世界味めぐりー 旅先の一皿が教えてくれたこと11|モロッコ:タジン
これから始まる世界旅行を前に、「旅先の一皿」を手がかりに、これまで訪ねてきた国々をふりかえってみることにしました。思い出をたどることも、ある意味では一つの旅なのかもしれません。
【第4章:地中海をめぐる旅】
海が運んだ豊かな食の記憶
この章では、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている「地中海の食文化」を手がかりに、海を越えて広がった豊かな味の記憶をたどってみます。
今回は、「食の多様性」という言葉がふさわしいモロッコです。
モロッコ:タジン料理(Tajine)
― 地中海の恵み、砂漠の知恵 ―
1988年、松田聖子が出したシングル『Marrakech 〜マラケッシュ〜』。大人っぽい雰囲気のその曲をきっかけに、モロッコという国がずっと気になっていました。
30年を過ぎてやっと、2019年に訪問することができました。マラケッシュから砂漠を越えてフェス、シャウエン、ラバトをまわり、マラケッシュに戻ってフランクフルト経由でタイに帰ってきました。
カサブランカも映画の影響があり訪問したいと思っていたのですが、予定していたフライトがキャンセルになって行けずに終わりました。
マラケッシュはとても刺激的な街で、滞在中、ずっと「Marrakech 迷路の町♪」の歌が頭の中でリピートしていました。
モロッコは、アフリカ北西部に位置し、地中海と大西洋に面し、アトラス山脈やサハラ砂漠など、多彩な自然環境に恵まれた国です。古くから交易や移動の要所として発展し、ベルベル人やアラブ人をはじめとするさまざまな民族が暮らしてきました。

イスラム教が国教ですが、観光客向けのホテルやレストランではアルコールも提供され、カリフールでも販売されていました。旅先としては比較的ゆるやかな印象でした。
モロッコの料理は、スパイスと素材の絶妙なバランスが魅力です。クミン、コリアンダー、サフラン、シナモンなどの香辛料を、肉や魚、豆類、野菜、ドライフルーツ、ナッツなどと合わせた奥深い味わいが特徴です。
塩漬けレモンもよく使われています。長く漬けていると皮もトロトロになって、ちょっと梅っぽくなります。日本でいう梅干しのように、料理の味を決める身近な調味料として日常的に使われていました。

モロッコの伝統的な食文化は、イタリアやスペイン、ギリシャなどと並び、「地中海料理(Mediterranean Diet)」としてユネスコの無形文化遺産に登録されています。
その代表的な料理が「タジン」です。
タジンとは、円錐形の蓋がついた土鍋のことで、その鍋を使った煮込み料理全般も指します。蓋の形状が蒸気を循環させる役割を果たし、少ない水分でもじっくりと火が通るのが特徴です。
砂漠地帯が多い国ならではの知恵ともいえますね。

タジン料理には、鶏肉と塩漬けレモン、オリーブを使った「チキンタジン」や、ラム肉とプルーン、アーモンドを甘辛く煮込んだ「ラムタジン」、旬の野菜をたっぷり使った「ベジタブルタジン」など、地域や家庭によってさまざまなバリエーションがあります。
タジンは、ただの鍋料理ではなく、モロッコの気候や暮らし、地中海世界の食文化と人々の知恵が詰まった一皿といえます。

鍋さえ手に入れば、家でもタジン料理を楽しめます。
モロッコでは、朝食の卵もタジンを使って料理していました。
気づけば我が家にはタジン鍋が3つ。スパイスと食材のハーモニーを味わいながら、モロッコに思いを馳せています。


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