世界味めぐりー旅先の一皿がおしえてくれたこと13|マルタ:タコシチュー
これから始まる世界旅行を前に、「旅先の一皿」を手がかりに、これまで訪ねてきた国々をふりかえってみることにしました。思い出をたどることも、ある意味では一つの旅なのかもしれません。
【第4章:地中海をめぐる旅】
海が運んだ豊かな食の記憶
この章では、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている「地中海の食文化」を手がかりに、海を越えて広がった豊かな味の記憶をたどってみます。
今回は、ちょうど地中海の真ん中にあるマルタです。
マルタ:タコのシチュー(Stuffat tal-Qarnit / Octopus Stew)
― 地中海の隠れた美食の島国の名物 ―
マルタ共和国は、ヨーロッパの地中海に浮かぶ小さな島国で、イタリアのつま先にあるシチリア島の南に位置しています。小さい地図だと見逃してしまいそうになる小ささです。

タイからも日本からも直行便はなく、どこかを経由する必要がありますが、トルコ航空のイスタンブール乗継が便利だと思います。
「マルタ=リゾート」というイメージを持つ方も多いかもしれません。私もそうでした。あまりリゾートには興味がないので、自分には縁のない島だと思っていました。そもそも、島なのか国なのかの区別もよくついていませんでした。
タイで会った日本人の何人かが、マルタで英語留学をしていたといいます。それでもイメージがわきません。
ポルトガルの現地ツアーで一緒になった方は、マルタで教師をしていて、定年後は動物園を始めるという話をしていました。リゾート地に動物園というのもピンときませんでした。
ある年、友人から「年末年始の旅行を一緒にしましょう。どこでもいいですから」と誘われました。あれこれ候補があがったのですが、すでに行ったところや、寒くて行きたくないところが多く、場所選びに難航……。地図を端から眺めて見つけたのがマルタでした。
どれどれ……と調べてみると、英語が通じる上に、ヨーロッパの中では比較的物価も高くなく、観光しやすい国です。さらに、世界遺産が3件もありました。
その一つは、人類最古級の石造建築物である巨石神殿群、もう一つは、先史時代の貴重な地下墳墓です。
マルタってそんな面白い場所だったの!?

そして、もう一つは首都バレッタの市街地。
こちらも中世の騎士団の歴史が残り、歴史好きにはたまりません。それほど歴史好きともいえない私でも、興奮しながら見学してしまいました。
他にも青の洞門や美しい港など、長期滞在したくなるほど、自然と中世の魅力を備えた情緒ある場所でした。

そんなマルタを旅してやはり印象に残ったのが、食の豊かさです。マルタの食文化は、地中海沿岸の影響を強く受けています。
長い歴史の中で、フェニキア人、ローマ人、アラブ人、シチリア人、スペイン人、そしてイギリス人など、さまざまな民族の支配を受け、多様な食文化が融合しました。
イタリアやアラブの要素も取り入れつつ、独自の発展を遂げた料理が多いのが特徴です。
特に、新鮮な魚介類、オリーブオイル、ハーブ、トマトをふんだんに使う料理が多く、中でも何度も食べたのがタコ料理でした。
特に「タコのシチュー」は、トマトソース、赤ワイン、ハーブ、ガーリックとともにじっくり煮込まれ、タコは驚くほど柔らかく、深みのある味わいが楽しめます。
日本でもタコはよく食べますが、この味は、マルタならではのものだと感じました。

マルタは、周囲を地中海に囲まれ、昔から漁業が盛んでした。
特にタコはマルタの沿岸でよく獲れる海産物の一つで、伝統的な家庭料理としても親しまれています。保存がしやすく栄養価も高いため、重要なタンパク源として食べられてきたのでしょう。
ところで、「欧米人はタコを食べない」とよく言われますが、実際に訪れた国では、むしろ好んで食べられている気がします。
少なくとも地中海沿岸では一般的で、イギリス、ドイツ、フランスなどでは単になじみがないだけでは?と思うことも。
宗教上の理由という説もありますが、日本に来た外国人は、タコ焼きを大喜びで食べていますよね。
とはいえ、近年タコの漁獲量が減少しているので、あまり世界的にタコ人気が高まりすぎないでほしい気もします……。
どうか、マルタのタコも消費量とのバランスを考えながら、上手にタコ料理の伝統を守ってほしいと思います。
また、食べに行きますから!

おまけ:伝えておきたいこと!
自然も歴史も食も素晴らしいマルタ旅行で、一番感動したのは、世界遺産ハイポジューム地下神殿(Hal Saflieni Hypogeum)でした。
こちらは1日限定人数しか入れず、年末は営業していなかったので、正月に行けて本当にラッキーでした。
マルタ行の計画を立てたらすぐに申し込んでください!
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