幻の記念ソング──エヴァ『魂のルフラン』コンビが銀座に遺した一曲の記録
仕事場の記憶 Vol.12—街の記憶と音楽が重なったプロジェクト。
このシリーズは、私が長年立ち続けてきた“現場”の記憶です。
変化の激しい時代の中で、自分がこれまでどんな現場に立ち、どんな熱狂を作ってきた人間なのか。その足跡を具体的に残すために、この「仕事場の記憶」を綴っています。
光と音の温度、人の表情、空気の重さ――言葉では残らないものを記録しています。
銀座の青年組織である「銀実会」創立70周年を記念して企画された一曲、
『Shall We Dream』。
作詞・及川眠子、作曲・大森俊之
――名曲「魂のルフラン」コンビによる“銀座の歌”は、
コロナ禍で披露の場を失い、今も正式には発表されていない。
本稿では、その誕生から幻となるまでの記録を、
現場の視点で振り返る。
銀座に息づくもう一つの青春
銀座には、1丁目から8丁目までの町会、通り会、業界団体が複雑に絡み合い、その中心に立つのが「全銀座会」。
そしてその中で、若い経営者や後継者たちが集い、
街の未来を担ってきたのが「銀実会(ぎんみかい)」です。

昭和27年創立――
70年の時を経てなお、彼らは銀座の“現場”を支えています。
私はその節目となる
70周年記念誌制作コンペへの参加依頼を受けました。
紙を超える提案ができないかと考え、
ふと浮かんだのが――
「歌をつくる」という発想でした。
“記録”ではなく、“記憶”を残すために
印刷会社や代理店が中心の競合を前に、私はこう書きました。
「銀座の70年を音にし、次の30年へ託す。」
作詞には長年の友人である及川眠子さん。
そして、彼女の代表作「残酷な天使のテーゼ」を編曲、
「魂のルフラン」の作曲・編曲をした大森俊之さんを筆頭に、
音楽界を代表する作曲家たちの名前を候補として並べました。
「銀座の70年を歌にして、次の30年に託す」──
そんな提案書の一行が、採択の決め手になったようです。
2週間後、担当者からの電話。
「70周年の企画としてオリジナルソングを創りたい」
こうして、プロジェクト『Shall We Dream』が動き出しました。
“100周年で完成する歌”を目指して
2021年4月。
祝賀会(発表の場)は翌年3月。
つまり約1年の制作期間でした。
企画書には、次のような構想を盛り込みます。
作詞・及川眠子 × 作曲・編曲・大森俊之による記念ソング
銀座の街を舞台にしたMVの制作
銀座に唯一残る小学校・泰明小の児童が出演
30年後、100周年を迎えるその時、彼らが中心となって再び歌い継ぐ――
このプロジェクトは“今”を飾る仕事ではなく、
“未来に渡す”事を目指すモノでした。
歌詞が降りた日
真夏の午後。
及川さんから届いたメールに「できたよ」と一行。
会議室に集まった銀実会のメンバーと大森さん。
机の上に置かれた紙をめくる音だけが響きました。
「最初に歌詞を見た瞬間に、音の輪郭が見えるんです」
そう語る大森さんの眼差しが、印象的でした。
一発OK。修正なし。
『Shall We Dream』――そのタイトルに、
銀座の夜を照らす柔らかな光が重なって見えた気がしました。

音の現場に立ち会う
最初のレコーディングは代々木上原のスタジオ。
住宅を改装した地下のメゾネットに、心地よい音が反響する。
歌うのはジャズシンガーのギラ・ジルカさん。
MISIAのツアーやアルバムに参加する実力派で、
大森さんの紹介でした。
別日の代々木公園近くのスタジオでは、
ホーンセクションとコーラス録音。
銀実会のメンバーもマイクの前に立ちました。
緊張と笑顔が入り混じるその場の空気こそ、
この歌の本質だったように思います。

幻となった発表
2022年初頭、コロナ感染拡大。
祝賀会は中止、泰明小の子どもたちの出演も叶わず。
MVは過去の写真と資料を組み合わせて、なんとか形にしました。
「この歌は、誰の耳にも届かないまま銀座の空気に溶けていった」
そう思うと、胸の奥に小さな悔しさが残ります。
けれど同時に、“街の記憶を音にした”確かな誇りも残りました。
『Shall We Dream』――
それは、銀座という街が夢を見続けるための歌。
いまはまだ静かに眠っていますが、
いつか100周年の夜、再びこの街に響くことを願って。
ここで、その“幻の記念ソング”を静かに公開します。
エピローグ
この仕事を振り返るたび思います。
記念とは、過去を飾るものではなく、
未来へ受け渡すための儀式。
銀座という街が夢を見続ける限り、
この歌はいつか――再び、
誰かの声で蘇るはずです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
光と音の交差点で生まれた、
小さな“現場の記憶”を残しています。
「スキ」や「フォロー」で、
次の現場へ灯りをつないでください。
✒筆者関連シリーズ
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