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デアデビルのコミック紹介③(2期・後編)

【はじめに】

 「アメコミ初心者がデアデビルをたくさん読んだので感想などをまとめておこうという記事」の第3弾です。第2弾となる前回の記事では1998-2011年の第2期デアデビルの前半部分を取り上げましたが、今回の第3弾では、2期の後半をやはりTPB(単行本)ごとにまとめていきます。ちなみに2期ラストからデアデビル本誌もイベント『シャドウランド』に入りますが、今回の記事内で取り上げるのはデアデビル本誌のみで、イベント本編はデアデビルメインのイベントをまとめた別の記事にするつもりでいます。

 毎度のエクスキューズになりますが、超のつくアメコミ初心者なのでちょっとした間違いなどはご容赦ください。ひどい間違いがあればこっそり指摘してください。それではここから紹介をスタートします。今回は14冊あります!


<King Of Hell's Kitchen> ※Daredevil (1998-2011) #56-60

Daredevil: King Of Hell's Kitchenカバー画像。顔は影に覆われているが目だけが赤く光るデアデビルが描かれている。周囲の柵のようなものの影が身体に反射している
Daredevil: King Of Hell's Kitchen(Amazon.co.jp)

 マットは、自分がデアデビルであると暴露した新聞社を相手取って起こした裁判で得た巨額の賠償金を元にヘルズキッチンを「浄化」、マットがヘルズキッチンのキングピンとして君臨するようになり、次期市長候補とも噂されている。同時にマットはミラ・ドノヴァンと極秘結婚。これだけだと順風満帆に見えるマットの生活ですが、ヒーロー仲間からは犯罪者を他の地区に押しつけただけだと非難され、マットのやりかたに反対するフォギーからも距離を置かれている…という興味深い状況。ここからマットがじわじわとデアデビルの活動に戻り、そしてマットのメンタルについても明らかになっていきます。マットの有能さや傲慢さ、強さや弱さを、あますところなくシリアスにそしてかっこよく描写した、大好きなストーリーアークです。


<The Widow>  Daredevil (1998) #61-66, Daredevil (1963) #81

Daredevil Vol. 10: The Widow カバー画像。雨の中、時計台のようなところにしゃがんで佇むデアデビルが描かれている
Daredevil: The Widow(Amazon.co.jp)

 ミラから離婚申請をされているマットのところへ、元恋人のナターシャ・ロマノフが現れる。ナターシャの抱える事件に振り回されるマットは「デアデビルの復活」としてデイリービューグルに報じられ、ますます周囲とぎくしゃくしていきます。そしてついにマットはミラに離婚の書類を渡しに行くことになる。土砂降りの雨の中の二人のシーンは切なくもうつくしく、心に残るものでした…

 #65は本編から少し離れ、デアデビルのシークレットアイデンティティが明かされたことによるマーベルユニバースのヒーローたちへの影響を描いた長めの話ですが、これがおもしろかった。ピーター・パーカーとマットがどれだけ仲が良かったのかが伺えますし、デアデビルとアベンジャーズの関係、マットとドクター・ストレンジとの関係など、デアデビル誌だけ追っているとなかなか見られない関係性がたくさん読めます。この#65だけでも是非読んでみてください。

 同時収録されているDaredevil(1963) #81は、デアデビルとブラックウィドウとの出会いの回。溺れかけていたデアデビルをブラックウィドウが助けてくれた、というなかなかデアデビルらしい出会いかた。このエピソードの時点では二人はまだ個人的な会話は交わしていませんが、ここからどうやって一緒にサンフランシスコに移住するところまでいくのか今後読むのが楽しみです。

<Golden Age>  ※Daredevil (1998) #66-70

Daredevil: Golden Age カバー画像。雨の中、黒いクラシックカーが走っていて、その背後に脱ぎかけた私服の下にデアデビルのスーツが見えるマットが立っている
Daredevil: Golden Age(Amazon.co.jp)

 フィスクより前にヘルズキッチンのキングピンだったボントという男が、現在のキングピンであるマットを捕らえる。キングピンだった頃のボントの回想にもデアデビルやネルソン&マードックが絡み、デアデビルやヘルズキッチンという街の成り立ちを知ることができる、アートも相まって渋めの話です。マットが拷問を受けるシーンが最高だったな…!時系列が入り乱れて小説のような感覚で読めて、全体にかなり好みでした。

 ちなみに以前からFBI捜査官として登場していたアンジェラ・デル・トロが、叔父のヘクター・アヤラから受け継いだホワイトタイガーのアミュレットとマスクを使い始めるのもこのあたりのアークです。


