中学校で“お金と税”を語る──中学生の“お金感度”と教育現場の課題
先日ご案内していた通り、中学校で租税教室を実施してきました。
今回の記事は、そのご報告も兼ねた内容です。
前回の小学校での実施と比べて、生徒の年齢が上がった分、反応や質問の質も一段と深くなっており、手応えのある内容となりました。
また、授業後には校長先生や担当の先生方ともお話する機会があり、教育現場でのリアルな課題にも触れることができました。
この記事では、
・今回どのような授業(+ちょっとした失敗談)を行ったのか
・教育現場で見えてきた「お金の教育」の課題
について綴っていきます。
中学生との対話を通じて感じた、今どきの子どもたちの“お金感度”にも注目です。
この記事はこんな方におすすめです:
✅教育現場で「お金の授業」に関心のある先生・関係者の方
✅小中高生の保護者の方で、子どものお金との付き合い方が気になる方
✅租税教育や金融リテラシーの向上に取り組んでいる士業・FPの方
✅税理士の“現場での活動”に興味のある方
✅今どきの中学生の"お金感覚"が気になる方
✅SNS時代の子どもに“情報を見抜く力”をどう育てるか、考えたい方
1.中学校で租税教室を実施してきました
今回の租税教室は、大阪府内の公立中学校で、中学3年生約130名を対象に実施しました。
期末テストが終わり、夏休み直前ということもあって、生徒たちにとっては比較的気楽に受けられるタイミングだったかもしれません。
実施の背景としては、校長先生が「どうにかして租税教室を実施したい」と希望されていたことがあります。
本来であれば、学校が所在する地区の税理士が担当するのが通常ですが、近年は講師の成り手が不足しているのが現状のようです。
今回は、広域での派遣も可能な登録講師として自分にお声がかかったという経緯でした。

授業後には、校長先生や学年の先生方とも少しゆっくりお話しする時間があり、
租税教室だけでは届きにくい、金融教育の現場課題についてもリアルな声を聞かせていただきました。
(この点については後ほど詳しく触れます)
また、今回は参議院選挙が目前というタイミングでもありました。
・各政党が、税についてどんな主張をしているか
・その主張に対して、国民はどういう選択をするのか
といった話も交えながら、
「今だからこそ、社会の動きを“自分ごと”として見てほしい」と伝える、非常に良い機会になりました。
2.生徒たちの“お金感度”に驚く
授業の冒頭では、「どんな税金を知っている?」という問いかけからスタート。
やはり一番多かったのは「消費税」。
身近な買い物で触れる税なので、しっかり定着しているようです。
その一方で、終盤の質問タイムで驚いたのが、
「独身税ってなんですか?」
という質問。
「ん?よく知ってるなぁ!」と思わず言いたくなりました。
(※独身税は、来年開始予定の”子ども・子育て支援金制度”を揶揄する言葉です)
最近の中学生は、SNSやネットで“それっぽい情報”がどんどん入ってきますね。
その内容が真実かどうか、なぜそう言われているのか——
背景を考える習慣までは、まだ早いのかなと感じました。
また、今回も定番の質問として登場したのが、
「先生って、どれくらい稼いでるんですか?」
という直球の問い(笑)。
小学生の時もそうでしたが、人のお金事情はやはり気になるんですね。
やっぱり、中学生になると反応も深く、質問の内容にも具体性が出てくる。
こちらとしても、思わず話に力が入る、そんな時間でした。
3. “1億円レプリカ”が大盛況!
今回も、税務署のご協力のもとで「1億円レプリカ」を持参しました。
(※どのようなものかは、過去の記事で写真つきで紹介しています)
この教材、今回も生徒たちが食いつく、食いつく。
「これ本物?」「何キロあるんですか?」「持って帰ったらどうなるん?」
というような声が次々とと飛び交っていました。
手に持った瞬間の「おお、重っ!」という反応は、何度見ても新鮮。
今回はそれだけでなく、先生方のテンションも妙に高かったのが印象的でした(笑)。
※アタッシュケースを持って、かなり楽しんでおられました。
やはり、「1億円」という具体的な金額を“数字”ではなく“手触り”として体感できる教材というのは、それだけで強いインパクトがありますね。
4. 「アナザーワールド」で集中力アップ
授業の中盤では、国税庁が提供している教育アニメ「アナザーワールド」を見てもらいました。
中学生向けの租税教育動画としては、ご存知の先生もいらっしゃるようで、なかなか完成度が高く、教材としては鉄板のようです。
※この動画、YouTubeでも見ることができます。
ちなみに、このアニメの声優陣が意外と豪華で──
緒方賢一さん (名探偵コナン:阿笠博士)、
井上和彦さん (美味しんぼ:山岡士郎、鬼滅の刃:継国縁壱)、
江守徹さん
聞いてすぐに「あ、この声…!」とわかるレベルの布陣で、
「これ、けっこう制作費かかってるだろうな」と思わず感じてしまいます。
そして今回のちょっとした“やらかし”が、江守徹さんの件。
「最近亡くなられましたが…」と私がさらっと言ってしまったところ、先生方に
「いや、ご存命ですよ…」と優しくツッコまれました(恥)。
あとで気付いたんですが、中尾彬さんと完全に混同していました。
生きてる死んでるというより、”彬と間違えるなよ”って叱られそうな気がします。
…というわけで、私は別のアナザーワールドに引き込まれていました。
5. 税金と民主主義、そして“自分ごと”として考える力
授業の後半では、「税金って誰が決めていると思う?」という問いから、
選挙→国会→法律(立法)→税金、そして民主主義とのつながりについて話をしました。
少し真面目な内容にはなりますが、
税金は“国が勝手に取っているもの”ではなく、
“私たちが選んだ人たちが、私たちの代わりにルールと使い道を決めているお金”。
この話は租税教室のコアとなる内容です。
今回特によかったのは、参院選の直前という絶妙なタイミングだったこと。
・もうすぐ参院選があって、いろんな税金(特に消費税)について主張している
・それに対して有権者が、どんな判断=“投票”をするのか、しっかり見ておき!
