🏰09. 街外れの掲示板
街の入口に、大きな掲示板がある。
求人、落とし物、イベントのお知らせ。
貼り紙はすっかり色あせ、端は破れ、何枚も重なったまま放置されている。
前を通る人はいる。だけど、どこに何があるのかは分からない。新しいお知らせが貼られても立ち止まる人はいなかった。
一瞬、強い風が吹いた。めくれ上がった紙がバタバタと揺れる。かろうじて止まっていた角のピンが外れ、そのままふわりと宙に浮かんだ。
そこへ、双子のテキパキとシレットが通りかかった。テキパキは一瞬だけ立ち止まり、掲示板全体を見渡した。
「これは……見にくいわねぇ」

シレットは答えない。
代わりに、ひらりと一枚外れた紙を手に取り、文字を指でなぞった。

数秒後、二人は何も確認し合わないまま、
同時に動き出した。
期限切れの紙は、迷わず撤去。
仕事の募集は左へ、イベントの案内は右へ。
迷子の猫の張り紙は、自然と目に入る高さに。
テキパキは全体を見る。
シレットは一枚ずつ、確かめる。
役割分担は決めていない。
でも、ぶつかることもない。
しばらくして、掲示板は見違えるように生まれ変わった。
テキパキはパンパンと手を払い、一歩引いて満足そうな顔をする。
「……これで、迷わないわね」

シレットは最後に、猫の張り紙の端が風でめくれないよう、ほんの少しだけ角を押さえた。
二人は、そのまま何事もなかったように歩き出す。
◆
少しして、通りがかった人たちが足を止めた。
「……あれ。こんなところに掲示板あった?」
「見やすくなってるねー」
「こんな情報、あったんだ……」
後ろの方でまた別の誰かが、ぽつりと呟く。
「最近、こういうの増えてないかしら?
いつの間にか綺麗になってる場所」
誰がやったのかは、分からない。
ただ、気付くと整っている場所がここ最近
増えているような気がする。
──そんな噂が、いつの間にか立っていた。
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