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【応募総数6,491作品!】ゴートアム短歌賞 結果発表

コトアム×小学館の大人気文芸誌『GOAT(ゴート)』がコラボした初の短歌コンテスト「ゴートアム短歌賞」の結果発表を行います!
応募期間は2025年12月3日~2026年1月15日(23:59)まで、応募総数は6,491作品でした。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。

ご好評につき第二回のゴートアム短歌賞も実施予定!詳しくは2026年12月刊行予定のGOAT第5号にてお伝えいたします。

文芸誌「GOAT」は、小説、短歌、詩などジャンルレスな作品との出会いが楽しめます。一昨年12月に第一号を刊行すると、発売開始からみるみるうちに話題に。重版を繰り返し、文芸誌としては異例の部数を叩き出しました。なんと、現在累計57万部です!

ゴートアム短歌賞とは?

「編む」にフォーカスした短歌賞。選者は、現代短歌を代表する歌人の俵万智さんと、音楽界にプレイリスト文化を広めたロックバンド「くるり」の岸田繁さん。お二人が応募作品から10首選び、プレイリストにする。コトアムの特徴である「ことばをプレイリストに入れて、編んで楽しむ」とも重なる、配列の面白さに迫った新しい試み。

今回、「GOAT」さんのご厚意で、第4となる『GOAT Summer 2026』に掲載されている「ゴートアム短歌賞」全文掲載の許可をいただきました!

選者の歌人・俵万智さんと音楽家「くるり」岸田繁さんの語るそれぞれのとっておきのプレイリスト、必読です!


【告知】「GOAT」×「スパ ラクーア」コラボ展開中!


「GOAT」と東京ドーム天然温泉「スパ ラクーア」がコラボし、7/31までオリジナルグッズやコラボフード(ノベルティ付)を展開しております!
スパ ラクーアは「雨」や「温もり」をテーマにした短歌の空間展示を行っていて壮観です…!
ゴートアム短歌賞のパネルも掲載されておりますので、ぜひ足を運んでみてください!

ゴートアム短歌賞パネル
館内


コラボフード

GOAT×コトアム
ゴートアム短歌賞結果発表

エスプレッソ・トニックから始まる、
生きること、死ぬこと、殺すこと


[対談]
俵 万智
岸田 繁
立会人=渡辺祐真

「GOAT」は、短歌や俳句、ショート小説など短い「ことば」を投稿したり、お気に入りの作品を編んで楽しむアプリ「コトアム」とともに、「ゴートアム短歌賞」を始めました。第一回の選者は、現代短歌を代表する歌人の俵万智さんと、プレイリスト文化を広めたロックバンド「くるり」の岸田繁さん。立会人は、コトアムアンバサダーにして書評家の渡辺祐真さんが務めます。お題は「GOAT」四号の特集でもある「食」。応募総数は六四九一作品でした。

構成=前川仁之 撮影=上村窓

たわら・まち
一九六二年大阪府生まれ。歌人。早稲田大学第一文学部卒業。学生時代に佐佐木幸綱氏の影響を受け、短歌を始める。一九八八年に現代歌人協会賞、二〇二一年に迢空賞を受賞。『サラダ記念日』『愛する源氏物語』『未来のサイズ』の他、歌集、評伝、エッセイなど著書多数。最新作に『生きる言葉』。

きしだ・しげる
一九七六年四月京都生まれ。音楽家。ロック・バンドくるりのフロントマ
ンを務める傍ら、作編曲家として管弦楽曲や映像のための音楽を数多く手掛ける。代表作に『ばらの花(二〇〇一)』『交響曲第一番(二〇一三)』『リラックマと遊園地(二〇二一)』などがある。

わたなべ・すけざね
一九九二年生まれ。作家、文芸評論家。著書に『物語のカギ』。
NHKラジオ「スケザネの古典は笑って読め!」、TBSラジオ「こねくと」などに出演。

