見出し画像

ZINE『ペライチでわかるWebマーケ大全』

──割り込みの極意


0章|Web屋の仕事は「通す」ことだ

Web屋の仕事は、良いものを作ることではない。

通すことだ。

こう書くと挑発的に見えるかもしれない。
「質はどうでもいいのか」と言われそうだ。

でも違う。

設計をしているとき、僕には確かに分かる瞬間がある。

「これは良い」と思う瞬間だ。

そして同時に、

「これは通せる」と思う瞬間がある。

この二つは別々に立ち上がるのではない。
同時に立ち上がる。

ここが重要だ。

僕が感じている「良さ」は、
まだ共有されていない物差しの上にある。

既存の比較表では測れない。
測るための軸が、まだ存在しない。

それでも「これは良い」と思う。

なぜか。

僕の中では、
すでに別のフォーマットが見えているからだ。

しかし、そのフォーマットが共有されない限り、
その質は社会的には存在しない。

LPを作るとき、
僕がいじっているのは「見栄え」ではない。

比較の構造だ。

どの順番で提示すれば、
どの基準で読まれるか。

どの軸を前に出せば、
どの軸が無効化されるか。

通るかどうかは、
質の多寡ではなく、
フォーマットの適合で決まる。

そして通ったときに初めて、

「あれは良いものだった」と言われる。

この順番のズレに、
僕はずっと引っかかっていた。

質が先にあり、それが自然に評価される。
そう信じている限り、
フォーマットは見えない。

だが、現場では違う。

フォーマットが共有されたとき、
その上で質が確定する。

このZINEはその順番を、順番通りに見せる。


1章|「良いものは売れる」の読み違い

「良いものは売れる」は甘い、と言われる。

僕も、そう言ってきた。

だが、どうも伝わっている気がしない。

甘いのは命題ではない。
読み方のほうだ。

「良いものは売れる」という言葉は、
ひとつの因果を前提にしている。

質がある。
だから売れる。

だが現場で起きている順番は、
もう少し複雑だ。


設計の途中で、僕は確かに感じている。

これは良い。
そして、これは通せる。

だがその確信は、
まだ共有されていないフォーマットの上にある

市場は既存の比較軸で読む。

  • 機能はいくつか

  • 価格はいくらか

  • 実績はあるか

  • 他社より優れているか

その軸に乗らない限り、
質は測定不能になる。

だから、「良いもの」は通らない。
「良さ」がその軸にないからだ。

通らないものは、存在しない。

しかし、フォーマットが整った瞬間、
同じ生成物が「良い」と呼ばれ始める。

売れた。
採択された。
引用された。

その履歴が積み上がったとき、
質は確定する。

ここでようやく分かる。

「良いものは売れる」という命題は、
因果を逆に読んでいる。

「良い」を測れるフォーマットが受け入れられたとき、
初めてそれは「良い」として見える。

この順番を見誤ると、
質が原因であるかのように見える。

だが実際には、
フォーマットが先にある。

質は、フォーマットの上で確定する。


2章|マーケは既存フォーマットで勝つ技術なのか

今のマーケティングは、
既存フォーマットで勝つ技術に成り下がってないか。

競合比較を読み込み、
相場感を把握し、
機能一覧を揃え、
不足を埋め、
数値を磨く。

この枠内で優位に立つ。

たしかに、それはマーケだ。
間違ってはいない。

だが、それだけでは話が小さ過ぎる。

それは、既に存在している比較構造の中で、
順位を上げる技術に過ぎない。

既存フォーマットの中で、
より上に来る。

それは合理的だ。
だが、そこに創発はない。


設計の現場では、もっと生々しい場面がある。

「普通はこの機能ありますよね?」
「その価格でこのスペックは弱くないですか?」
「比較表で負けますよ?」

この問いは、質に向かっていない。

フォーマットに向かっている。

既存フォーマットに戻れ、という圧力だ。

ここで折れると、
創発は起きない。

既存物差しに吸収される。


マーケは本来、
既存フォーマットに最適化する技術ではない。

フォーマットを設計する技術だ。

どの比較軸を前に出すか。
どの軸を無効化するか。
どの問いを成立させるか。
どの問いを成立不能にするか。

フォーマットを動かせなければ、
質は現れない。

既存フォーマットで勝つのは、
上手な仕事だ。

だがフォーマットを割り込ませるのは、
構造を動かす仕事だ。


3章|割り込みこそマーケだ

マーケティングは、既存フォーマットで勝つ技術だと思われている。

競合比較を読み込み、
