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高収入のターくん、プレゼント予算は多分110円

応募婚活パーティーで一番人気だった男性と、即日で付き合った。

爽やかな見た目、高収入、華やかな肩書き。

そして彼は、私のラメを見て「瞳がキラキラしてますね」と言った。

その一言で浮かれた私を待っていたのは、松の天丼、夜道のターくん、謎の共同出資システム、そしてプレゼント予算たぶん110円のダイヤだった。

これは、恋の違和感をラメで見失った女の、ちょっと痛くてだいぶ笑える婚活供養録です。

※この作品は実体験を着想に、人物・設定・出来事を再構成したフィクションです。

四十代に入ってからの婚活パーティーには、独特の緊張感がある。

若い頃の合コンなら、顔が好みだとか、話していて楽しいとか、そういう理由だけで浮かれて帰ることもできた。

でも、婚活となるとそうはいかない。

職業。

年収。

結婚歴。

家族構成。

休日の過ごし方。

プロフィールカードの小さな枠の中に、この先の人生を預けても大丈夫なのかを判断する材料が並んでいる。

もっとも、あとから考えると、あのカードで一番慎重に確認すべきだった項目は、

「この人は、付き合いたての女から高額商品の頭金を集めるタイプではありませんか?」

だったと思う。

もちろん、そんな欄はなかった。

その日の婚活パーティーで、彼は目立っていた。

爽やかな見た目。

清潔感のある服装。

中高年男性にありがちな疲れた感じも薄く、年齢のわりに若々しい。

プロフィールカードには、華やかな肩書きと高収入が書かれていた。

空間デザイナー。

年収九百万円。

今思えば、彼が一番見事にデザインしていたのは、部屋でも店舗でもなく、婚活市場における自分の設定だった。

彼が私の前の席に座ったときだった。

私の顔を見るなり、少し大げさなくらい目を見開いて言った。

「わ! 瞳がキラキラしてますね! 僕、あなたの番号書きます」

私は、グッときた。

正確に言うと、キラキラしていたのは私の瞳ではない。

目の周りに塗ったラメである。

でも、そういう小さなところに気づいてくれるのって、嬉しいではないか。

四十代の婚活において、今日のために少し頑張った自分を見つけてもらえる破壊力は大きい。

ラメを塗った甲斐があった。

この人、ちゃんと見てくれている。

そんなふうに思った。

今なら分かる。

グッ! 素敵! じゃない。

ハッ! 危ない! だ。

限られた数分で、女性が嬉しくなる言葉を迷いなく差し込んでくる男である。

しかも見た目は好み。

肩書きは華やか。

年収も立派。

警戒装置は、最初から私のラメ以上にキラキラ光っていた。

そのパーティーでは、途中で自分の人気順位が分かる仕組みになっていた。

中間発表で渡されたカードを見た私は、心の中で叫んだ。

一番人気だ!!

