デアデビルのコミック紹介②(2期・前編)
【はじめに】
「アメコミ初心者がデアデビルをたくさん読んだので感想などをまとめておこうという記事」の第2弾です。前回の記事ではデアデビルのコミックという歴史全体の概要をまとめてみましたが、ここからは単行本(TPB)ごとに内容や感想などを覚書的に記していきたいと思います。前回の記事でも書きましたが、超のつくアメコミ初心者なのでちょっとした間違いなどはご容赦ください。ひどい間違いがあればこっそり指摘してください
まずは1998年からの2期について。2期は長いのでさらに前編と後編に分けて記事にします(ここでは勝手に、1~55号を前編、56~512号を後編という扱いとします)。というわけで「2期・前編」から!
<Guardian Devil> ※Daredevil (1998-2011) #1-8

『デアデビル:ガーディアン・デビル』(邦訳)(Amazon.co.jp)
ライターは映画監督としても知られるケヴィン・スミス。マットとフォギー、ロザリンド(フォギーの実母である弁護士)の3人でやっている事務所に謎の依頼人が現れるところから話は始まります。マットはわけが分からないまま自身の信仰を揺るがすような事態に巻き込まれ、さらにフォギーやカレンもかつてない窮地に追い込まれ、マットは精神的にかなりギリギリのところまで追い詰められていきます…
フランク・ミラーの『ボーン・アゲイン』と対になるような話ですが、ボーン・アゲインがマットの再生の物語だとすれば、ガーディアン・デビルはマットの破滅の始まりを描く物語といえるかと思います。
最後には今後のマットの人生を大きく揺り動かす悲劇が襲います。ラスト近くのブルズアイとの教会での戦いはネトフリドラマのシーズン3にもはっきりとオマージュされていて読み応えたっぷり。意外なヴィランやその人がマットを陥れた仕掛け、さらに背後にいる人物、などギミックがたくさんあり、映画監督がライターをやっているという先入観がなくとも、とても映画的で「絵になる」話です
ちなみに邦訳本はつい昨年販売されたばかりですが、既に売り切れています。プレミア価格ならあるようですが、古本屋などで定価以下で手に入る可能性は少ないかもしれません。このアシェット・コレクション・ジャパン社が出す「マーベル・グラフィックノベルコレクション」は売り切れると再販はなさそうなので、販売される前に予約するなど、早めに手に入れておくほうがよさそうです
<Parts Of A Whole> ※Daredevil (1998-2011) #9-15

エコーことマヤ・ロペス初登場回。フォギーやマットの事務所にクライアントとして現れたマヤは、自身の実父を殺したのがデアデビルだということを養父であるフィスクによって信じ込まされていて、デアデビルと敵対することになります。しかし「マットとマヤ」としてはすぐに親密になっていき…という話。ライターは主にデビッド・マック。彼の手掛けたカバーアートなどもエコーの持つ幻想的な雰囲気をよく表現していてとても魅力的。
エコーは、先天性難聴を持つが、読唇術ができる上、相手の動きをすべてコピーできることから声を出して話すことも可能なため、健聴者相手のみならず、盲目であるマットとのコミュニケーションにもまったく困らない。盲目であっても何でもできるマットと対になるようなヒーローなので、戦いかたの対称性なども含めてとても面白いコンビです。
不満点としては、カレン・ペイジが死んだ直後なのに、マットがマヤに心奪われている描写があること。結局は付き合わず、親しい友人のままでいるのですが、それでもね。マットは気が多いのが魅力のキャラですが、ここはちょっと直後すぎたのでは、という点だけは不満です。でもそれ以外は文句のつけようがなく面白いコミックでした
<Wake Up> ※Daredevil (1998-2011) #16-19