<Decalogue>  ※Daredevil (1998) #71-75

Daredevil: Decalogue カバー画像。マスクオフしたデアデビルが背中を向け、左手にマスク、右手にビリークラブを持って立っている。背景は一面イエローに塗られている
Daredevil: Decalogue(Amazon.co.jp)

 とある教会で行われている、「デアデビルに影響を受けたヘルズキッチンの住民たちによるグループセラピー」を舞台にしたストーリーアーク。登場する住民たちの話す具体的なエピソードによって、デアデビルがキングピンに収まり良い方向にも悪い方向にも大きく変化したヘルズキッチンの事情を知ることができます。この会合自体にちょっとした仕掛けがいくつもあり、読んでいて思わず声が出てしまうような展開もあります。

 『デカメロン』や『千夜一夜物語』のような、物語の中で語られる物語であり、それらの持つ神話のような雰囲気も感じられる話です。それだけに少し難解で、後半に登場したサキュパスが現実なのか、それとも何かのモチーフなのか、じつは今でもまだ理解できていなかったりします。


<Murdock Papers> ※Daredevil (1998) #76-81

Daredevil: Murdock Papers カバー画像。燃え盛る檻のようなものの中にいるデアデビルが描かれている
Daredevil: Murdock Papers(Amazon.co.jp)

 マットは(自分がデアデビルであることを公式には否定し続けたまま)デアデビルの活動を本格的に再開しますが、同時にフィスクがFBIへマットの情報(これがサブタイトルの「マードック文書」)を売ろうと交渉している。この交渉が成立すればマットは逮捕されてしまう…というスリリングなアーク。事態が二転三転し、登場ヒーローも多く、結末がある程度分かっていたとしてもものすごく読み応えがあります。ちなみにマットとエレクトラの和装姿を見ることができます!(とても素敵です!)

 そしてここで、5年近く続いたブライアン・マイケル・ベンディスとアレックス・マリーヴによるランが終了します。ライティングもアートもほんとうにすばらしかった…これをリアルタイムで体験できた当時の読者が今でも羨ましいです。


<The Devil, Inside and Out Vol. 1> ※Daredevil (1998) #82-87

Daredevil: The Devil, Inside and Out Vol. 1 カバー画像。檻の中にいるデアデビルとマット・マードック。背景に使われているのはデアデビルのことが報じられた新聞紙
Daredevil: The Devil, Inside and Out Vol. 1(Amazon.co.jp)

 ここからライターがエド・ブルベイカー、アーティストがマイケル・ラークに交代します。話はそのまま繋がっていますし、アートの雰囲気も似ているので、まったく違和感なく続けて読めると思います。

 マットはライカーズに収監されていて、裁判はなかなか始まらず、刑務所内では刺客が次々やってくるなど四面楚歌としかいいようがない状況。しかも新しいアークが始まって早々、フォギーにとんでもないことが起こります(ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』でも話題になった件です)。また、Netflixドラマ『パニッシャー』シーズン1にここのマットの脱獄シーンから引用されたと思われる箇所もあります。実際のドラマの画面との共通点を確認するためにこのアークから読むのもアリかと思います。

 また、マットが収監されたこの時期にニューヨークにはマットではない「デアデビル」が出現します。正体はあのヒーロー。デアデビル史的にはおなじみの事件かとは思いますが、その空気を体感するためにここから読んでもよさそうです。


<The Devil, Inside and Out Vol. 2> ※Daredevil (1998) #88-93

Daredevil: The Devil, Inside and Out Vol. 2 カバー画像。エッフェル塔などパリの街並みを背景にして高所で佇むデアデビルが描かれている
Daredevil: The Devil, Inside and Out Vol. 2(Amazon.co.jp)

 脱獄したマットはフォギー殺害犯の手がかりを追ってヨーロッパに飛び、モナコ、リスボン、パリなど、いつになくワールドワイドに戦いを繰り広げます(まあ、パリまで行ったのになぜかトゥームストーンと戦っていたりもしますが笑)。そしてたどり着いたフォギー殺害、ひいてはマットを陥れた策略全体の「黒幕」とは。…と、こちらについてもドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』との共通点や差異が楽しめる内容となっています。ここのコミックを読んだ後にドラマを観たので、最初から最後まで「だよね」「そうだよね」などとずっとニヤニヤしながらドラマを観ていた気がします。