私が、女性側の一番人気だった。

しかも彼も、男性側の一番人気だった。

私は即座にカードの写真を撮り、友達に送った。

「見て! 私、一番人気!」

実に浮かれている。

四十代の女が、婚活パーティーの人気順位表を撮影し、友達に速報を送っている。

我ながら、見事な浮かれっぷりである。

とはいえ、仕方がない。

そこは中高年の婚活パーティーである。

若手俳優のオーディション会場ではない。

言ってしまえば、おじさんおばさん界隈における一番人気だ。

それでも、一番人気は一番人気なのだ。

好みの顔。

華やかな職業。

年収九百万円。

さらに会場内人気ナンバーワン。

私はもはや、一人の男性を見ていたのではなかった。

会場全体から、

「こちら、当たり商品です」

という金色のシールを貼られた何かを見ていた。

最後のフリータイム、私は別の男性と話していた。

彼もまた、別の女性と話していた。

それでも、ふっと気になって、彼のほうを見た。

すると、彼もまた私を見ていた。

目が合った。

彼は、ニコッと微笑んだ。

はい、ノックアウト。

あれは反則である。

一番人気の男と一番人気の女が、それぞれ別の相手と話している最中に、ふと目が合って、微笑み合う。

少女漫画なら、背景に花が飛ぶ場面だ。

現実の私は、その約一ヶ月半後、質屋で温かいお茶をもらうことになるのだが、この時点ではそんな未来は一ミリも見えていなかった。

今思えば、あの微笑みが、彼から私への一番高価なプレゼントだった。

原価ゼロ円。

なのに、その微笑みが後の私の財布のヒモを驚くほどゆるくした。

パーティーが終わったその日、彼から交際を申し込まれた。

私は、即日で付き合った。

婚活で出会った一番人気同士。

これはもう、良いご縁なのではないか。

そう思った。

最初の違和感は、二回目のデートだった。

二人でお茶をして、会計のとき、私は五百円ほどを出した。

試したわけではない。

軽い気遣いのつもりだった。

すると彼は、

「あー、うん。ありがと」

と言って、普通に受け取った。

あ、受け取るんだ。

別に、五百円が惜しいわけではない。

ただ、彼には一秒の迷いもなかった。

「あ、いいよいいよ」と財布を出す仕草もない。

「じゃあ次は僕が出すね」もない。

遠慮という、日本人が長い年月をかけて育ててきた最低限の文化が、彼の中ではきれいに撤去されていた。

さすが空間デザイナー。

余計な家具は置かない主義らしい。

私は少し引いた。

でも、出したのは私だし。

男女平等だし。

お茶代くらいで男を判断するなんて、細かい女みたいだし。

私は、自分の中に生まれた違和感を、自分で丸めて飲み込んだ。

結果的に、あの五百円はとても優秀な予告編だった。

本編は、もっと金額の桁が違った。

付き合い始めてすぐ、彼の誕生日が近いと分かった。

誕生日当日には会えないと言われたが、その少し前に、誕生日のお祝いを兼ねて食事とプレゼントを選びに行くことになった。

ランチは私がご馳走するつもりだった。

誕生日なのだから、少しくらい良いものを食べてもらうのもいい。

私もそのくらいの気持ちはあった。

入ったのは、天ぷら屋さんだった。

私は、三千円ほどの梅の天丼を頼んだ。

普段より少し贅沢だけれど、せっかくのお祝いだし、私もゆっくり味わって食べようと思った。

彼はメニューを開くと、料理の内容をじっくり見るでもなく、ほとんど迷わず言った。

「松の天丼で」

七千円ほどする、一番高い天丼だった。

ちなみに、竹は五千円だった。

ちゃんと中間地点は用意されていた。

それでも彼は、まっすぐ山頂へ向かった。

早い。

私に番号を書くと言ったときと同じくらい、決断が早い。

もちろん、誕生日祝いである。

良いものを食べるなとは言わない。

ただ、付き合って間もない女に奢られるランチで、内容もほぼ見ずに最高額の松を即決するあの迷いのなさ。

そこに、後のすべてが詰まっていた気がする。

天丼が運ばれてきた。

私は梅の天丼を、せっかくだからゆっくり味わって食べた。

一方、彼は松の天丼を、すごい勢いで口に詰め込み始めた。

天ぷら。

ご飯。

天ぷら。

ご飯。

頬がハムスターのようにパンパンになっているのに、止まらない。

七千円の松が、秒で消えた。

私は自分の梅を噛みしめながら思った。

この人、味わってない。

回収してる。

奢りで手に入れた最高額商品を、誰にも取り返されないうちに体内へ収納している。

誕生日ランチというより、天丼の高速回収だった。

そして食後、彼は高級店を次々と回り始めた。

財布。

バッグ。

電子機器。

どれも十万円を軽く超えるようなものばかりだった。

店員さんに商品を出させては眺め、私の顔を見てまた別の店へ移動する。

すばしっこい。

プレゼントを選んでいるというより、私の支払限度額を探っているようだった。

