【連続小説】Birthday 第十二章 星良(5)

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 あたしは、疑っている。
 あたしが祖父の日記を手に取ったことは、偶然だったのだろうか。
 日記に書いてあった「神の誕生」とは、ふさわしい物同士の間で子供を作ること、それだけの意味だったのだろうか。

 祖父はなぜ、祖母を受け入れたのか、ロマンチックな読み物として読んでいるうちは気が付かなかったが、その過程はあまりに不自然だ。そこには祖母の力か、なんらかの意図が働いてはいなかったか。
 「ふさわしい時間、ふさわしい場所、ふさわしい状況」によって望み通りの結果が起こせるという祖母の言葉。若き日の祖母の姿や、その家にあったという祭壇、それらを見ることで、感じた精神の変調について、祖父は書き残している。ならば、それを見ること自体に、何かしら催眠的な作用があり、祖父を「神の意図」の執行者に仕立ててしまったとは考えられないか。
 そして、だとすれば。
 あたしが祖父の日記の内容を瑞稀に話したことが、超能力騒ぎの発端だったとは考えられないだろうか。
「感染」。力の広がりはそう表現されている。例えば視覚を、聴覚を、物語を通して、ウィルスのように、祖母から祖父へ、祖父からあたしへ、そして瑞稀へと広まっていった存在があるのだとしたら。超能力は、それがもたらしている物なのだとしたら。
 全てがそれに由来する力なのだとしたら、広がりと共に力が強くなっていったことにも説明がつくのではないか。大元が一つの存在なのだとしたら、感染を広げることは、本体の成長とも言い換えられるからだ。つまり、広がったからこそ、それぞれの力もまた強くなったのではないか。
 ならば、力の広まりと強化の果てに、ついに神が生まれいずる、というのだろうか。
 だがそれは一体どんな神なのだろう。文章からも伝わる祭壇の禍々しさ。悪意の暴走を生み、ついには人死にまで出してしまった力。その神は果たして、現代人が想像するような、慈愛に満ちた、正義の存在だろうか。
 あたしは怖い。
 あたしだって、祖父の日記を読んでしまっている。ただ物語をなぞるだけでなく、その書いた言葉そのものを、一言一句。そしてまた、その文字の形状を。
 そう言ったあらゆる要素に「それ」が仕込まれているとしたら。
 祖父と祖母の血を継承し、祖父の残した物を読んだあたしの内部にも、「それ」の一部は巣食っているのではないか。
 ならば、なんの力も発現しないあたしの担う役割とは、一体なんなのか。
 瑞稀のあからさまな苛立ちが、直接あたしを傷つけなかったのは、なぜか。
 あたしは怖い。怖いのだ。
 いつの日か、それはあたしの体と心を食い破って、外の世界に現れるのではないか。
 この世に、永遠の神の王国を築くために。


《完》

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