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なぜ、認知症の親に忘れられると、こんなに悲しいのか

親が子供のことを忘れた…その戸惑い


久しぶりに面会に訪れると、親が子供のことを忘れている――。
グループホームでは、ときどきそのような場面を目の当たりにする。

これは認知症の症状の一つ。
そう、頭では分かっている。
認知症と診断されたときから、こうなる可能性は予測できていた。

それでも、いざ現実なったときのショックは大きい。
すぐに心の整理をつけられるものではない。

大切な人から忘れられることは、そういうことなのだと思う。  

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ショックを受ける理由

 
なぜ、大切な人から忘れられるとショックを受けるのか。

「そんなの当たり前でしょ」と言われるかもしれない。
では、なぜ当たり前なのだろうか。
ここでは、親子関係を中心に少し深掘りしてみたい。

結論から言えば、
「当たり前の日常が、理不尽に崩された」という感覚。

そして、
「これまでの関係が、なかったことにされた」という感覚。

親とは、子供のころから同じ距離感で顔を合わせていた。
これからも、ずっとこのまま同じ関係性だと思い込んでいた。
その期待が、何の前触れもなく砕け散る。

「事実」としては、親が子供のことを覚えていない。
一方で、「感情」としては、これまで築いてきた関係まで失われたように感じている。
このような構造が、忘れられたことへのショックの要因だと思う。

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知り合いなら、さほど気にしない


とはいえ、親に限らず、他人から忘れられることは普通にある。

例えば、十数年ぶりに同級生と会ったとき、相手が忘れていたとする。
それに対して、大きくショックを受けることは少ない。

お互いに顔や雰囲気が変わっているし、出会った状況によって印象が変わることもあるからだ。「忘れていても仕方ない」と割り切れる。

ムっとする人もいるし、気まずくなることもある。
でも、ほんの少し気にして終わる。

それは、たぶん「知り合い」くらいの関係性だからだろう。
大きなショックを受けたり、引きずるほど悲しいとも思わない。

つまり、「忘れられたこと」そのものではなく、「その人との関係性」が、感情の大きさを決めるのだろう。

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忘れられてショックを受ける要素とは


このように考えていくと、忘れられてショックを受けるかどうかは、次のような要素があると思われる。

・相手との関係性
・共に過ごした時間
・自分の相手に対する思い入れ

もちろん、これらは忘れられた側の主観である。

だから、大切だと人ほど忘れられたときにショックが大きい。
逆に言えば、それぞれの要素が強いほど、その人は大切な存在なのだ。

しかし、認知症によって忘れてしまったとき、親子関係も、一緒に過ごした時間も、自分の思いも、相手の中から消えてしまったように感じる。

自分の中にはちゃんと残っているのに……。

だからこそ、今ここにあるものを、一つでも大切にしたい。


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「これまで」と「これから」


原因が認知症と分かっているとはいえ、親から忘れられるとは、大きな喪失感が生まれる。
それは、「これまで」の関係性が失われたような気がするからだ。

しかし、それは表面的な現象であって、思い出や関係性は失われたわけではないことは覚えておいていただきたい。

思い出せなくなったからといって、これまで一緒に過ごしてきた時間まで、なかったことになるわけではない。
今、親が自分を思い出せないことと、これまで親子として生きてきた時間の価値は、同じではない。

とはいえ、目の前にいる親の言動は、子供のことを忘れているように見えるのは事実である。

もし、ショックを受けながらも関わることを選ぶならば、

「これまで」を胸に抱きつつ、
「これから」の新しい関係性をつくる

という考えもある。

それは辛いことかもしれない。
思い出してもらえないかもしれない。

それでも、これから一緒に過ごす時間まで失われたわけではない。
「忘れられた」と「関係がなくなった」は、同じではないのだから。 

ここまで読んでいただき、感謝します。
途中で読むのをやめた方へも、感謝します。

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