改正物流効率化法の本格施行(2026年4月)で特定荷主に何が義務化?9万トン基準・CLO選任・届出まで一次情報で整理
はじめに
2026年4月、改正物流効率化法が本格施行され、年間取扱貨物9万トン以上の荷主に新たな義務が課されます。届出やCLO選任、中長期計画の提出など、やるべきことは多岐にわたります。対応が遅れると勧告や罰金の対象になる可能性があるため、早めの準備が欠かせません。
この記事では、改正物流効率化法の本格施行で何が変わるのか、特定荷主の基準や届出の流れ、CLO選任の要件、報告義務の中身まで解説します。
改正物流効率化法の背景と目的

ドライバー不足と荷待ち問題
改正物流効率化法が生まれた背景には、トラックドライバーの人手不足と、荷主側の都合で発生する長い荷待ち時間の問題があります。トラックドライバーの賃上げ原資の確保や物流の生産性向上を図るため、荷待ち・荷役等時間の削減や多重下請構造の是正を進める必要があるとして、国土交通省は荷主・物流事業者に対する規制的措置を導入しました(参照*1)。
物流の現場では、年間の出荷量そのものも減少傾向にあります。国土交通省の調査によると、2015年調査から2021年調査の年間出荷量は8.2%減少しており、2010年調査から2015年調査の減少率2.4%と比べると、落ち込みのペースが大きくなっています(参照*2)。運べるドライバーが足りないうえに、荷待ちで時間を無駄にしている状態が続けば、物流の維持自体が難しくなります。こうした課題に荷主側からも取り組む仕組みとして、改正物流効率化法の本格施行が進められました。
改正法が目指す2つの数値目標
改正物流効率化法では、荷主・物流事業者・施設管理者など物流に関わる関係者が協力して、令和10年度(2028年度)までに達成を目指す目標が掲げられています。農林水産省は、その目標として2つの数値が示しています(参照*3)。
1つ目は、トラックドライバー1人当たり年間125時間の拘束時間の短縮です。1回の受渡しごとの荷待ち時間等を1時間以内にすることが目安です。2つ目は、全体の車両で積載効率を44%に引き上げることです。具体的には、5割の車両で積載効率50%の実現を目指しています。
この2つの数値目標は、ドライバーの負担を減らしつつ、トラック1台あたりの輸送効率を高めることを目標にしています。改正物流効率化法の本格施行によって特定荷主に課される義務は、いずれもこれらの目標達成に向けた具体策として位置づけられています。
特定荷主の指定基準と対象範囲
9万トン基準の根拠と対象約3,200社
改正物流効率化法の本格施行で義務の対象となる「特定荷主」は、年間の取扱貨物重量が9万トン以上の事業者です。国土交通省によると、特定第一種荷主について取扱貨物の重量が9万トン以上であることを基準とし、取扱貨物の重量が多い順に対象として全体の50%をカバーする基準値および対象事業者数が算出されています(参照*4)。
また国土交通省は、荷主および連鎖化事業者について、取扱貨物重量が多い順に、日本全体のトラック事業者により運送された貨物量の半分程度となる事業者を指定の対象にする方針を示しています(参照*5)。対象はおよそ3,200社にのぼります。
なお、基準重量は第一種荷主(主に発荷主)と第二種荷主(主に着荷主)のいずれも9万トンです。どちらか一方または両方の区分で基準を超えた場合、基準を超えた区分において届出を行い、特定荷主の指定を受けることになります(参照*6)。発荷主と着荷主の両面から基準が設けられている点は、自社がどちらに該当するかを確認するうえで見落とせないポイントです。
取扱貨物重量の8つの算定方法
自社の取扱貨物重量が9万トンを超えるかどうかを判定するには、省令で定められた算定方法を用います。国土交通省の資料では、以下の8つの方法が挙げられています(参照*7)。
実測
対象貨物の単位数量当たりの重量に数量を乗じる方法
対象貨物の容積を重量に換算する方法
貨物自動車の最大積載量または平均積載量に台数を乗じる方法
売上額または仕入額を単位重量当たりの額で除する方法
第二種荷主としての受渡し貨物重量が第一種荷主としての委託貨物重量とおおむね一致する場合に、受渡し貨物重量を委託貨物重量とみなす方法
運送契約や売買契約で重量が定められている場合に、その重量を運送ごとに区別する方法
上記1〜7での算定が困難な場合に、適確に算定できると認められる方法
実測だけでなく、容積換算や売上額ベースの算定など、多様な方法が用意されています。自社の事業形態や取り扱う貨物の特性に応じて、もっとも正確に把握しやすい方法を選ぶことが実務上のポイントになります。
届出からCLO選任までの手続