といったことを、自分なりの言葉で伝えました。
まだ投票はできない年齢とはいえ、
ニュースや身の回りの話題を「将来の納税者・有権者」として見ておくことには、十分に意味があります。
そうした視点の種を、今回の授業で少しでも届けられていれば嬉しいです。
なお、この内容をもとに、生徒たちは後日作文を書く予定とのこと。
こちらが伝えたことを、彼らがどう受け止め、どんな言葉で表現するのか。
その“アウトプット”を見る機会があるなら、それはとても楽しみです。
6. 現場で感じたこと──これからのお金の教育に向けて
授業後、校長先生や学年の先生方、さらには税務署の方ともお話しする機会があり、いくつか印象に残ったことがありました。
①租税教室をやりたくても、講師が足りていないという現実
実施のニーズは増加傾向にある一方で、講師の確保が難しいという現場の課題があります。
税務署の方も「講師が見つからず、やむを得ずお断りしたケースがあった」とおっしゃっていました。
今回、広域対応の登録講師である自分に声がかかったのも、そうした背景があるようです。
実務を行っている税理士が租税教室を担当するのは、時間的・経済的なハードルがあるのも事実です。
こういった“教育寄りの取り組み”ではお金の話をしにくい空気もありますが、
民間に委託して実施している以上、予算と授業の質にはどうしても相関関係が生まれます。
教育の質を保つためには、一定の費用をかけるという視点も必要なのではないでしょうか。
こうした構造を、もっと大きな枠組み──自治体、省庁、あるいは国レベルで、
しっかり把握し、支援の在り方を考えていく必要があるのではと感じました。
②税だけではカバーしきれない“お金の教育”の必要性
今の子どもたちは、テレビやSNSから日常的に膨大な“お金情報”を受け取っています。
今回の「独身税ってあるんですか?」という質問も、その象徴のようなものでしょう。
ただ、その情報が本当に正しいのか? なぜそう言われているのか?
そういった問いを持つには、制度の話だけでは届かない部分があります。
校長先生との会話で印象に残ったのが、特殊詐欺に巻き込まれてしまう中高生の話。
(とくに“受け子”として使われる例が多いとのこと)
報酬の金額を聞いて、
・これってちょっと多すぎないか?
・このお金、どこから出てるの?
といった疑問を持てるアンテナがあれば、防げたケースもあったかもしれません。
税の話も大切ですが、それだけではなく──
お金を「稼ぐ」「使う」「受け取る」リアルな感覚とセットになった教育が、本来は必要なのではないか。
たとえば教材の中でも、「税でダムや病院をつくる」という話はありますが、
その建設の裏で、人件費が支払われ、雇用が生まれ、家計を支えているという視点はほとんど語られていません。
税金は、世界中をめぐって“血液のように”人々の財布に行き渡っているお金でもあります。
そうした循環の中で、“自分で考え、選び、判断できる力”としてのお金の教育が、
これからますます必要になってくる──そう感じた授業でもありました。
7. 最後に──伝えることで、こちらも学んでいる
今回の租税教室も、終わってみればあっという間の50分でした。
どれだけのことが伝わったかは正直わかりませんが、
むしろ、授業を通じて自分の方が学ばされることの方が多かったように思います。
講師不足の現状、生徒たちのお金への感度、そして詐欺リスクのリアル──
帰りの車を運転しながら、色々なことを思い返していました。
税金の話を入口に、
中学生たちが「社会」や「お金」、そして「税理士」について
少しでも何か考えるきっかけを持ってくれていたなら、
それだけで十分すぎるほど意味があると思っています。
まだまだやるべきことは多い。
そう実感したからこそ、今後もこうした教育の場に、より深く関わっていきたいと思っています。
そして現場での学びや気づきは、今後もこうして記事という形で発信していくつもりです。
もしこの記事が何かしらの気づきや視点をもたらしていたら、
「スキ」やコメントで教えていただけると励みになります。
今後の教育活動や記事づくりのヒントにもなります。
特に今回は、教育機関・自治体・企業での教育などに関わる方からリプライ等いただけるとありがたいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
