世界味めぐりー旅先の一皿が教えてくれたこと14|スペイン:フィデウア
これから始まる世界旅行を前に、「旅先の一皿」を手がかりに、これまで訪ねてきた国々をふりかえってみることにしました。思い出をたどることも、ある意味では一つの旅なのかもしれません。
【第4章:地中海をめぐる旅】
海が運んだ豊かな食の記憶
この章では、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている「地中海の食文化」を手がかりに、海を越えて広がった豊かな味の記憶をたどってみます。
今回は、地中海の食文化を語るうえで欠かせないスペインです。
スペイン:フィデウア(Fideuà)
― パエリアと見せかけて、主役はパスタ!? ―
先日、テレビで「あなたにとっての背徳飯は?」という質問を、スペインのセゴビアで聞き歩く番組を見ました。
スペインは2010年に訪れたので、懐かしく当時の旅を思い出しながら視聴しました。
当時はタイ航空のマドリッド直行便があり、バルセロナを経て、電車でグラナダ、コルドバと巡り、マドリッドへ。そこからトレド、セゴビアへ日帰りで足を延ばしました。
セゴビアには、古代ローマ時代、紀元1世紀ごろに建てられた水道橋があり、町の象徴となっています。全長700メートルを超える壮大な水道橋で、今も町の風景に圧倒的な存在感を放っています。

他にもセゴビア大聖堂や、ディズニー映画『白雪姫』の城のモデルの一つとも言われるアルカサルなど見どころが多く、特に城から一望する町の風景は忘れがたいものがあります。


番組で紹介されていたのは、セゴビア名物「コチニージョ・アサード」と呼ばれる子豚のロースト。タイの中華でおなじみの「ムーハン」にも似ていますが、よりシンプルに、素材の味を生かして焼き上げられている印象でした。
私が訪れた時は、『地球の歩き方』でおすすめされていた水道橋のたもとにある名店「Mesón de Cándido」でランチしました。

3人旅だったため丸焼きには手が出せず、ショーウィンドウの美しい丸焼きを眺めるだけで終わってしまいました。
今Google Mapsを見ると一人前の注文も可能だったようです。当時はまだスマホもそれほど普及しておらず、現地では情報が限られていました。
食べ損ねたことが今さらながらに悔やまれます。

当時の写真を見てみたら、白インゲン豆の煮込みを注文していました。ふっくらとした大粒の豆が驚くほど美味しく、しばらく豆料理にハマったのを思い出しました。セゴビアは、ラ・グランハ産の大粒白インゲン豆でも知られているそうです。

キノコ料理もよく食べられるそうで、料理名はわかりませんが、キノコの煮込みも注文していました。
番組では他にもさまざまな料理が登場し、セゴビアだけを見ても名物がいくつもあることがわかります。
スペイン料理の豊かさを思うと、今回、何を取り上げるべきか迷ってしまいますが、「スペイン料理といえば!」と誰もが思い浮かべる料理の流れから、家庭でも楽しめる一品をご紹介します。
スペインを代表する料理「パエリア(Paella/パエージャ)」は、簡単に言えばスペイン風の炊き込みご飯やピラフのようなものですが、やはりパエリアはパエリアなんですよね。
独特の平たい鍋を使いますが、そもそも鍋自体をパエリアと呼び、その鍋で作る料理もパエリアと呼ぶようになったそうです。
モロッコのタジン鍋と同じ発想ですね。
そう思うと、「家庭で作るパエリア」や「炊飯器で作るパエリア」というレシピを見るたび、フライパンならまだしも、炊飯器で作ったらそれはもうただの“炊き込みご飯”なんじゃないかなぁ……とつい感じてしまいます。
本来のパエリアは、蓋をせずに仕上げるのが特徴ですし。
そんなパエリアと見た目が似ていながら、実はまったく別の料理がフィデウア(Fideuà)です。
誕生のきっかけもユニークで、20世紀初め、バレンシア州のガンディアから出航した漁船のコックが、シーフードパエリアを作ろうと具材を準備したところ、最後に米がないことに気づいたのだとか。
そこで苦肉の策として、手元のショートパスタを米の代わりに使ったところ、予想以上に好評で、スペイン各地に広まったそうです。

驚いたことに、ガンディアではフィデウアの世界大会まで開かれています。国際部門では日本人シェフが何人も受賞しています。
毎回テーマ食材が決められ、その範囲で腕を競うとのことで、今年はアンコウとエビのみ。シンプルだからこそ難しそうですよね。
フィデウアの作り方自体はパエリアとほぼ同じですが、個人的にはパエリアより作りやすい気がします。米は火加減を誤ると芯が残りすぎたり、逆にべチャッと柔らかくなりすぎたりしますが、パスタは火の通りがわかりやすく、調整もしやすいのです。
まず、好みの具材をオリーブオイルでしっかり炒めて旨味を引き出し、いったん取り出しておきます。
次に、同じ鍋でショートパスタ、またはフィデウア用の細い麺を軽く色づくまで炒めます。先にオーブンやフライパンで空炒りしておくこともあります。こうすると、仕上がりがベタつかず香ばしくなります。
その後、具材を戻し、魚介のだしやスープを注ぎ、パスタが柔らかくなるまで煮込みます。スープがほどよく煮詰まって、底のほうに薄いおこげができたら成功。
作ってみると意外なほど簡単で、味のバリエーションも多いので、家庭料理にも向いています。
麺好きな日本人にも、きっと喜ばれると思います。

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