私は、その時点で気づくべきだった。

ランチで松を即決する男が、プレゼントで梅を選ぶわけがない。

最終的に彼が欲しがったのは、高価な最新タブレットだった。

「そんなに出せないよ」

私が言うと、彼はまるで物分かりのいい恋人のような顔で言った。

「全部じゃなくていいよ。残りは俺が出すから、出せるだけ出してくれたらいいよ」

出せるだけ出してくれたらいいよ。

一瞬、安心しそうになった。

全部ではないんだ。

彼も出すんだ。

いや、待って。

なぜ、高収入を名乗る男の誕生日プレゼントを、付き合いたての私が共同出資で買うことになっているのか。

しかも、出せるだけ出せと言われているのは私である。

なに、そのシステム。クラウドファンディングか。

しかも支援先は、災害復興でも困っている子どもでもなく、年収九百万円設定の爽やかなおじさんの最新タブレットである。

それなのに私は、ATMへ行った。

そして、数万円を下ろして彼に渡した。

彼は、ごく自然に受け取った。

その場で商品を買うのだと思った。

けれど、彼は買わなかった。

後日、彼からビデオ通話がかかってきた。

買ったというタブレットを、開封して見せてくれるらしい。

通話に出ると、画面の向こうにいた彼は、なぜか夜道に立っていた。

そして、テンション高めに言った。

「ヤッホー♡ 夜のターくんだよー♡」

私は引いた。

だいぶ引いた。

昼のターくんの正体すらまだよく分かっていないのに、急に夜のターくんを出してくるな。

だが、その頃の私は、妙なサービス精神を持っていた。

相手が楽しそうにしているのに、真顔になってはいけない。

恋人なのだから、ノリを合わせたほうがいい。

そんな、今となっては一円の価値もない気遣いを発揮してしまった。

「わーい、夜のターくんカッコイイ!!」

言った。

言ってしまった。

夜道で高価なタブレットの箱を持ちながら、自分を「夜のターくん」と呼ぶ五十歳前後の男。

それを画面越しに持ち上げる四十代の私。

中高年のおじさんおばさんが、何をやっているのか。

向こうは完全に、夜道の不審者である。

私も、あの通話の音声だけ切り抜かれたら、事情聴取が必要な人にしか見えない。

その頃には、違和感は山ほどあった。

なぜ、私からお金を受け取った店で買わなかったのか。

なぜ、誕生日当日に会えなかったのか。

なぜ、会う時間はいつも短いのか。

なぜ、二人きりで過ごす場所は、街でいちばん時代に取り残されたような安いホテルばかりなのか。

そして、なぜ、その料金まで割り勘なのか。

違和感しかない。

なのに私は、まだ彼を切らなかった。

本気で彼に夢中だったというより、私は、自分が引いたと思った当たりくじを、ハズレだったと認めたくなかったのだと思う。

だって私は、一番人気のカードを友達に送っている。

「見て! 私、一番人気!」

と、嬉々として報告している。

今さら、

「ごめん、あの一番人気、天丼は秒で回収するし、夜道で自分を夜のターくんと呼ぶし、私のお金で端末買おうとしている」

とは、なかなか認めたくない。

私が守りたかったのは、彼への気持ちというより、一番人気を引き当てたはずの自分の選択だったのかもしれない。

そして、クリスマスが来た。

彼は私を、高級ジュエリーショップへ連れて行った。

ハートのダイヤ。

馬蹄(ばてい)のダイヤ。

丸い一粒ダイヤ。

なぜか、その三種類のデザインばかりを何度も試着させられた。

「どれが好き?」

そう聞かれれば、期待する。

クリスマスだし。

恋人だし。

もしかして、私のために選んでくれているのかな、と。

私は、丸い一粒ダイヤのデザインがいいと思った。

けれど、彼はどの店でも何も買わなかった。

しばらくして、駅ビルの通路で彼は言った。

「ちょっと待ってて」

私はそこで待った。

戻ってきた彼の手には、先ほどまでいた高級ジュエリーショップのものとは到底思えない紙袋があった。

袋の時点で、もうかなり苦しい。

高級感を演出しようとしたものの、企画会議の途中で予算を全額カットされたような紙袋だった。

彼は、手品師のような仕草でケースを取り出した。

中には、丸い一粒ダイヤ風のネックレスが入っていた。

さっきまで高級ジュエリーショップで見ていたものと、形は似ていた。

形は。

彼は、私の首にそのネックレスをつけてくれた。

好きになりかけている相手から、クリスマスにプレゼントをもらったのだ。

嬉しくなかったわけではない。

私は、一応、喜んだ。

「嬉しい! ありがとう!」

たぶん顔は、相当ひきつっていたと思う。

すると彼は、甘い声で言った。

「これ、俺と会うときだけつけてきてほしいな」

なぜ限定?

大切なプレゼントだから?

二人だけの特別なものだから?

それとも、友達に見せられたり、昼間の光の下で観察されたりすると、何か困る事情でもあるから?

