12.メイのとある休日
朝の森は静かだった。
鳥の声で目が覚めたメイは、布団の中でスマホを手に取った。
「……ちょっとだけ、見よ……」
画面を開いて、数分だけスクロールするはずだった。
「このレシピおいしそう」
「うわ、猫……かわいい……」
「へぇ、この人の暮らし素敵……」
気づけば太陽が少し傾いていた。
「あれ? え、待って……昼過ぎ……?」
慌てて布団から出る。
けれど森の冷たい空気に触れた途端、
メイはまた布団の中に吸い寄せられた。
「まいっか。ちょっと温まってからにしよ」
すると、携帯がピコンと鳴る。
「新着動画があります」
──そこはメイ。
誘惑には弱かった。
◆
気づけば夕方。
空は淡い紫色に染まっていて、
鳥たちが帰り道を急いでいる。
メイは呆然と空を見上げた。
「……なんもしてないのに、今日終わった?」
少し考えて、メイは小さく笑った。
「逆にすごくない? ここまで何もしないの」
お湯を沸かし、温かいカップを両手で包みながら、メイは小さくつぶやいた。
「……まぁ、こんな日もあるよね。
明日からがんばる分、今日はチャージ日だったってことで」
森の夜風がするりと頬を撫でた。
責めるでもなく、急かすでもなく。
ただ、今日のメイをそのまま許してくれているようだった。

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