読書ノート14
●成瀬は都を駆け抜ける 宮島未奈
シリーズものは難しいと思うんです。人気の作品なら尚更、前作を越えなきゃいけないし。
しかし、成瀬シリーズは期待を裏切らない。
このまま成瀬がどんな人生を歩むのか見続けたいけど、仮に続編はなくても、成瀬は成瀬らしく生きていくんだろうな、と温かな気持ちで思える。
この後、続けて黒柳さんの本を読んだのもあって、成瀬あかりと、トットちゃんには、なんか通じるものがあるな、と思いました。
●ずっとやくそく 黒柳徹子 鎌田實
黒柳さんはユニセフ大使としてアフリカで、鎌田先生は原発事故後のチェルノブイリで、現地の人々、特に子供たちの支援を行ってきた。
決して優等生ではなかったふたりの生い立ちと、紛争や原発事故という悲惨な中で、子どもたちの希望をどうつないでいくかが語られる。いわさきちひろの挿絵がなつかしくやさしい。
●子のない夫婦とネコ 群ようこ
先日、うちのお店のお客さんに、「子猫を拾って困っている」と相談を受けた。数時間おきにミルクを飲ませないといけないような、ほんとに小さな子猫らしく、
「とにかくお世話が大変で…犬もいるし…」
里親を探してくれる地元の保護団体や、動物病院のことなど、できる限り教えてあげた。
しばらくしてまた、ご来店されたとき、「どうですか?」と聞いてみたら、
「ほんと、大変です…最初は犬も警戒しちゃって。今はもう平気ですけど」
その顔は「大変」と言いながら、もう大変そうではなかった。
「こりゃそのまま飼うな」
私は心の中でつぶやいた。
猫にはこんなエピソードがつきもの。
そんなお話がたくさん詰まった1冊。
●おいしいアンソロジー 喫茶店
芥川龍之介からシソンヌじろうまで、40人の著名人の喫茶店にまつわる思いを集めた1冊。著名人なのでどうしても東京のお店の話が多いのは仕方ないとして、小川糸さんの愛媛・松山の喫茶店めぐりはうれしかったし、中島らもの入店するなり「うどんでっか?」と聞かれる関西特有の喫茶店話も面白かった。向田邦子がテレビ業界に入るきっかけとなった喫茶店のエピソードがいい。
喫茶店、いいね!
●爆弾 呉勝浩
映画の予告編に、雪の中のレイプシーンがあって、ちょっと苦手かも…と思っていたところの、ラジ鬱の田中さんおすすめだったので、読んでみた。
いやいや、圧巻!場面のほとんどが、取調室の中にもかかわらず、その息詰まる緊張感とドキドキ感!ストーリー展開の重大なカギを握る「スズキタゴサク」のインパクト!
これを佐藤二朗さんがどう演じたのかが見た過ぎて、映画も見ちゃった。
●サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福(上)(下) ユヴァル・ノア・ハラリ
youtube番組「ゆる言語学ラジオ」で、しばしば取り上げられていたけど、「なんか難しそう」と手が伸びなかった。そしたら、こないだパンサー向井くんも読んでいるとラジオで聞いて、じゃあ挑戦してみるかと。
ただ、文字で読んだら絶対眠くなると思ったので、強い味方オーディブルにて聴取。
人類の歴史を膨大な資料と共に解き明かしていくけれど、わからないなりに興味深いこともたくさんあった。
一つは人間の共同幻想の力。人類というのは勝手に世界を意味づけし、「そういうことにしよう」という共同幻想のもとで、で世界にのさばっていく不思議な存在。
その顕著な思想は「貨幣」で、ただの紙、ただの金属のコインが、世界中で通用する、というのは考えてみれば不思議。
そして宗教も同じような構造を持つけれど、その中で仏教だけが、独自のアプローチを持っている、というのも面白かった。
そしてこれまで「自然選択」を通して変化してきた世界が、これからは人間の「知的設計」で変わろうとしている。この著書の中で取り上げられている、特に遺伝子工学が今後もたらすものは、素晴らしい未来というよりは、かなりグロテスクなことになりそうだなぁ…と感じた(なのに人はそれを止められないのよねぇ)
●イン・ザ・メガチャーチ 浅井リョウ
構成がたくみで、文章が明瞭。面白くて一気に読めます。この本を読めば、「推し活」と呼ばれる現代の「チャーチマーケティング」について、詳しくなれます。
「みんなそれぞれのドラッグで自分の脳を溶かしながら生きていくだけ」とあるように「脳を溶かす」というフレーズがよく出てくるけど、少なからず何かを生きがいにして、日々の辛さをしのぐ、というのは昔からあるようなこと、と思えるけど。
サピエンス全史を読んだ後だけに、人ひとり、あるいは人類という種族が生き延びるためには、心のよりどころというか、精神の糧になるような思想が、昔からずーーーーっと変わらず必要なんだなぁ、それが歴史書の中にも、日本の小説の中にも等しく書いてあって、なんだかとてもエモくなりました。
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