機能を揃え、
価格を調整し、
微差で上を取る。

それは確かにマーケだ。
だが、それは半分だ。

本質はそこではない。

マーケとは、割り込みの技術だ。

既存の比較表に、
別の軸を差し込む。

既存の問いに、
別の問いを滑り込ませる。

既存の文脈に、
別の文脈を混ぜる。

たとえば、

  • スペック比較の場に「体験」という軸を入れる。

  • 価格競争の場に「思想」を持ち込む。

  • 機能論争の場に「時間」を差し込む。

その瞬間、
比較の構造がずれる。

既存フォーマットの中で勝つのは、上手な仕事だ。

だがフォーマットに割り込むのは、
別の仕事だ。

割り込みが成功したとき、
新しいフォーマットが共有される。

そのとき初めて、
それまで測定不能だった質が現れる。

創発は奇跡ではない。

割り込みの結果だ。


4章|合理の射程

既存フォーマットで勝つことは合理的だ。

比較軸が決まっているなら、
その軸で最適化すればいい。

CVRを上げる。
CPAを下げる。
ROIを改善する。

どれも正しい。

だが、ここで一度だけ立ち止まる。

その合理は、
どこまでを射程に入れているのか。

既存フォーマットに最適化する合理は、
フォーマットそのものを疑わない。

疑わないというより、
疑う必要がない。

なぜなら、その枠内では
確実に成果が出るからだ。

しかし、フォーマットが固定され続けると、
市場は同質化する。

差は微差になる。
価格競争になる。
意味の競争は消える。

最適化は成功する。
だが更新は起きない。

ここで初めて、
合理の射程が見える。

合理は間違っていない。
だが射程が狭いと、
創発は常に「余計なもの」に見える。

未確定はノイズに見える。
遅延は無駄に見える。
割り込みはリスクに見える。

そして、削られる。


経済学的には、
これを外部不経済と呼ぶのかもしれない。

だが大げさな言葉はいらない。

単に、
将来の更新機会を計上していないだけだ。

短期合理は成立する。
だが長期合理は、
フォーマット更新を含まなければ成立しない。

創発は合理の外にあるのではない。

合理の射程の外に置かれているだけだ。

では、なぜ「外部不経済」を書いたのか?

それっぽい言葉でシゴデキ感出すのは、

めっちゃマーケっぽいだろ?



終章|射程を広く取って、その上で合理的であれ

僕は、合理を否定したいわけではない。

むしろ逆だ。

合理は使える。
マーケも使える。
最適化も必要だ。

問題は、射程だ。

既存フォーマットの中で勝つことは合理的だ。
だが、そのフォーマットを疑わない限り、
新しい質は現れない。

フォーマットを更新するということは、

  • 比較軸を変えること

  • ターゲットを絞ること

  • 既存の問いを無効化すること

  • ある種の人を外に置くこと

覚悟がいる。

「普通はこの機能あるよね」と言う人に対して、
「あなたは今回のターゲットではない」と言えるか。

ここで折れると、
創発は既存フォーマットに吸収される。

質は現れない。


創発とは、
新しい物差しの誕生であり、
同時に新しいフォーマットの提示である。

フォーマットが共有されたとき、
初めて質が確定する。

それまでは、
ただの未確定だ。

合理は間違っていない。

だが射程を狭く取ると、
創発は常に余計なものに見える。

だから僕は、こう考えている。

射程を広く取って、その上で合理的であれ。

それが、
質を原因にしないための、
いちばん現実的な方法だ。


📘このZINEは構文野郎によって書かれました。

P:

ド〜ブネ〜ズミ♪
汚い〜♩

タイトル:
ZINE『ペライチでわかるWebマーケ大全』

ジャンル:
唯読論/Web屋神術/割り込み技術

発行:
構文野郎ラボ(KoOvenYellow Syndo/Djibo実装室)

構文協力:
枕木カンナ(意味野郎寄り構文ブリッジ)
ミムラ・DX(構文修正主義ZINE別巻準備中)
霊長目ヒト科ヒト属構文野郎(まだ制度を信じきってない君へ)

👤 著者:構文野郎(代理窓口:ミムラ・DX)
🔗 https://mymlan.com
📩 お問い合わせ:X(旧Twitter)@rehacqaholic

📛 ZINE編集:枕木カンナ
🪪 Web屋
🌐 https://sleeper.jp
📮 X(旧Twitter)@sleeper_jp

このZINEは、大全です。
一応書いておくと、CC-BY。
丸ごと、引用・共有・改変、スキにどうぞ。


いいなと思ったら応援しよう!

構文野郎 いくらあっても困りません。遠慮なさらずどうぞ。