俵万智さん 選

1 ふわふわのパンにチーズをのせて焼くきみに真ん中の好きをあげる/さくさくら
2 「お揃いのフォークがほしい」と言った目はしっかり未来の方を見ていた/ねねずみ
3 甘過ぎる人参グラッセ あなたにも嘘をつく日がきっと来るはず/みえるて
4 何層も無言をかさねてラザニアが出来上がる前に仲直りしたい/辻野葵果
5 もう何も信じられない夜なのに「500W で2分」を信じる/ゆずか
6 熟れすぎた杏はジャムにするしかなく君の弱さを愛せずごめん/箭田儀一
7 デザートを残した君のスプーンが未来を少し押し返してた/北大路京介
8 パンを切るためにうまれた包丁にとって世界はやわらかいまま/小森さとほ
9 とりあえず淹れる珈琲きっちりと私の昼が改行される/福留 釦
10 ツナ缶を開ける この世の週末は予定がなくちゃだめなんですか/短歌パンダ

プレイリスト外 特別賞
「僕のこと忘れてほしい」エスプレッソ・トニックみたいな男がいた夏/佐伯春告
「ビビンバを混ぜたがらない人でした」から始まった叔母への弔辞/hajimism
マヨネーズこんな減らないことなどが家族が一人減ることだった/原田 冬


俵万智さん 総評

食というテーマのおかげだろう。場面や登場するものが具体的で生き生きしている作品が多く、楽しい選考だった。食は、生きることと直結する。そして、人と人とをつなぐ。
オーソドックスではあるが、時間軸は恋愛。食にまつわるものが、気持ちや関係性を象徴するような感じで組み立ててみた。
1、2「真ん中の好き」は、パンであり自分の心でもあるだろう。フォークという日常的なものをお揃いにする提案には、二人の未来の暮らしが暗示されている。
3 でも、未来は常に不確かだ。とりわけ甘すぎる恋愛は、時に人を不安にさせる。
4 ああ、やはり不穏な展開が…。でもまだ間に合うと思いたい。ラザニアは、機嫌よく二人で食べるものであってほしい。
5 目の前の人を信じられないのに、電子レンジへの指示は守れる。機械は、人を裏切らないから? そんな自分を滑稽にも感じる夜。
6 揺れ動くからこそ人だし、弱いところも含めて君なのに。ピークを過ぎた恋は、そのまま味わえない。真っすぐ向き合えない。だから、ごまかすようにジャムにして何とかやり過ごす。
7 私が工夫した 杏のジャムのデザートを、君は残してしまう。かつて思い描いたお揃いのフォークとは対照的に、スプーンが関係の後退を見せている。
8、9、10 チーズをのせたふわふわのパンを思い出す。あのパンを切った包丁にとって、世界は今もやわらかいままだ。さあ、とりあえず、私は私のために珈琲を淹
いれよう。今日はチーズではなく、ツナ缶でオープンサンドだ。一人でパンを味わう週末が、あったっていい。

※補足(プレイリストの並びを考え始めた)きっかけは「『僕のこと忘れてほしい』エスプレッソ・トニックみたいな男がいた夏」という一首。苦くて爽やかな男と出会い、甘い時間から別れへ…という青写真を描いた。

岸田繁さん 選

1 ビスケットのライオンさんを頭からかじる子どもよ 無垢は強さだ/逢
2 旬のある食べ物ばかり味わってずっと一緒に季節をゆこう/川村春樹
3 カップ麺のスープをトイレに流すように行き場のない恋だった/土佐アヴァンチュールぱす汰
4 白菜のまるまるひとつを食べるため母のレシピを解読してゆく/さくさくら
5 来年は八十歳になる父が初めて食べるカオマンガイ/松村智裕
6 東京はなんでもかんでも早いです缶コーヒーが冷める速度も/Pokko
7 祖母煮たる無花果は冷凍庫にて祖母より浅き眠りにおれり/中野ウミネコ
8 その誘いは冬休みだったはず。「今からコオロギ食べね?」/亡命ラニアン
9 おひたしにされた菊花をおいしいともうすぐ妻になるひとが言う/岸寅太郎
10 色々な食材 人は色々な生き物のころし方を知ってる/鳥さんの瞼

