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【佐藤こうぞうの「歩く飲食ブランド論」#36 】「ブランド」を育む結合度〜「ルースカップリング」の視点から〜

◾️新しいキーワード「ルースカップリング」

「ブランドは、どれだけ“結合”しているかで育ち方が変わる!」
フランチャイズのようにガチガチに縛る強固な結合もあれば、のれん分けや緩やかなネットワークのようなゆるやかな結合もある。いわゆる「ルースカップリング」だ。
私はいま「ルースカップリング」というキーワードに注目している。組織やシステム間の結びつきが緩やかで、相互に独立性が高い状態を指す組織論やシステム論で使われる概念。外食業界でもこれから重要なテーマになってくるのではないかと思う。
結合度の違いが、そのブランドの「広がり方」や「続き方」を決めていくのではないか。

◾️強固な結合が育む「統制ブランド」

たとえばマクドナルドやスターバックス。
徹底的にマニュアル化され、商品やサービスは標準化されている。これは 「タイトカップリング(強い結合)」 の典型だ。
ブランドの一貫性は守れるが、同時に「現場の裁量」や「個性」が失われやすい。短期的には効率的でも、長期的に「心を宿すブランド」になれるかは疑問が残る。

◾️ルースカップリングが生む「個性の継承」

一方で、日本の飲食文化に根づく 「のれん分け」 は、ルースカップリングの好例だと思う。本店と弟子筋は緩やかに結ばれながらも、味やサービスには各店の個性が残る。本店とのれん分け店では、微妙に違う味わいや雰囲気を楽しめる。
これは 「本家の信頼」を土台にしながらも、各店主の“心”がブランドに上書きされていく という現象だ。

◾️ネオ酒場世代のネットワーク

近年のネオ大衆酒場やネオ酒場の屋号を変えてライセンス展開するという動きも、まさにルースカップリング的だ。オーナー同士が緩やかにつながり、刺激し合いながら展開を広げている。
強固な資本系列やチェーンマネジメントではなく、「仲間意識と信頼感でゆるやかにつながる結合」 が、結果的にブランド的な”磁場”をつくり出している。

◾️ブランドを育む結合度とは

ブランドにとって最適なのは「強すぎない結合」だと私は思う。統制だけでは心が失われるし、バラバラすぎても持続しない。
ブランドが育つ“程よい結合度”とは──
• 本家と分家をつなぐ“信頼”
• オーナー同士をつなぐ“仲間意識”
• 店長とお客をつなぐ“心”
こうしたルースカップリングの積み重ねこそが、ブランドを未来へとつなげていくのではないか。

例えば、三陸の牡蠣生産者を束ねる仙台の蝦夷ホールディングス相馬さんと関東圏で「牡蠣の掟(かきのおきて)」というブランドを展開するJRD(ジャパンレストランデベロップメント)との関係。仙台で“100円生牡蠣”を売りに「牡蠣の掟」をヒットさせた相馬さん。自分は生産者側にまわり、店舗運営はJRDに任せることにしてブランドをあっさりと渡した。店舗運営にはクチを出さない。
こうした役割分担も一種のルースカップリングの事例だと思う。

「ブランドを育む結合度」─これは、外食業界における新しい分析軸になるはずだ。
強すぎず、弱すぎず。ゆるやかに結ばれながら、各人の思想や心が宿っていく。そのとき、ブランドは単なる仕組みではなく、人と人の関係性の結晶 になるのだ。

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