 策略そのものが壮大で、しかもこのアーク終了時点では相手のほうが一枚上手でまだまったく策略に決着がつきそうな気配がなく、またヨーロッパという舞台装置もあって(そしてマットがいつも通り女たらしで)、いつも以上に楽しめました。


<Hell To Pay Vol.1> ※Daredevil (1998) #94-99

Daredevil: Hell To Pay Vol.1 カバー画像。ビリークラブにワイヤーを揺らすようにして頭を下にして降りてくるデアデビルが描かれている
Daredevil: Hell To Pay Vol.1(Amazon.co.jp)

 ニューヨークへ戻ってきたマットは無事に弁護士資格を取り戻します。そしてフィスクを国外追放し、フォギーと再会し、ミラと再び同居し始め…と今までどおりの生活を取り戻したかのように見えますが、そこへ危険な影が立ち込めてきます。そして次第に明らかになる新たな(とはいえ1期からの再登場らしい)ヴィランによって、マット自身よりも周囲の人々が翻弄されていきます。一面トップになりそうな事件がマットの身内だけでいくつも起こり、マットのメンタルも怪しくなってくる。今後のマットの転落を示唆するような、不穏さが濃密に満ちたストーリーです。


<Hell To Pay Vol. 2> ※Daredevil (1998) #100-105, Daredevil Annual (2007) #1

Daredevil: Hell To Pay Vol. 2 カバー画像。いくつもの彫刻を前に佇むデアデビル
Daredevil: Hell To Pay Vol. 2(Amazon.co.jp)

 新たなヴィラン、ミスター・フィアーの攻撃によってこれ以上ないほどに追い詰められてゆくマットとミラの話です。結末も含め、まったく救われない…わたしにとって、今まで読んだデアデビルの中でいちばんしんどいのがこのあたりです。それだけに、「デアデビルらしい」ともいえるかと思います。読み応え・おもしろさという意味では百点満点ですが!

 ミラは命こそあるものの、死んだほうがマシだったのでは、と思ってしまうような状態に陥ってしまいます。そして回復の見込みは今のところ無い。こんなことって…と呆然としてしまいました。
 逆にいえば、マットの恋人や妻となった女性たちが見舞われた「不幸」は、現時点ではここがピークだったのかもしれませんが…(この後に付き合った女性たちはそれなりに健やかなままでいられたので)。まあ、だからといってミラが救われるわけではないのがつらい…

 併録のアニュアルは、この後のシャドウランドで大きな役割を担うことになる「ブラック・タランチュラ」ことカルロス・ラミュエルトがマットと再会する話です。なかなか面白かったですし、インフルエンザに罹って寝込んでいるマットがちょっと可愛いのでこれも是非読んでみてください!


<Cruel and Unusual> ※Daredevil (1998) #106-110

Daredevil: Cruel and Unusual カバー画像。右手にボウガンのようなもの、左手に天秤を持つデアデビル。天秤にはフィスクらしき人物の顔が映っている
Daredevil: Cruel and Unusual(Amazon.co.jp)

 ミラをほとんど失った形になって荒れに荒れていたマットは、ルーク・ケイジの依頼で、とある事件を担当することになります。ルークの敵だった弁護士ベン・ドノヴァン(Netflixドラマ『デアデビル』『ルーク・ケイジ』にも出ていましたね)が冤罪で逮捕され、しかし本人は自白済という不思議な事件の裏には…という話なのですが、前回のアークのマットが超どん底だとしたら、マットの気持ちにも少しだけ光明が見えてくるような、ほんのり温かいエピソードでした、意外にも!


<Lady Bullseye> ※Daredevil (1998) #111-115

Daredevil: Lady Bullseye カバー画像。両手にビリークラブを持つデアデビルと、両手に剣を持つレディ・ブルズアイが戦っている
Daredevil: Lady Bullseye(Amazon.co.jp)

 レディ・ブルズアイ初登場。彼女は日本生まれハンド育ちの正体不明の女性で、ブルズアイに憧れて名前を勝手にもらった暗殺者。彼女のオリジンや、彼女がニューヨークへやってきた目的が描かれ、いよいよシャドウランドへと話が近づいていきます。マスター・イゾーという謎の老人もマットの前に現れます。そしてマットは身に覚えのない殺人容疑をかけられ、事務所を手伝っている私立探偵ダコタ・ノースと不倫し(この時点でマットはまだミラと婚姻関係にあります)、それが裁判所や新聞社に暴露されたりして、またメンタルがおかしくなっていく。そんな中、マットが妙に安らぎを覚えるのがハンド絡みの事件に向き合っているときだという、不思議な状態に陥っていきます。