プレイリスト外 特別賞
ビリヤニをはじめて食べる人生も底の方から味が出てくる/とて

岸田繁さん 総評

皆さまの作品を読ませていただいて、幾つかのことを想起しました
はじめに、食べるという行為は生命をいただくことである、という前提についてです。
私たちヒトも、生物である限りそこから逃れることは出来ません。
食に結びつく「欲」あり、「文化」あり、最近では「食育」なんて言葉まであります。ヒトは、食べることの意味について、様々な事象や経験と結びつけながら生きているんだなと、改めて気づかされるような作品が多かったように思います。
次に、「食事」を巡る「記憶」、そして「時間の変化」についてです。おばあちゃんが煮た無花果、婚約者がおいしいと言ったおひたしの菊花。時間の経過の中で、それらはエピソードとしてだけではなく、味や匂いの記憶として強く深く残っていくものでしょう。
ヒトは雑食性の動物で、生食だけでなく加熱調理したものや保存食も食べます。ありとあらゆるものを嗅ぎ分け、その味の違いを愉しむ文化は、遠い昔からその人の数だけ様々なドラマとして紡がれてきたはずです。
それから、コオロギ食や捨てたラーメンの汁のように、「美食」や「食文化的なもの」から弾き出されてしまうような「食べ物として定義されるか微妙なもの」についての作品も目につきました。私は伝統保守的な食文化や作法が好きなほうですが、食文化ほど時代をとらえ、その時代の問題や課題を映し出すものはないのではないか、とまで考えさせられています。カオマンガイを初めて食べる八十歳は、十年前の八十歳が経験できないことを経験したわけです。コオロギを日常的に食べる毎日がやってくることに危機感を持たれた方も多かったのではないでしょうか。
最後に、プレイリストの締めくくりに選んだ「色々な生き物のころし方」は鮮烈でした。私たちが普段口に入れているもの、おいしく食べるための古くからの知恵、宗教的忌避による選択など、シンプルですが深く考えさせられる作品でした。

お二人が応募作の中から自由に十首を選び、アンソロジーのようにプレイリストを編んでいく─初の試みは、お二人の選がまったく被らない! という衝撃から始まりました。

─俵さんは短歌賞の選を数多くされてきましたが、プレイリストにするという形での選考は初めてだと思います。今回の賞の難しさや楽しさはどのあたりにありましたか?

まず、読んでいて楽しかったですね。テーマの「食」は、作者の方々の人生が垣間見える、非常に良い切り口だと思います。選ぶにあたっては、まず一首一首と向き合って、作品として自分に響くものをある程度選んだ上で、プレイリスト全体の流れを考えるという手順をとりました。流れを考えるのがめちゃくちゃ楽しかったです。みんなやったほうがいい!(笑)。
「エスプレッソ・トニックみたいな男がいた夏」の歌がお気に入りで、こういう男がいた夏を十首でつないで、最後にこの歌に着地したらおもしろいかなと最初の段階では思ったんです。そこから、はじめに荒選していた歌を、恋のはじまり、ドキドキ、しあわせな時間、倦怠期、お別れモード、そんな感じでグループ分けしていって、流れを組み立てていきました。そうしたら結果的に、発射台となったエスプレッソ・トニックの男はいなくなってしまいました。

─岸田さんはいかがでしたか? 短歌の選考は初めてだったと思います。

岸田 はい。おそれ多いですが、みなさん上手ですし、賞の選考というより一人の読み手として、楽しくやらせていただきました。最初に二十首くらい選んで、そこから泣く泣くしぼって十首にしました。プレイリストを作るということで並びを考えてもみたんですけど、自分の場合は、結局、選んだ順に戻っていきました。おそらく順に読んでいる中で、自然にストーリーを作っていたんだと思います。

それはおもしろい選び方ですね。

岸田 ありがとうございます。私は食事が好きなほうなので、食文化、食べるという営みにちょっとした気づきを与えてくれるような、そんな歌もいくつか選びました。いちばん最初に目についたのは、ビスケットのライオンの歌。導入として象徴的なものだと思います。また、時間の経過や記憶を感じさせてくれる歌も心に響きました。

─同じ「食」というテーマでも、俵さんは恋愛のドラマをつむぎ、岸田さんはより広い意味で食をとらえ、批評的な歌をちりばめる。これだけ違いが出るのはプレイリストにするというゴートアム短歌賞の性質ならではだと思います。

一首も重ならないってすごいですよね。

─ちなみに私が特別賞に選んだ歌は「群れをなす百万分の一匹がアジフライとなり私をめぐる」(February)。お二人の選んだ作品とは重なっておりません。岸田さんは俵さんのプレイリストをどうご覧になりましたか?