ベン・ユーリックが主役の一風変わったコミックで、ライターはブライアン・マイケル・ベンディス。ヘルズキッチンのヴィランであるリープフロッグの息子ティミーに関する相談を受けたベンは、デアデビルとの繋がりを通してティミーの受けた精神的な傷を解明していきます。デアデビル/マットは出番としては少なめですが、やはり話の中心にはずっとデアデビルがいます。派手な話ではないものの、ベンのジャーナリスト魂に触れることができますし、人の優しさや人生における決断のようなものが表現されていてとても好きです。デビッド・マックの幻想的なアートも話の雰囲気にとても合っています(ここに描かれているマットは史上最高に美形だと思っています)。電子書籍でしか持っていませんが、紙の本でほしかったです
<Unusual Suspects> ※Daredevil (1998-2011) #20-25

「デアデビルが自警活動中に物損を与えたとして起訴され、しかも原告側の弁護をマットとフォギーがやらなくてはならなくなる」というすごい設定の話。要するに、「マットとフォギーがデアデビルを訴えている」という形になるわけです。しかも原告がまいてきた「エサ」は、マットがものすごく断りづらくなるものでした…
フォギーはなんでそんなことをしなくてはならないんだと嘆き、デアデビルのファンとデアデビルのアンチが裁判所周辺に溢れる。デアデビルの周囲のヒーローたちも混乱に巻き込まれ(特にスパイダーマン/ピーター・パーカー)、原告の慈善家は曲者だし、マット=デアデビルだと疑い始める裁判関係者も出てきて、いったいどうやって決着をつけるのか、とラストまでハラハラドキドキしながら読めます。いやあ面白かった!結末もいろんな意味で驚かされました。すべて終わった後のフォギーの疲労困憊な姿が忘れられません(笑)。ライターはボブ・ゲイルです
<Underboss> ※Daredevil (1998-2011) #26-31

ここから本格的なブライアン・マイケル・ベンディスによるストーリーアークが始まります。‘Parts of a Hole’でマヤに撃たれたウィルソン・フィスクの“死”、その真相に迫ろうとするマットとベン、ヴァネッサ・フィスクの暗躍、フィスク家傘下にあるサミー・シルケというギャングの思惑が絡み合い、マットもフィスクも不穏な状況に巻き込まれていきます。そして31号でシルケが逮捕されたことで、マットにとって決定的な事件が起きる…
アレックス・マリーヴのアートがほんとうに溜息が出るほど格好いい。ハードボイルドで不穏な空気と、登場人物の格好よさがこれでもかというほど描き出されています。ネトフリドラマや新ドラマの『デアデビル:ボーン・アゲイン』は、ベンディス期からもストーリーや雰囲気をたくさんオマージュしているのが分かります。その始まりがこの本ですので、是非読んでみてほしいです
<Out> ※Daredevil (1998-2011) #32-40

この後10年から15年に渡ってデアデビル誌に大きな影響を及ぼすできごと、「マットのシークレットアイデンティティがタブロイド紙の一面で暴露される」という大事件が起き、マットたち周辺やニューヨークにおけるその影響をじわじわ、じわじわと描いていきます。
「FBIがいかにして裏取りをしたか」「マットがその事実に気づくまで」「デイリービューグルのピーター・パーカーとベン・ユーリック、J・ジョナ・ジェイムソンそれぞれの対処」「フォギーの奔走」「マットの日本への隠遁」「否定の記者会見」「この件でマットたちが訴訟を起こす」などと、この本だけでもさまざまなことがじっくりと描かれます。マットやフォギーはいったいどうなってしまうのか、と息を詰めて読みました…これもまた、忘れられない話です。またマットのシリアスな表情が格好いいんですよね(この本だけでもいっぱいスクショしました)
そして38-40号が、ボーンアゲインのドラマでも大きく取り上げられた「ホワイトタイガー裁判」のアークです。やはり冤罪で起訴されたヘクター・アヤラの弁護を、マット=デアデビルだと(本人は否定しているものの)世間に広まった状態でしなければならない。裁判の経過や結果はドラマと違いますが、このコミックではドラマ以上に悲惨な結末を迎えます。ここを読んだときはしばらく立ち上がれませんでした…けれど心にぐっさりと残るので、たくさんの人に読んでほしい…
<Lowlife> ※Daredevil (1998-2011) #41-45

