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月めくり、時めぐり

 月めくりカレンダーを楽しげにめくる息子を見ていたら、私が幼い頃に亡くした母を思い出しました。いなくなった母に会えるのは、月めくりカレンダーを何枚かめくったあとだと父は私に語ったものです。私を傷つけないための嘘でしょう。

 小さな指でカレンダーをめくるたび、私は母が読んでくれた絵本を想いました。頁をめくると辛いことや悲しいことも起こるけれど、さいごにはハッピーエンドが待っています。カレンダーをめくり続ければ、必ず母に会えると信じていました。

 実家に泊まった十五夜の頃、ようやく息子が眠ったので、私は父と月見酒を酌み交わしました。いまでも酔うと父は謝ります。伝える勇気がなかったと兎のように目を赤くする父に私は酌をします。子の泣き声が聞こえ、私は寝室へ戻りました。

 息子に絵本を読み聞かせます。頁をめくるたび、ハッピーエンドに近づきます。現実がそうとはかぎらないけれど、幾枚ものカレンダーが癒やすものはあります。眠った子の寝顔に月明かりが灯りました。私は頬を撫でます。月をめくるように。






ショートショート No.414

photo by Kosuke Komaki

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小牧幸助|小説・エッセイ 牛乳を買って金曜よるに一杯やります。