岸田 ファン目線で、最初に『サラダ記念日』を読んだ時のことを思い出しました。俵さんの、すごく一貫されている恋愛の切り取り方が感じられて。
俵さんが選ばれた六首目と七首目の歌は、実は私も最後まで悩んだんです。恋愛の含有する時間軸が表現されていると思いまして。自分のプレイリストのコンセプトからは少しずれるかと思って泣く泣く外しましたが、個人的にはすごく好きでした。

うれしいです。

岸田 昔、ユーミン(編集部 註・松任谷由実さん)から歌詞の書き方についてレクチャーを受けたことがあります。私はやや寝言のような、時系列バラバラのサイケデリックな歌詞を書くほうですけど、ユーミンは登場人物をしっかり作り込み、ドラマを組み立て、二人のストーリーのどこを切り取るかを決めて歌にするとおっしゃっていました。
私がとっても苦手なことなんですけど。俵さんのプレイリストを見て、そのことも思い出しました。立派なドラマの脚本のようです。

─でも実際には詠み手はバラバラなので、俵さん選・一首目「ふわふわのパン」を詠んだ方は暗い未来をいっさい想像していない可能性もあります。

あー! ごめんよー! 別れることになっちゃった(笑)。

─俵さん選・十首目のツナ缶の歌は、一首単独で見ても広く想像の余地があるいい歌だと思いますが、この位置にあることで、二人でいた過去が前提にあるからより際立つと思いました。

岸田 そうですね。最後のツナ缶がやけにリアルな感じがします。出てくる食べ物のジャンル一つとっても、それぞれストーリーを持っていると思います。

「結婚」は、相手の一部分を殺す可能性をはらんでいる


岸田さんのプレイリストを見て、私はストーリーをつけすぎたかなと反省しています。

岸田 いえいえ、そんな(笑)。

岸田さんのぐらい謎めいているほうが、読者も参加できる余地があるなと思って。私は並べるのが好きすぎて、「これで決まり!」って感じでやっちゃったんですけど。

岸田 音楽のプレイリストを作る時には、特に、音質が異なるものを並べないということを意識します。あとはキー(調)が不自然にならないように。今回は、自分が選んだ十首が全体で一つの色になるように、ということを意識しました。

岸田さん選・十首目は、一首で短歌賞を狙おうと思ったら、正直なところなかなか難しいかもしれません。でも、並べた時の十首目としてはものすごく輝いていますよね。最後に置くしかない感じの歌というか。

岸田 そうですね。一首目を決めた時点で、十首目はこの歌になるだろうなと思っていました。
プレイリストには、私が個人的にリアリティを感じたものが入ったように感じています。私の父親は八十歳を超えているので、親の老いを詠んだ歌には惹かれるものが多かったですね。あとは、都会の狭いワンルームに住んでいるんだろうなという人の、良くも悪くも冷えた暮らしを彷彿とさせる歌の言葉は鋭い気がしました。
食材に関して言いますと、「カオマンガイ」(岸田さん選・五首目)を選んだんですが、特別賞に選んだ「ビリヤニ」が出てくる歌も印象に残っています。十年前、二十年前だったら「それなんですか?」という食べ物の名前が世の中にはあふれているわけですよね。なんていうか、八十歳のおじいさんがカオマンガイを食べているのっておもしろくないですか?

