、それまで“読むだけツール”だったTwitter(現X)で、「54字の物語」が公募されているのを見つけたんです。それで投稿し始めたのが2019年1月でした。
——それ以降はTwitterで精力的に「54字の物語」を投稿していましたよね。
そうですね。当時は「1日1作品投稿する」ことを目標にしていました。すると、同じように毎日投稿している人がいたんですね。2人ぐらいだったかな。「あ、この人、今日も出してる」みたいに意識するようになって、暗黙の競争のようになって……(笑)。そのうち、なんとなく交流が始まって、SNSの中でグループが出来上がっていくことも楽しくて、書き続けていました。
——noteは2019年5月から利用されているようですね。
noteを使うようになったのは、作家の田丸雅智さんが主宰されている400字のショートショートが投稿できるサイト「ショートショートガーデン」にハマったからです。54字の次は400字の物語を書くのがおもしろくなり、投稿しているとここでもコメントし合う仲間ができました。このときはオフラインイベントがあって、実際に10人ぐらいの方と顔を合わせる機会がありました。
SNSで出会った人と会うのって、怖いイメージがあったんですけど、実際会ってみたらいい人が多くて。小説を書くことが好きな人たちとつながれたっていうのは大きかったです。「ショートショートガーデン」では賞をいただきましたが、人と出会えたことも楽しかったですね。知り合った仲間と電子書籍も作りました。全14巻の「ベリショーズ」という短編集です。

——それまで投稿する立場だったのに、noteで自らお題を出して作品を募る「毎週ショートショートnote」を始めるようになったきっかけは?
これは、自分が作品を選ぶ立場になったとか、そういう発想じゃないんですよ、じつは。
「54字の物語」のときは「1日に1本書く」というルールを自分で作っていました。書いていないと、やはり筆が衰えてしまうんです。自分のために毎週お題を用意してnoteに投稿しようと思ったんですが、そのときに「もしよかったらみなさんも投稿してください」と呼びかけて始まったのが「毎週ショートショートnote」なんですよ。
——動機は自分が書き続けるためだったんですね。初回はどのくらいの人が応募してきましたか?
第1回目は10〜20人ぐらいの方が参加してくれたと思います。Twitterでも告知したのでそのつながりの方もいたし、noteの方でも「なんかおもしろそう」と参加してくれた方もいました。現在は平均すると各回30〜50人ぐらいの方が応募してくれています。
——「毎週ショートショートnote」では「毎ショセレクション」として、投稿作品を紹介されていますよね。ご自身が「応募する側」から「選出する側」になったことで意識の変化は?
いや、私は「選ぶ人」になったつもりは全然なくて「ここで文章の練習をして、本番の公募をがんばろうぜ、みんな!」みたいな、私も含めた文章修業の場を開いただけっていう感じです。私自身、そのお題で作品を書くわけですし。賞品もないし、選ばれたからってなにもないんですよ。みなさんでお題をおもしろがって、一緒に切磋琢磨して修業する場として機能している感じです。
——修業の場! やはり、ご自身の刺激にもなりますか?
なりますね! 自分ではまったく思いつかなかった視点で書かれた作品が来ると「すごい! 最高だ、そしてくやしい〜!」って気持ちになりますよ。初めて投稿してくれた方が素晴らしい作品を送ってくれたりしたときは「うわ〜、こんな話、よく思いつくな〜。この人すごい!」と感動します。あと、長年にわたり応募してくれる方が、メキメキ腕を上げていく様子が間近で感じられることもあり「負けちゃいられない!」と刺激を受けます。
——まさに研鑽の場という感じですね。そういえば、noteでは今度長編に挑戦すると書かれていましたね。なぜ長編を書くことにしたのですか?