<Return of the King> ※Daredevil (1998) #116-119, 500

Daredevil: Return of the King カバー画像。十字架が立ち並ぶ墓地のような場所でデアデビルとウィルソン・フィスクが手を握り合っている
Daredevil: Return of the King(Amazon.co.jp)

 マットの弁護(←これも「黒幕」の意図によるものなのですが)によって国外退去になったウィルソン・フィスクのその後と、彼のヘルズキッチンへの帰還と権力の再掌握、ハンドへと近づいていく過程などが描かれます。マットは度重なるトラブルでフォギーに事務所を解雇されますが、フォギーはそのことをとても後悔していて…。ハンドの主要メンバーも話に絡んできてだんだん事態がややこしくなってきますが、それだけに話のグルーヴ感も大きくなっていきます。

 #119の次号からレガシーナンバーに振り直されて#500となります。記念号なのでいくつかおまけが併録されています。Daredevil #191(デアデビルがブルズアイとロシアンルーレットをする伝説回)など過去回の再録や、新規収録の短編‘3Jacks’という話など。‘3Jacks’は、怪我をしたデアデビルがギャルみたいな女子高生と落ちぶれたボクサーという不思議な二人組に助けられる話なのですが、これが妙に心に残る、不思議で素敵な話でした。おすすめです。

<The Devil's Hand> ※Dark Reign: The List - Daredevil #1, DaredeviL #501-507

Daredevil: The Devil's Hand カバー画像。獣の彫像のそばで佇むデアデビル。その背後に巨大なフィスクの影がある
Daredevil: The Devil's Hand(Amazon.co.jp)

 ダークレインのタイインであるDark Reign: The List - Daredevilでは、S.H.I.E.L.D.(H.A.M.M.E.R.)長官になってしまったノーマン・オズボーンがブルズアイ(ホークアイを名乗っている)にデアデビル殺害の指令を出します。そこでのブルズアイのあまりに残虐な殺戮行為がマットにハンド加入を決意させ、そこからDaredevil #501と話が直接繋がります。

 マットはハンド崩壊を目論んでハンドに首領として加入しますが、その道もまったく平坦ではありません。このアークでマットはヘルズキッチンに「シャドウランド」という城を建て、さらには日本へ飛び、ハンドの「大名」たちに自分が首領であることを認めさせるための戦いを繰り広げます。マットの「終わりの始まり」到来を告げるアークです。


<Shadowland> ※Daredevil (1998) #508-512 and Shadowland: After the Fall #1

Daredevil: Shadowland カバー画像。デアデビルがブルズアイを倒している姿が描かれている
Daredevil: Shadowland(Amazon.co.jp)

 2期デアデビル最後のアーク。シャドウランド本編と同時進行なので、ここの部分だけはやはりどちらも読んだほうがいいかと思われます。読む順番は、このサイトを参考にしました。本編ではマット本人や他の有名ヒーローたちの動向が描かれますが、デアデビル誌のほうではシャドウランドイベントにおけるフォギーやダコタ、それからNYPDのアレックス・カーツという刑事の動向が多く描かれています。ダコタやフォギー、それとやはり事務所の弁護士であるベッキー・ブレイクなどがとても良いので、わたしはむしろイベント本編よりデアデビル誌でのシャドウランドのほうが好きだったりします。

 シャドウランドが“落ちた”後、マットは行方不明になりますが、マットの行方を巡ってのベン・ユーリックやカーツ刑事の動きが描かれたのがShadowland: After the Fallです。これもなかなかグッとくる、とても良い話でした。

 12年続いたデアデビル2期はここで最終回です!2期はとにかく長いですが、話は一本道なので分かりやすいですし(←これはデアデビル誌全般に言えることです)、マットの立たされる立場の浮き沈みが激しく、ミラなどサブキャラたちの動向もエモーショナルなので、この記事を読んでもし興味が湧けば是非とも読んでみてほしいです。最初から最後までほんとうに心から楽しめた131話プラスアルファでした。


【次回予告】

 次回は、マーク・ウェイドのランである「デアデビル3期(2011-2014)・4期(2014-2015)」をまとめて記事にしたいと思います。更新時期がいつになるかは分かりませんが、今回と同じくらいの間隔を予定していますので、そう遠くない時期になるはずです。

 それでは、今回も読んでいただきありがとうございました!



更新日時:2025年6月23日 23時15分
文責:kude
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