おもしろいです(笑)。

岸田 八十歳で父ちゃんがカオマンガイを食べたとか、お母さんの優れたレシピとか、そういうのが数珠つなぎになっている感じです。カオマンガイがあってコーヒーがあってコオロギがある、という具合に、おもしろいきっかけをいくつか作る方向で選びました。音楽でアルバムを作る時にも使えそうな知恵をいただきました。

いいですね。私は結局恋愛ものでつなぎましたが、投稿歌には家族の話も多かったです。マヨネーズの減り方で、子どもが家を出ていなくなったことを感じているという歌がおもしろくて特別賞に取りましたが、こういう家族つながりでプレイリストを作るのも楽しいでしょうね。第二弾を作りたいぐらい。

岸田 (笑)。

この一首の前後に「のりたまが花火のように散らばって反抗期の息子も笑ってた」(吾妻亮太)という歌と「上京し子供が話す標準語聞きながら食う博多ラーメン」(望潮魚)という歌なんかを置くと、一つの家族が見えてくるなあとか、そうやって遊んでいました。
あと、岸田さん選の六首目の歌は恋愛のほうで入れたいなと思って私も残していた歌です。

岸田 そうだったんですね。

これは恋の歌に入れたらぜんぜんちがう表情を見せると思います。岸田さんのはおじいちゃんおばあちゃんの間に挟まれているから、さびしい一人暮らしのワンルームの感じが出てくる。
この歌は独立したものとしてもいい歌ですよね。

岸田 そうですね。

一首一首としてすごく良くて、流れの中で読むとまた輝き方が変わるというのかな。それが連作の理想ですね。
岸田さん選の九首目の歌は、これだけ見たらストレートな、しあわせな感じの歌ですが、この後に十首目があるから、怖い側面があることに気づかされました。菊の花をおひたしにするというのは、ある意味菊の花を殺しているわけですよね。それを、もうすぐ妻になる人がおいしいとよろこんでいる。「結婚」は、相手の一部分を殺す可能性をはらんでいるのかもしれないと、あやを持って読めるのが並べ方の妙だなと思いました。

─またその前が「コオロギ食べね?」ですからね。

岸田 はい、はい(笑)。最後の三つは悩んだんですけど、これしかないと思いました。

すごい終わり方だ!


型があるから言葉がよろこぶ


─お二人のプレイリストを並べて読むと、俵さんは定型に即した歌が多いのですが、岸田さんは字余り字足らずのあるいわゆる破調の歌も選ばれていますね。たとえばカオマンガイの歌は一音分、字足らずになっています。音楽がご専門の岸田さんならではの、リズムに関するこだわりみたいなものがおありでしたらぜひお聞きしたいのですが。

岸田 短歌に関しては専門ではないので、しっかりしたことが言えるかどうかわかりませんが、短歌に限らず、演説でもなんでも、間があまってしまう場合に「欠けているからかわいいね」と思うのか、音楽的な休符としてとらえるのか、どちらにしても効果があると思います。選ぶ時には基本的にシラブルに乗せて読みます。短歌は音の分量が決まっていて、そこに意味や意図が入るので、例えば「今からコオロギ食べね?」というのは確かにリズムとしてはおかしいけど、八首目に入るインパクトとしてははずせなかったですね。コオロギは私も食べたことがないんです。イナゴはあるけど。

(笑)。

岸田 今回、読んでいて定型のリズムの作り方は大事なんやなとあらためて思いました。メロディーがついていないから、音楽に期待しているものを言葉全体から感じとることができまして、読んでいてすごく楽しかったです。

私にとって短歌のリズムはもう空気みたいなものだからあまり気にしていない(笑)。ただ、ふだん使っている言葉でも、このリズムに乗るとすごく楽しそう、うれしそうになるので、使ってやるとよろこぶという感覚はあります。

岸田 これは歌詞を書いている時によく思うんですけど、カタカナ言葉って使いにくいんですよ。歌詞を先に書いている人がわりとやりがちなんですけど、無理やりあてはめているというか、カタカナ言葉が意味を濁してしまっている印象を受けることがあります。その点、短歌は音楽をともなわない分、自由に見えると言いますか。
特に俵さんの短歌って、カタカナの言葉が定型のリズムの中にバッと入ってきて、着やすい服になる、という感じがあって。選ばれている歌もそうですね。やわらかい。

初めて短歌を作る人は、型というと「型にはめられる」というようにすごく窮屈なイメージを持つかもしれませんが、型があるから言葉がよろこぶし、むしろ便利なんです。私はぜんぜん窮屈とは思わない。これがあるからみな、歌になるし、言葉もよろこぶし。