届出の期限と電子申請の流れ
特定荷主に該当する事業者は、まず「貨物の運送の委託及び受渡しの状況届出書」を提出する必要があります。国土交通省の資料によると、届出の期限は基準重量を超えた年度の翌年度の5月末までです(参照*6)。
届出はe-Gov電子申請を通じて行います。国土交通省は、物流効率化法の申請についてはGビズIDを利用してe-Gov電子申請にログインするよう案内しており、GビズIDを取得していない場合はアカウント種別「プライム」での取得を原則としています(参照*8)。GビズIDの取得には一定の日数がかかるため、届出期限から逆算して早めに準備を進めておくことが大切です。
物流統括管理者(CLO)の要件と業務
特定荷主に指定されたら、物流統括管理者(CLO)を選任します。国土交通省の資料では、CLOを「特定荷主が行う事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者」から選任することが義務づけられており、役員等の経営幹部を充てることが想定されています(参照*9)。
CLOには、法令上の職責に即した役割が定められています。国土交通省は、トラックドライバーへの負荷の低減等トラック運送サービスの持続可能な提供の確保を事業者の責務とし、これに即してCLOの役割を規定しています(参照*10)。経済産業省の資料でも、特定事業者に義務づけられる取組として中長期計画の作成、定期報告とあわせてCLOの選任が挙げられています(参照*11)。現場任せではなく、経営レベルで物流改善に責任を持つ体制を求めている点がこの制度の特徴です。
中長期計画と定期報告の実務
中長期計画の記載事項と提出期限
特定荷主に指定された事業者は、中長期計画を作成して提出する義務があります。国土交通省は、判断基準で示す取組事項を踏まえ、「運転者一人当たりの一回の運送ごとの貨物の重量の増加」「運転者の荷待ち時間の短縮」「運転者の荷役等時間の短縮」に関して、実施する措置、具体的な措置の内容と目標、実施時期、参考事項を記載する方針を示しています(参照*5)。
提出のスケジュールにも注意が必要です。中長期計画は毎年度提出することを基本としつつも、計画内容に変更がない限りは5年に1度の提出でよいとされています(参照*3)。初回の提出期限は、通常であれば指定を受けた年度の7月末ですが、2026年度に限っては10月末まで猶予が設けられています(参照*6)。
定期報告のチェックリストと荷待ち時間計測
定期報告は毎年度提出が必要です。農林水産省の資料では、定期報告の記載内容として、事業者の判断基準の遵守状況をチェックリスト形式で回答する項目、判断基準と関連した取組に関する自由記述の項目、そして荷待ち時間等の状況を記載する項目の3つが挙げられています(参照*3)。
チェックリストの具体的な中身としては、国土交通省の資料が詳しく触れています。定期報告書の「判断基準の遵守状況」では、運転者一人当たりの1回の運送ごとの貨物の重量の増加に関する措置の記載欄があり、積載効率の向上等の各項目を4段階で報告する形式です(参照*6)。提出期限は、特定荷主の指定を受けた年度の翌年度から毎年度7月末までとなっています。荷待ち時間の計測と記録を日常業務に組み込んでおくことが、報告書をスムーズに仕上げるための鍵になります。
勧告・命令・罰則の仕組み

改正物流効率化法の本格施行にあたり、義務を果たさなかった場合のペナルティも定められています。特定事業者が努力義務として課せられる措置に関する状況が、国の示す判断基準に照らして著しく不十分である場合、国から当該措置をとるよう勧告されることがあります。命令に違反した場合には、100万円以下の罰金が科せられます(参照*12)。
罰則は勧告・命令のルートだけではありません。前年度の実績が基準以上であるにもかかわらず、所管大臣への届出をしなかったときや、虚偽の届出をしたときには、50万円以下の罰金が科せられます(参照*4)。届出を怠る、虚偽の報告をする、改善命令を無視するなど、段階ごとに異なる罰則が用意されている点を押さえておく必要があります。
対応スケジュールと注意点
改正物流効率化法の本格施行に伴う手続は、2026年4月から段階的に進んでいきます。スケジュールとしては、2026年4月1日に法律が施行され、特定事業者の指定・中長期計画の提出・定期報告・CLOの選任等が始まります。2026年5月末が届出から指定手続の期限であり、荷主は指定後すみやかにCLOの選任届出を行います。初年度の中長期計画の提出期限は2026年10月末で、2027年度以降は7月末が締切です。定期報告の初回提出は2027年7月末となっています(参照*7)。
電子申請にはGビズIDが必要なため、未取得の場合は早めのアカウント取得をお勧めします。一方、基準を下回った場合の出口も設けられています。国土交通省の資料によると、荷主に該当しなくなったとき、または取扱貨物の合計の重量が基準重量を下回り再び基準重量以上となることがないと明らかに認められるときは、「特定荷主指定取消申出書」を提出して指定の取消しを申し出ることができます(参照*6)。
おわりに
改正物流効率化法の本格施行により、年間取扱貨物9万トン以上の荷主には届出・CLO選任・中長期計画の作成・定期報告といった一連の義務が課されます。対応の遅れは勧告や罰金に直結するため、スケジュールを把握したうえで、社内体制の整備を進めていくことが求められます。
自社の取扱貨物重量の算定、GビズIDの準備、CLOの人選など、やるべきことを一つずつ確認しながら対応を進めてみてください。
監修者
末松 建太郎(すえまつ けんたろう)
大学卒業後の1996年に 鴻池運輸株式会社 に入社。国際物流関東支店にてフォワーディングの業務・営業に従事したのち、2011年に鴻池物流(上海)有限公司へ出向・駐在を経験。2017年に帰国し、大阪港支店・定温物流支店・国際物流関西支店にて倉庫業務・営業に従事。2022年より国際統括本部にてDX推進チーム立上げに参画、現在MA・インサイドセールスに従事中。
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