私の中の警報装置が、ようやく本気で鳴り始めた。

ウーウーではない。

もう、火災報知器と防犯ブザーと避難アナウンスが同時に鳴っているレベルだった。

ところが、話はここで終わらない。

私に推定110円の輝きを首からぶら下げた直後、彼は自分へのクリスマスプレゼントを見に行きたがった。

彼が欲しがったのは、高価なスマートウォッチだった。

十万円を大きく超えるものだった。

私の首元は、推定110円。

彼の手首は、十万円超え希望。

愛の価格差がすごい。

むしろ、価格差しかない。

「そんなの無理だよ」

私が言うと、彼の雰囲気が変わった。

「じゃあ、いくらなら出せる?」

鬼気迫る勢いだった。

怖い。

それは、恋人がプレゼントを遠慮がちに相談する顔ではなかった。

支払能力を確認する人の顔だった。

知らんがな。

なぜ私は、年収九百万円設定の男の腕時計購入について、クリスマスの街中で資金繰り相談を受けているのか。

しかし私は怖さに押され、その場で数万円を手渡した。

そして、クリスマスだというのに、なぜか夕方には解散になった。

恋人とのクリスマスである。

普通なら、夜まで一緒に過ごすとか、食事をするとか、イルミネーションを見るとか、多少なりともロマンチックな展開がありそうなものである。

私のクリスマスは、夕方終了。

首には推定110円。

財布からは数万円が消えている。

しかも私は、帰り道でさらに追加で数万円の電子送金までしてしまった。

怖かった。

彼の機嫌を損ねるのが怖かった。

そして、認めたくなかった。

婚活パーティーで一番人気で、顔が好みで、高収入設定で、私に微笑みかけてくれた彼が、ここまでおかしい男だったなんて。

送金を受け取った彼は、また言った。

「残りは俺が出すよ」

出た。

恋人共同出資システム、二回目の導入である。

私は彼女だったのか。

彼の欲しい商品の頭金担当だったのか。

今となっては、後者だった可能性のほうがかなり高い。

自宅に戻った私は、彼からもらったネックレスを机の上に置いた。

紙袋を見た。

ケースを見た。

ネックレスを見た。

見るほどに怪しい。

でも、まだ完全には認めたくなかった。

私はネックレスを首につけてみた。

そして、スマホで写真を撮った。

しかも、少しでも高く見えるように撮ろうとした。

照明を変えた。

角度を変えた。

背景も少し工夫した。

もしかしたら、紙袋が安っぽいだけで、中身はきちんとしたものかもしれない。

写真に撮ったら、それなりに高級感が出るかもしれない。

必死である。

本物かどうか確かめる前に、私はまず、写真の中で本物っぽく見せようとしていた。

今思えば、きれいに撮ろうとしていたのは、ネックレスではなかった。

一番人気の彼を選び、違和感を何度も飲み込み、クリスマスにまでお金を渡してしまった、自分の現実だった。

角度を変えたら、まだ間違いではなかったように見えるかもしれない。

光を当てたら、まだ素敵な恋だったように見えるかもしれない。

でも、どの角度から撮っても、私の胸の中の違和感だけは消えなかった。

私はその日の夜、紙袋とケースとネックレスを持って、質屋へ行った。

店主はネックレスを見た。

ケースを見た。

紙袋を見た。

そして、少し気の毒そうな顔で言った。

「これは、一円にもならないですね。メッキですらないです。アクセサリーというより、おもちゃですね」

さらに、紙袋もケースも、安価な雑貨店で見かけたことがあると言った。

高収入のターくんが、クリスマスに私へくれたネックレス。

査定額、ゼロ円。

ああ。

写真の撮り方の問題ではなかった。

どんなに明るいところで撮っても、どんなに上手に角度をつけても、本物ではないものは本物にはならない。

ネックレスも。

たぶん、あの一ヶ月半の恋も。

怒りと情けなさが、一気に押し寄せた。

また?

私、これまでだって散々、癖のある男には出会ってきたはずなのに。

また、こんなことになっているの?