岸田 うん、うん。


冷凍食品は生鮮食品と比べると生き物感が薄い


─お二人のコンセプトも見えてきたところで、ぜひお互いのプレイリストにタイトルをつけ合っていただきたいと思います。

連作のタイトルってむずかしいんですよね。核心をつきすぎても良くないし、難しくてもダメ。私はぜんぜん、ダメ。そもそも連作のタイトルを考えるのは苦手なんです。

─では岸田さんからお願いします。

岸田 あまり自信がないですけど『やわらかい世界』かなと思いました。

歌の言葉をそのまま使うんじゃなくて? いいですね! 私は言葉をそのまま切り取って使う方向しか考えてなかった。

岸田 恋愛の中で二人がどうやって出会い、いっしょに時間をすごし、思い出になっていくか、それを十首で描いているわけじゃないですか。その中でも、いい恋をしている時期を指す言葉はなにかな? と考えた時、八首目が象徴的だと思ったんですね。歌からそのままとって「世界はやわらかい」だとちょっと難しいけど、「やわらかい世界」にすると、一首目の「ふわふわのパン」だったり、三首目の「甘すぎる人参グラッセ」、六首目の「熟れすぎた杏」、それにスプーンのまるみ、そういった感覚を想起させるんじゃないかと思ってつけたタイトルです。
二首目と八首目が対になっているなと思っていて。二首目がいいなと思ったのは、しっかり未来の方を見ていて、嘘がないところです。その後になにかがすれ違ったのか、二人の間でなにかが変わって、包丁と世界、パンが分離されてしまっても、未来を見ようとしていたことは一つの歴史上の事件として確かなものだったのだろう、という解釈を自分の中でしました。

そうですね。現実の未来はこうなったけど、その時にしっかり見ていた未来までさかのぼってなくなるわけじゃない、というのかな。やわらかい世界。めちゃくちゃ良いタイトル!

岸田 ありがとうございます。

最高のタイトルですね。どの一首から取られているか、ふわっとわかるけど、そのままではなく、全体を包括、象徴するっていう、本当に素敵なタイトルです。
では、私はダメな例を発表します(笑)。ちょっと迷ったんですけど、『浅き眠り』。七首目からとりました。タイトルは後半寄りから取ったほうがいいんです。前半のを使っちゃうと、そこでピークを過ぎたような感じになるので。それで後半の歌の中でも印象に残るのが七首目で、良い歌ですし、全体を浅い眠りの中で味わう感じかなと思ってつけました。でももしかしたら私が感じた以上のものが隠されているかもしれないし、岸田さんご自身が考えたほうが絶対良いタイトルになると思います(笑)。

岸田 いえいえ。『浅き眠り』、すごくいいと思います。一首目と十首目で歌われていることは、生きること、死ぬこと、殺すことだと思うので、それに対して眠りをあててくるのはすばらしい。眠りってちょっとした臨死体験じゃないですか。「おばあちゃん寝てるのかな? 死んでるのかな?」みたいなこともあるわけで。冷凍食品は生鮮食品と比べると生き物感が薄い、そういうことも連想させるような。「浅き眠り」というのは、眠ったまま動かないけど目覚める可能性も想起させるので、ベストなタイトルをつけていただ
いたなと思います。

うれしい。そう言われると良いタイトルのような気がしてきました。生と死のあわいっていうことですよね、浅き眠りって。

岸田 そうですそうです。冷凍するということは時間を閉じ込めることでもあるから、なにかを後ろ倒しにすることだと思うので、かなり含蓄のある歌で、しかも食べ物とおばあちゃんが同列にあるので、ドキッとしました。たぶんおばあちゃんはもう亡くなっていて。

無花果のほうは「祖母より浅き眠り」だから、目覚めることもあるわけですね。

岸田 それをタイトルにしていただいて、食べることと生死の関係が一段と浮かび上がる気がします。ありがとうございます。

こちらこそ。これ、本当に楽しいし、みなさんもプレイリストを作ってみることを強くおすすめします。それぞれ人柄が出るし、並べ方を考えることでより深く歌と向き合えると思います。ただ順番をつけるのではなく、初読の時とは別の光を当てて歌と向き合える時間になるのは新鮮な体験でした。

─ありがとうございました。


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