ええと、前提として、私はショートショートが大好きなんですね。でも、聞いた話ですが、ショートショートは書籍化が難しいらしいんです。長編だと、たとえばnoteが主宰している「創作大賞」では、メディア賞を受賞すれば出版社から本が出ます。
ショートショートだと、有名な「坊っちゃん文学賞」がありますが、大賞を受賞しても雑誌に掲載されるだけで書籍にはならない。私は本気でショートショートを書いて、本を出したいという気持ちがありますが、それはかなり狭き門なんです。いつか商業作家として本を出したいという思いがあるので、だったらまず長編を書いてみるべきかなと思って、チャレンジし始めたんです。
——noteに経緯を書かれていますよね。
【2か月で長編を仕上げるルーティーンを準備したい消しゴム型甲殻類】
として、メンバーシップ(有料)記事として書いています。4000字までは、この数年書いてきてなんとなく書き方が分かってきたんですが、何万字となると書いたことがなかったんです。
この夏、noteの「創作大賞」に初めて挑戦して長編を書いたんですが、もうもう、何もする暇もないほど書くだけのストイックな生活になってしまって……。そこで、普段通りの生活をしながら、2か月で1篇の長編を書くことができるか? という挑戦として、ガッツリスケジュールを組んで、できるかどうか挑戦している、という最中です。1つ目指している公募があるのでそこに向けて今、コツコツ書いています。
——どのようにスケジュール管理をしているんですか?
ガントチャートってご存知でしょうか。ビジネスの場で、プロジェクトの進捗を管理するために作る工程表のようなもの。それを使って、長編を書くための1日や週のタスクを管理してその通りに書き進めていくというやり方を試しています。
——文章を書いているときって、ノッてくるとどんどん書き進めちゃうという、ゾーンに入る感じがありますが、そういう書き方はしないんですね。
私はあんまりそういうことはないですね。1日にここまでと決めたところまでを書いていきますが、なんていうか、私自身は構造的なことがすごく気になるので「ここの部分のここのピースまでちゃんと終わったかな」みたいなところを気にして書いていますね。
——たらはかにさんは、プロの作家を目指しているんですね。
はい、もちろんです。でも、小説家って小説を書くだけでは食っていけないって言われていて、だからこそ、目指しやすいかなって思っていて。
——どういう意味でしょうか??
専業の小説家になるのではなくて、私個人のいろいろな側面の1つに小説家という顔があることを目指すというか。
——会社員でありながら小説を書いている作家さんもおられますが、そういう感じですか?
はい。そういう形になれたらいいなあと思っています。
——ズバリ、なぜ、「書く」のでしょうか?
うーーーん、そうですね……。人って、「創る」人と、「創られたものを享受する」人がいると思うんです。私はやっぱり、創る側でいたい。そして創りたいものが文章なんですよね。
自分のスキルを使って、人を楽しませたいということが一番の書く動機ですかね……。だから作品を出して、読んでもらえて、コメントいただいたりすると泣いて喜ぶし、下手したら「一生ついていきます!」って思うかもしれない(笑)。
——文学フリマ(注1)にも出店していますよね。
はい。個人でも3〜4回出店していますが、今回は石原三日月さん、霜月透子さんという作家さん2人と私とでホラーのアンソロジー『ウタ・カタ 浮くvol.1』を作って、販売しました。うれしいことに思っていた以上の方が来てくださって、あっという間に完売。3人で小躍りしながら帰りましたね!
次回もまた『ウタ・カタvol.2』で出店する予定です。次回も豪華執筆陣が予定されており、プロの作家さんや作品がドラマ化された作家さん、受賞作が何作もあるnoteのクリエイターの方が作品を寄稿してくださいます。ぜひ、手にとってほしいですね。

——文学フリマのブースでは、“生たらはかに”さんが見られるんですよね?
はい。普通に「私がたらはかにです」と言ってその場におりますよ!
——おお、次回の文学フリマが楽しみになってきました。最後に、たらはかにさんって、ナニモノですか?
作品を読んでいただいて、ナニモノなのか想像していただければうれしいです。ちなみに個人情報はノーコメントです(笑)!
ありがとうございました。まずは長編の完成、そして5月の文学フリマでの再度のご盛況を祈念しております。ありがとうございました。
注)文学フリマ……文学作品の展示即売会。出店者が「自分が(文学)と信じるもの」を自らの手で販売する。東京はじめ、現在全国8か所で開催されている。東京のみ、年2回開催。一般社団法人文学フリマ事務局運営。
たらはかに(田原にか)
2021年冬から自身のnoteで「毎週ショートショートnote」を企画開催。「ひなた短編文学賞」大賞、「2023新作落語台本」優秀賞、2000字のホラー「note×WEB別冊文藝春秋賞」受賞など、数々の受賞歴を持つ。受賞歴一覧はこちら。
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取材・文:有川美紀子 編集:篠宮奈々子(DECO) 企画制作:國學院大學