事情を聞いた質屋のご主人は、少し考えて言った。

「もしかすると、三種類とも最初から用意して、どこかに置いていたのかもしれませんね。お客さんが選んだ形のものを、あとから持ってきたのかも」

私は固まった。

ハートを選んでも。

馬蹄を選んでも。

丸い一粒を選んでも。

私がどれを選んでも、ターくんの予算は推定110円で安定していた可能性がある。

私へのプレゼント選びではなかった。

在庫管理だった。

なに、そのシステム。

しかも、私に在庫を選ばせた直後、彼は自分の高価な時計代を私から回収しようとしていたのである。

恋人というより、私は彼の仕入れと設備投資を支えるスポンサーだったのかもしれない。

呆然としている私に、質屋のご主人は、温かいペットボトルのお茶を一本くれた。

その瞬間、私は気づいた。

この一ヶ月半で、男性からもらったものの中で、金銭的にも人間的にも一番価値があったのは、質屋のご主人がくれたお茶だった。

帰宅してから、私はターくんにメッセージを送った。

これまで私が渡したお金を返してください。

既読はついたが返事は来なかった。

代わりに、ブロックされた。

私は、婚活パーティーの中間発表で一番人気になったカードの写真を送った友達に、すべてを話した。

あの日、

「見て! 私、一番人気!」

と送った友達に、

「ごめん。その一番人気、推定110円のネックレスをくれて、私のお金で高価な時計を買おうとして、返金を求めたら消えました」

と報告することになった。

友達は、笑わなかった。

まず、ターくんにぶち切れた。

「何そいつ。ふざけんなよ」

私が渡したお金の話。

誕生日の話。

クリスマスの話。

ネックレスの査定額がゼロ円だった話。

一つ話すごとに、友達の怒りは積み上がっていった。

そして次に、私の身を心配した。

「でも、そいつ、ラメ子の家を知ってるんでしょ? 大丈夫? 来たりしない? 本当に気をつけて」

その言葉が、心に沁みた。

怒ってくれて嬉しい。

心配してくれてありがたい。

でも同時に、情けなさで胸の中がぐちゃぐちゃになった。

私の安全を本気で心配してくれる友達がいる。

なのに私は、自分からターくんにお金を渡し、おもちゃみたいなネックレスを首につけ、写真では高く見えるように必死に工夫までしていた。

恥ずかしかった。

でも、友達が私の代わりに怒ってくれたことで、ようやく私は、自分まで一緒になって自分を責め続けなくていいのかもしれないと思えた。

悪いのは、私のラメではない。

もちろん、一番人気に浮かれて即日で付き合った判断は、今後の参考資料として厳重保管すべきである。

けれど、人が信じようとする気持ちにつけ込んで、お金を出させた側の卑しさまで、私が背負う必要はない。

結局、お金は一円も戻ってこなかった。

それから一ヶ月ほど経ったある日。

私は、あの婚活パーティーが行われた駅に用事があって出かけた。

用事を済ませ、帰りの電車に乗ろうとしていた、そのときだった。

開いた電車のドアから、見覚えのある男が降りてきた。

ターくんだった。

いや、もうターくんではない。

ターおじさんだった。

私は固まった。

向こうは私に気づいていない。

ターおじさんは、誕生日プレゼントの日に高級店を次々と回っていたときと同じように、すばしっこく人混みの中へ消えていった。

そして、彼が向かっていったのは。

あの婚活パーティーの会場がある方向の出口だった。

……また?

私は、電車の前で立ち尽くした。

もちろん、彼が本当に婚活パーティーへ向かっていたのかは分からない。

たまたま、その出口に用事があっただけかもしれない。

たまたま、あの街にいたのかもしれない。

彼が本当に独身だったのかどうかも、私は知らない。

独身証明書の提出が必要な会ではなかったからだ。

だから、断定はできない。

でも、もし。

もし、あの出口の先で、また誰かの前に座り、

「わ! 瞳がキラキラしてますね! 僕、あなたの番号書きます」

なんて言っていたのだとしたら。

もし、中間発表で一番人気になり、別の席から誰かにニコッと微笑みかけていたのだとしたら。

もし、その女性が、

「見て! 私、一番人気!」

と友達にカードの写真を送っていたのだとしたら。

私は、心の底から叫びたい。

逃・げ・てー!!

その男が見ているキラキラは、あなたの瞳だけではないかもしれない。

あなたの財布の反射まで、まぶしく見えている可能性がある。

婚活中の皆さん。

プロフィールカードは、保証書ではありません。

一番人気同士でも。

目が合って微笑まれても。

ラメを褒められても。

即日で付き合う前に、一度だけ落ち着いてほしい。

そして、小さな違和感を甘く見ないでほしい。

私の中の警報装置は、最初からずっと正常に鳴っていた。

五百円を迷いなく受け取ったとき。

七千円の松の天丼を、秒で体内へ格納したとき。

私のお金で買う商品を、その場では買わなかったとき。

夜道で「夜のターくんだよー♡」と現れたとき。

推定110円のネックレスを「俺と会うときだけ」と言われたとき。

クリスマスの夕方に解散させられたあと、さらに送金してしまったとき。

警報は、全部鳴っていた。

壊れていたのは警報装置ではない。

一番人気というラメで、その警報音までキラキラに加工してしまった私のほうだった。

失ったお金は痛い。

普通に痛い。

あのお金があったら、友達と美味しいものを食べられた。

自分で本物のアクセサリーを選べた。

松の天丼だって、私がゆっくり味わって食べられた。

でも、私はターおじさんと結婚せずに済んだ。

人生の残りを、夜道で自分を「夜のターくん」と名乗る男と過ごさずに済んだ。

そう思えば、あれは授業料だったのかもしれない。

だいぶ高額な授業料だったけれど。

そして教材は、プレゼント予算たぶん110円のダイヤだったけれど。

追記
当記事は創作大賞に応募するため、加筆修正を加えて後日、再投稿しております。良かったらその記事(下記)も読んでみてください🙏長いです笑


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