ここでマットはデアデビルとして救ったミラ・ドノヴァンという盲目の女性と出会い、恋に落ちます。ミラはマットと違って特殊能力などはありません。自立していて、好奇心旺盛な素敵な女性なのですが、身バレの件などで「それどころじゃない」と止めるフォギーをよそに、二人の関係はすぐに深まる。彼女とマットは今後とても複雑な状態で人生を共有してゆくことになります…
また、少し前にデアデビルの身元を明かした新聞社をマットたちが訴えていた裁判の結果が出て、それがまたマットの今後の生活に大きな影響を及ぼします
ちなみにベンディスのライティングもマリーヴのアートもとても渋く、全体的に「ド」がつくシリアスではあるのですが、時おりギャグというかクスッと笑わせるコマを挟んでくるので気が抜けません。このあたりでスティルトマンとグルートに関するマットとフォギーの会話で笑わされたことを思い出しました(笑)
<Hardcore> ※Daredevil (1998-2011) #46-50

マヤ・ロペスに撃たれた後、ずっと隠遁していたウィルソン・フィスクがニューヨークの裏社会へ復帰して、ヘルズキッチンの情勢は混沌としてゆきます。ブルズアイやタイフォイド・メアリーが襲ってくるなど、マットたちの身辺も脅かされ始め、交際を始めたミラのことも危険に晒すことになる。またも殺戮を繰り返し、同じことを何十年もやり続けるフィスクに対して、デアデビルは完全にブチ切れてしまう。50号にて、他のギャングたちの面前でフィスクをぶちのめしたマットは、デアデビルのマスクを自ら剥ぎ取り、とんでもないことを宣言します…
50号ラストのマットの「宣言」。初めて読んだときは、唖然とするわ、マットがこうする気持ちは分かる…でもそんなことをして周囲の人達との関係はどうなるんだ…と読者としても大混乱したものでした。2期のマットの精神状態がいかに危うかったかを示すような事件で、しかも周囲への影響が大きすぎる。ここまで読めば2期のマットから絶対に目が離せなくなると思います
<Daredevil: Echo - Vision Quest> ※Daredevil (1998) #51-55

こちらはデアデビル誌ではありますが、エコーことマヤ・ロペスが主人公の、番外編のような本になります。ライター・アーティストはデビッド・マック。敵だと思っていたデアデビルは味方で、育ての親だったフィスクは自分を駒としか思っておらず、人生を見失ったマヤは、自分のルーツであるネイティブアメリカンの「ビジョン・クエスト」という儀式を受けるために旅立つ…という話。ディズニープラスのドラマ『エコー』でも、この本をオマージュしたようなシーンがたくさんありました。
アートが、ちょっと言葉が見つからないレベルで精密で、幻想的で、個性的。ほんとうに素晴らしいのですが、文章で説明できるとは思えず、こればかりは実際に見てもらうしかない。これも紙で欲しかった本です。できるだけ大判で、良い紙でほしいなあ、今でも…
当然ですが、デアデビルは実体としてちゃんと出てきます(幻想としてならウルヴァリンとかも出ます)。エコーにとってのデアデビルはもちろんのこと、デアデビルにとってもエコーとの交流が意味を持つということが分かります
【次回予告】
次回は、こちらもいつになるか分かりませんが、「2期・後編」についての記事を書くつもりです。ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2が来るであろう2026年3月までに1年ほどかけて、デアデビル本誌とミニシリーズなどの記事を順に書き上げられるといいな、と目論んでいます
更新日時:2025年4月23日 23時35分
文責:kude
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